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【読了ガイド】『真ク・リトル・リトル神話体系4』│収録作品・購入方法まで紹介

【読了ガイド】『真ク・リトル・リトル神話体系4』│収録作品・購入方法まで紹介

真4

本書は、クトゥルー神話アンソロジーの第四巻で、短篇10作品を収録している。

収録作品は「月に跳ぶ人」「深淵の王者」「爬虫類館の相続人」「開かずの部屋」「第七の呪文」「妖虫」「異次元通信機」「暗黒星の陥穽」「ポーの末裔」「魔界へのかけ橋」となっている。

「開かずの部屋」は映画化されており、「妖虫」は人気のクリーチャー「シャッガイからの昆虫」の代表作である。それ以外の作品はマイナーな作品が中心となっている。

  • 月に跳ぶ人」 R・A・W・ローンズ
    • 財産管理人ピアスに託されるはずだった手記は、受け取るはずの人々が次々と命を落とし、ピアス自身も一度も受け取っていなかった。
      40年の時を経て1960年代後半にようやく日の目を見る手記には、新聞の切り抜きが貼られていた。
      「7月27日、満月の夜、地球の生物が月に引き寄せられる」という記事と共に、その日に消えた芸術家たちの共通点が記されていた。
      独身であること、豊かな想像力を持つこと。
      30日の記述には「27日の夜、多くの人々が月へ跳んでいく」姿を目撃した酔っ払いの証言があった。
      古い論文に記された「YとTの力の均衡」という神話的記述と共に、1942年7月27日の満月の夜の謎が残されている。
  • 深淵の王者」 C・H・トンプソン
    • 死刑判決の日、法廷に立つジェームズ・アークライト医師は、妻と胎児の命を奪った罪で死を宣告される。
      奇妙なことに、ジェームズはその判決を望んでいた。
      脳神経外科医として激務に追われていた彼は、指の震えを抑えるため完璧な休暇を求めてケールスマスという小さな町を訪れた。
      人口50人ほどの閉鎖的な共同体で、同業のエブ・リンダー医師と親しくなる。
      ある日発見した異質な雰囲気を持つ館について尋ねても、エブらは「知らないほうがいい」と口を閉ざす。
      町のはみ出し者ソリー・ジョーによると、その館に住むラザルス・ヒースは元船乗りで強烈な臭いを放ち、20年前の沈没事故後に謎の娘カッサンドラと共に現れたという。
      ジョーの警告を無視したジェームズの前に突如現れたカッサンドラとの出会いが、彼の人生を取り返しのつかない闇へ引きずり込んでいく。
  • 爬虫類館の相続人」 H・P・ラヴクラフト
    • 1930年、ニューオリンズへの途中でプロヴィデンスに立ち寄った主人公は、科学的解明を目的に噂の幽霊屋敷「シャリエール館」を借りた。
      1927年に亡くなったシャリエール博士は生前、多額の金を払い「いずれ現れる甥」のために館の保存を市に依頼していた。
      調査を進めると、博士は6年間取引先とやり取りしていたが誰も直接会ったことがなく、多数のトカゲを購入し実験をしていたという。
      隣人は博士が「蛇より大きい黒いもの」を連れ歩き、夜には奇妙な生き物の声が聞こえたと証言した。
      館で調査を続ける主人公が発見した科学では説明できない恐ろしい真実とは。
  • 開かずの部屋」 H・P・ラヴクラフト&A・ダーレス
    • 幼い頃からダンウィッチの不気味な雰囲気を嫌い遠くへ逃れたアブナー・ウェイトリー。
      祖父ルーサーの遺言により家を相続し、時が止まったような屋敷に足を踏み入れる。
      その家にはサリー叔母を監禁していた部屋があったが、アブナーは最期まで叔母の姿を見たことがなかった。
      祖父からの遺書には水車小屋の破壊が指示されていた。
      サリーはインスマスの親戚を訪れた後から様子がおかしくなったという。
      資金のために戻ったアブナーがサリーの部屋に入ると魚の異様な臭気が漂い、窓の外では夜鷹と蛙の不気味な合唱が響く。
  • 第七の呪文」 J・P・ブレナン
    • 村ののけ者として生きてきたエミット・テルクィストは、不可解な死を遂げた気難しい叔父の遺産を継ぎ、その部屋で一冊の古びた『真性魔術』を発見する。
      「七の呪文のうち、3つは加護のため、3つは敵討ちのため、しかし最後の呪文を唱えてはならない」という一節と共に、悪魔百科のような本には「ニョグタ」という名が繰り返し現れていた。
      評判の悪い父と狂死した母を持つ社会不適合者のエミットは、本に描かれた生贄の祭壇が沼地の奥にあるのではないかと推測する。
      流砂や毒蛇が危険だと伝えられ、猟犬さえ近寄らず村人が十字を切る禁忌の地。
      エミットは叔父の遺した謎と沼地に隠された真実に近づいていく。
