【読了ガイド】『クトゥルー6』│収録作品・購入方法まで紹介
はじめに
『クトゥルー6』は、ラヴクラフトを敬愛し、彼の死後にクトゥルフ神話の布教に生涯を費やしたオーガスト・ダーレスによる特別な作品集。
収録されているのは、ラヴクラフトの遺稿や創作メモを核として執筆された、いわば「公式二次創作」とも呼べる2本の短編と1本の中編。
特に「暗黒の儀式」は三章構成の本格的な中編作品として、また、大瀧啓裕氏による「クトゥルー神話ー禁断の考証学ー」も本書籍でのみ読める独占収録となっている。
収録作品リスト
- 「恐怖の巣食う橋」(オーガスト・ダーレス&ラヴクラフト)
- アンブローズ・ビショップは20年前に突如姿を消した大叔父セプティマスの家を訪ねるため、ロンドンからアメリカのエイルズベリー・パイクへと旅した。
ダンウィッチで買い出しをする際、食料雑貨商は「ビショップ」という名前を聞いた途端に態度が変わる。
セプティマスが地元で厄介な存在だったこと、女性と目撃されていたこと、殺されたという噂を告げられる。
屋敷の掃除中、屋根裏部屋には丸や星形の模様が描かれ埃がなく、地下室には深いトンネルと祭壇があった。
大叔父の失踪と不可解な地下構造に包まれた謎とは何か。
- アンブローズ・ビショップは20年前に突如姿を消した大叔父セプティマスの家を訪ねるため、ロンドンからアメリカのエイルズベリー・パイクへと旅した。
- 「生きながらえるもの」(オーガスト・ダーレス&ラヴクラフト)
- 1930年、ニューオリンズへの途中でプロヴィデンスに立ち寄った主人公は、科学的解明を目的に噂の幽霊屋敷「シャリエール館」を借りた。
1927年に亡くなったシャリエール博士は生前、多額の金を払い「いずれ現れる甥」のために館の保存を市に依頼していた。
調査を進めると、博士は6年間取引先とやり取りしていたが誰も直接会ったことがなく、多数のトカゲを購入し実験をしていたという。
隣人は博士が「蛇より大きい黒いもの」を連れ歩き、夜には奇妙な生き物の声が聞こえたと証言した。
館で調査を続ける主人公が発見した科学では説明できない恐ろしい真実とは。
- 1930年、ニューオリンズへの途中でプロヴィデンスに立ち寄った主人公は、科学的解明を目的に噂の幽霊屋敷「シャリエール館」を借りた。
- 「暗黒の儀式」 (オーガスト・ダーレス&ラヴクラフト)
・第一章 ビリントンの森
・第二章 スティーブン・ベイツの手記
・第三章 ウィンフィールド・フィリップスの物語- ニューイングランドの深い森に潜む世代を超えた呪いの物語。
18世紀、リチャード・ビリントンが行った禁断の儀式は時空を超えて悪夢の連鎖を生み出す。
19世紀初頭、リチャードの魂は子孫アリヤに憑依し再び闇の力を呼び覚ますが、運命に抗ったアリヤは己を封印し大西洋を越えて逃れた。
1921年、アリヤの血を引くアンブローズ・デュワートが忌まわしき屋敷を相続し、古文書で家族の暗い過去を発見する。
従弟スティーブン・ベイツが体験したのは夜の詠唱と石塔での禁断の儀式だった。
謎の人物クアミスにより封印が外され、ビリントンの森に秘められた人類の理解を超えた真実が明らかになる。
- ニューイングランドの深い森に潜む世代を超えた呪いの物語。
- 「クトゥルー神話ー禁断の考証学ー」 大瀧啓裕
文庫版仕様の詳細
出版社:青心社
発売日:1989/8/1
ページ数:332ページ
価格:紙版:814円/電子版:660円
購入ガイド
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読者レビューまとめ
良い点
- 「暗黒の儀式」は良く練られたプロットで、視点と役割を効果的に分けた構成が秀逸
- 「恐怖の巣食う橋」はダニッチの事件の後日譚として興味深く、東西の「橋」の概念の共通点が興味深い
- ヨグ=ソトースの圧巻の描写が印象的で、旧支配者の設定が詳細に描かれている
- セネカ・ラファム博士とウィンフィールド・フィリップス助手の後日譚への期待が高まる
- 日本と西洋のファンタジーにおける「橋」の共通概念(「こちら側」と「あちら側」の中間地帯)が興味深い
- ラヴクラフトの原案を基にした「素晴らしき二次創作」として価値がある
- 大瀧啓裕氏の考証学で神話体系の理解が深まる
気になった点
- 全作品がダーレス作のため、作家の多様性に欠ける
- 一部読者には印象に残る要素がヨグ=ソトースの描写程度に感じられる場合がある
- ダーレスの文体や作風が合わない読者には向かない可能性
- 原作ラヴクラフトと比較して物足りなさを感じる読者もいる
こんな人におすすめ!
- ダニッチの事件の後日譚に興味がある人
- ミスカトニック大学付属図書館の設定を詳しく知りたい人
- ラヴクラフトの遺稿を基にした作品に興味がある人
- ヨグ=ソトースの詳細な設定や描写を読みたい人
まとめ
本巻はラヴクラフトの遺稿や創作メモを基にしたダーレスによる「公式二次創作」として、独特の価値を持つ作品集となっている。特に「暗黒の儀式」は三章構成の本格的な中編として、ミスカトニック大学の世界観を深く掘り下げており、神話ファンには見逃せない内容だ。
全作品がダーレス単独のため、作家の多様性を求める読者には物足りない面もある。大瀧啓裕氏の「禁断の考証学」と合わせて、クトゥルー神話の設定資料としての価値も高い一冊といえるだろう。




