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【読了ガイド】『真ク・リトル・リトル神話体系1』│収録作品・購入方法まで紹介

【読了ガイド】『真ク・リトル・リトル神話体系1』│収録作品・購入方法まで紹介

真1

本書は、H・P・ラヴクラフトが創造し、A・ダーレスらによって拡大され続けるクトゥルフ神話の真なるアンソロジーの新装版である。

1982年に刊行された旧シリーズから小説作品のみを抽出して再編された。

  • 廃都」 (H・P・ラヴクラフト)
    • 遥かアラビア砂漠の彼方にある無名の都市を、勇敢な考古学者が目指す。
      伝説的詩人アブドゥル・アルハザードの夢に現れた場所と同じ廃墟に足を踏み入れると、異様に低い天井と非人間的な構造に動揺する。
      身をかがめながら探索を続けるうち、地下の古代寺院で不気味な装飾の箱を発見する。
      真実を求める探究心から蓋を開けた瞬間、考古学者の運命と人類の認識が大きく変わる。
      砂漠に眠る古の都市が秘めた真実と、かつて住んでいた得体の知れない種族の正体とは。
  • 妖魔の爪」 (S・グリーン)
    • マサチューセッツ州グロスター近郊のマーティン浜で、地元漁船クルーが想像を絶する巨大生物を仕留める。
      体長50フィート、直径10フィートの円筒形をした怪物は、科学者たちが調査した結果、まだ生まれて数日の幼体に過ぎないことが判明した。
      深海から来たと思われるこの生物の正体について、専門家たちの議論が沸き起こるが、展示された翌日、怪物を乗せた博覧船が姿を消してしまう。
      数日後、海から恐怖に引きつった悲痛な叫び声が聞こえてきた時、助けを求める声に村人たちは凍りつく。そこに現れたのは何だったのか。
  • 怪異の森」 (F・B・ロング)
    • 霧に包まれた家で過ごす主人公フランクと作家の友人ハワード。
      彼は人知を超えた外宇宙の存在を描く小説のインスピレーションを求めて没頭していた。
      もう一人の友人ヘンリーがやってきて、マリガンの森での不可解な体験を告白する。
      馬に乗って森を通り抜けていた時、頭上から正体不明の生物が水滴のように落ちてきた。
      木々の間からは細長い白い何かが垂れ下がっており、その直後ヘンリーは強い頭痛に襲われ、帰宅して頭を確認すると小さな穴が開いていたというのだ。
      医者はその穴が銃弾によるものではないと断言する。
      絶望したヘンリーが助けを求めて訪れるが、話が終わった瞬間、何かに取り憑かれたように外へ駆け出していった。
  • 俘囚の塚」(Z・ビショップ)
    • オクラホマの深い森にある古い墳丘には、昼は老人の、夜は首のない女の幽霊が現れるという不気味な噂があった。
      調査に向かった者は行方不明になるか正気を失って戻るかのどちらかで、地元の人々もインディアンも避けて暮らしていた。
      1928年夏、一人の考古学者が調査に乗り出し、幽霊の姿を目撃する。調査中に発見した400年前のスペイン人探検家パンフィロ・デ・サマコナの手記には驚愕の内容が記されていた。
      洞窟で未知の生命体と地球外存在に出会い、地下世界の都市ツァスを訪れたサマコナの壮絶な脱出劇とその結末とは。
  • 電気処刑器」 (A・デ・カストロ)
    • メキシコ行きの列車の密室客室で、書類持ち逃げ犯フェルダンの追跡という単純な任務についていた無名の語り手が遭遇したのは想像を絶する狂気だった。
      胡散臭い怪しげな男が取り出したのは、フード状の電気処刑器具。その発明者を自称する狂人は「最初の実験台」として語り手を狙う。
      腕力での対抗を諦めた語り手に残されたのは知恵のみ。
      遺書を書くという口実や友人記者への売り込み話で時間を稼ぐが、それは一時しのぎに過ぎない。
      列車が目的地メキシコ・シティに到着するまでの極限状況での機知と狂気の対決。
  • 夜歩く石像」  (F・B・ロング)
    • 若くして美術館の責任者となったアルジャノンは、調査員が次々と奇妙な事件に巻き込まれていく。
      ある日、クラーク調査員から「神」を拾ったと電話で伝えられる。
      クラークは像の調査は許すが、最後には必ず破壊するよう警告し、過去にリチャードソンが同じ像に近づいて拷問を受けた例を挙げた。
      運ばれてきた像は象をモチーフにしているが、扇のような耳から触手が伸び、鼻の先がラッパ状に広がる奇妙な特徴を持っていた。
      帰還したクラークは像が「チャウグナー・フォーン」と呼ばれることを明かした。そして、顔を覆っていたスカーフを取ると、像と同じ特徴を持つ変形した顔が現れた。
      この像をきっかけに美術館で不可解な事件が起こり始める。

出版社:国書刊行会

発売日:2007/9/20

ページ数:309ページ

価格:紙版:1650円/電子版:660円

良い点

  • 80年代に刊行された元祖クトゥルフアンソロジーシリーズが復刊され、文字も大きめで見やすくなっている
  • どの一篇もそれぞれ面白く、ホラー好きの琴線に触れる魅力に満ちた短篇集
  • ネイティヴの伝説、ブラックユーモア、著者の見た夢を具象化した作品など、多様性に富んでいる
  • クトゥルフの血が脈々と流れ、ファンには堪らない作品集
  • 少しぞくっとするけどワクワクする内容で、神話が好きな人にはたまらない

気になった点

  • 初期の日本語訳のため読みづらい部分がある可能性
  • 内容が難しく、神話をかじってみようとする初心者には敷居が高い
  • 漢字にふりがながあまりふられておらず、読解に苦労する場合がある

こんな人におすすめ

  • クトゥルフ神話ファンで、創生初期の名作を読みたい人
  • ホラー好きで琴線に触れる作品を求める人
  • 旧版の誤植に悩まされていた人

本書は、クトゥルフ神話の創生初期における重要作品を集めた貴重なアンソロジーの復刊版である。初期の翻訳による読みづらさはあるものの、神話体系の根幹を成す名作群を通じて、この架空神話の魅力と影響力を存分に味わうことができる一冊となっている。