  • 妖虫」 R・キャンベル
    • 自害を決意した作家ロナルド・シアの物語は、読書家の中年教師との出会いから始まる。
      教師が語ったのは「ゴーツウッド」という森の不可解な歴史だった。
      森の中心の空き地にはかつて大地母神を祀る神殿があったが、1600年代の隕石落下後は魔女たちの集会所となり、彼女たちは隕石そのものを崇拝していた。
      賭けで森に入った若者が狂気に取り憑かれて帰還し、「木のようで木ではないもの」に追跡され、円錐塔から現れた何かから生物の歴史を教えられたと証言する。
      何時間も話を聞いたシアは「明日そこに行く」と宣言し、翌日の昼、謎めいた森へと足を踏み入れる。
  • 異次元通信機」 R・キャンベル
    • 1958年夏、大学生の「私」とフランク・ナトール、トニー・ロールズの三人はセヴァンフォードの居酒屋を目指すが、運悪く入ることができなかった。
      行き場を失った3人は歩き回り、新聞販売店で帰り道を尋ねる。
      店主は「この道しか通ってはならない。道行く人に声をかけてはならない」と奇妙な警告を残した。
      道に迷った三人は地面を掘るような大きな音を聞き、一軒の小屋を発見する。
      中に入ると埃の積もった床には足跡がなく、魔導書が並ぶ本棚と1930年12月8日で止まった日記があった。
      奥の部屋には大きなスクリーンと異様な装置があり、触れると不協和音が響く。
      三十年前から時が止まった小屋と消えた教授の謎が大学生たちを取り囲む。
  • 暗黒星の陥穽」 R・キャンベル
    • 1899年ブリチェスター生まれのエドワード・テイラーは、人とは違う視点で世界を見る少年だった。
      1918年の大学入学後、魔術を実践するカルトの中心人物となり、画家ネヴィルやオカルティストのヘンリーも輪に加わった。
      教団の存在が明るみに出て仲間が放校処分を受けても、親の遺産を持つテイラーは魔術研究に没頭し続けた。
      ある無名の書から、遠い星ユゴスの鉱石「トゥク=ル」を使えば脳を別の体に移して不老不死が得られると知る。
      『グラーキの目次録』を受け取ったテイラーはブリチェスターの前哨地へ向かい、懐中電灯の光が届かない不思議な壁を、ユゴスへの入口と確信して闇の中へ踏み込んだ。
  • ポーの末裔」 H・P・ラヴクラフト&A・ダーレス
    • アメリカの丘の上に建つ廃屋が不審火で焼失する事件で、アーサー・フィリップスが火災の原因と顚末を記した手記を提出した。
      不治の病を抱えるフィリップスは夜な夜な街を徘徊し、友人ローズ・デクスターと共にプロヴィデンスの街を歩いていた。
      ある夜、一人の紳士アランから声をかけられ、ポーの歩いた墓地への道を案内する。
      フィリップスはアランに奇妙な既視感を覚えていたが、ローズは「図書館にあるエドガー・アラン・ポーの肖像画とそっくりだ」と告げる。
      表情を一切変えなかった紳士の正体と火災事件との因果とは何か。
  • 魔界へのかけ橋」 HPラヴクラフト&A・ダーレス
    • アンブローズ・ビショップは20年前に突如姿を消した大叔父セプティマスの家を訪ねるため、ロンドンからアメリカのエイルズベリー・パイクへと旅した。
      ダンウィッチで買い出しをする際、食料雑貨商は「ビショップ」という名前を聞いた途端に態度が変わる。
      セプティマスが地元で厄介な存在だったこと、女性と目撃されていたこと、殺されたという噂を告げられる。
      屋敷の掃除中、屋根裏部屋には丸や星形の模様が描かれ埃がなく、地下室には深いトンネルと祭壇があった。
      大叔父の失踪と不可解な地下構造に包まれた謎とは何か。

出版社:国書刊行会

発売日:2020/7/8

ページ数:414ページ

価格:紙版:1760円/電子版:1408円

良い点

  • ダーレスに才能を見出されたラムジー・キャンベルの代表作品である「妖虫」が収録されている
  • ラヴクラフトが遺した創作メモを元にダーレスが創作した「ポーの末裔」など貴重な作品が読める
  • ラヴクラフトの神話体系から外れた作品が多く、個人的にはこちらの方が好きという読者もいる

気になった点

  • 初期の作品なため翻訳が読みづらい
  • ラヴクラフトの神話体系から外れた作品が多くなってきている

こんな人におすすめ

  • ラムジー・キャンベルの作品に興味がある人
  • ラヴクラフトの創作メモを元にした作品に興味がある人

本書は、クトゥルー神話の拡張期における作品群を集めた第四巻として、原典からの発展と多様化を示す作品集である。

キャンベルをはじめとする新世代作家たちによる神話体系の広がりを通じて、クトゥルー神話の継承と発展の過程を確認できる一冊となっている。