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【読了ガイド】『クトゥルー13』│収録作品・購入方法まで紹介

【読了ガイド】『クトゥルー13』│収録作品・購入方法まで紹介

クト13

『クトゥルー-13』は、オーガスト・ダーレス、ロバート・ブロック、ヘンリー・カットナー、C・ホール・トムスンなど多彩な作家による9編を収録した短編集で、青心社の暗黒神話体系シリーズの最終巻となっている。

本巻では、マイナーな邪神を扱った高クオリティな代表作が複数収録されているのが特徴で、特に「ブバスティスの子ら」「恐怖の鐘」「緑の深淵の落とし子」の3作品は、それぞれ異なる邪神の代表作として評価が高い。

また、大瀧啓裕氏による「資料」が本書籍でのみ読める独占収録となっている。

  • 「彼方からあらわれたもの」 オーガスト・ダーレス
  • 「エリック・ホウムの死」 オーガスト・ダーレス
  • 「遥かな地底で」 ロバート・バーバー・ジョンスン
  • 「本を守護する者」 ヘンリー・ハーセ
  • 哄笑する食屍鬼」 ロバート・ブロック
    • 精神科医である「私」のもとに、奇妙な悪夢に悩まされるショパン教授が訪れた。
      唇が薄く指が長い教授は、病気を患っているような皮膚をしていた。
      教授が語る悪夢では、夕暮れのミゼリコード共同墓地を訪れ、納骨堂の壁龕に隠されたレバーを引くと地下洞窟への道が現れる。地下を進むと白い餓鬼が死人を喰らう恐ろしい光景が広がり、餓鬼たちは獲物を求めて地下道を掘り進んでいるようだ。
      教授はいつも崖から落ちて夢から覚めるという。
      興味を抱いた私は教授とともに墓地へ向かい、真相を確かめるべく闇に包まれた納骨堂へと足を踏み入れる。
  • ブバスティスの子ら」 ロバート・ブロック
    • コーンウォールの古びた屋敷で、オカルト研究家マルカムから地底に眠る古代エジプトの遺跡について知らされた「わたし」。
      正式発表を提案するが、マルカムは二人きりでの調査に固執する。
      海辺の洞窟から始まる地下探索で、マルカムは猫神ブバスティスの堕落した神官たちがこの地に逃げ込んだと語る。
      薄暗い地下墓所に並ぶミイラは、実在の生き物を使用した人獣キメラであった。
      祭壇で散乱する新鮮な人骨と埃一つない床を発見し、マルカムの真実を聞いた時、自分が次の生贄だと判明する。
      古代の呪いと現代の狂気が交錯する地下迷宮での運命とは。
  • 恐怖の鐘」 ヘンリーカットナー
    • 18世紀後半のカリフォルニアで、白人のキリスト教会と土着のインディオの対立が頂点に達した時、サン・ザヴィエル伝道本部が三つの鐘を鋳造した。
      ムツネ族のシャーマンが放った呪いは鐘の金属に深く刻み込まれ、鐘の音色が響くと地の底から邪悪な魔物が目覚めた。
      生き残った者たちは恐怖に震えながら鐘を洞窟の奥深くに埋めた。
      150年後、カリフォルニア歴史協会のトッド会長とデントンが、伝説の三つの鐘を発掘する。
      鐘を掘り出した二人の目は充血し激しい痛みに襲われ、作業員の一人は発狂して自らの眼球をえぐり取った。
      デントンは『イオドの書』で調査を進めるが重要部分が削除されており、トッドが迷信と一蹴した瞬間、鐘が鳴らされる。
  • 緑の深淵の落とし子」 C・ホール・トムスン
    • 死刑判決の日、法廷に立つジェームズ・アークライト医師は、妻と胎児の命を奪った罪で死を宣告される。
      奇妙なことに、ジェームズはその判決を望んでいた。
      脳神経外科医として激務に追われていた彼は、指の震えを抑えるため完璧な休暇を求めてケールスマスという小さな町を訪れた。
      人口50人ほどの閉鎖的な共同体で、同業のエブ・リンダー医師と親しくなる。
      ある日発見した異質な雰囲気を持つ館について尋ねても、エブらは「知らないほうがいい」と口を閉ざす。
      町のはみ出し者ソリー・ジョーによると、その館に住むラザルス・ヒースは元船乗りで強烈な臭いを放ち、20年前の沈没事故後に謎の娘カッサンドラと共に現れたという。
      ジョーの警告を無視したジェームズの前に突如現れたカッサンドラとの出会いが、彼の人生を取り返しのつかない闇へ引きずり込んでいく。
  • 「深きものども」 ジェイムズ・ウェイド
  • 「資料」 大瀧啓裕

出版社:青心社

発売日:2005/6/1

ページ数:380ページ

価格:紙版:748円/電子版:660円

良い点

  • 「恐怖の鐘」は素晴らしい作品として高く評価され、鐘(音=振動)と光の解釈が秀逸
  • 「ブバスティスの子ら」はツッコミどころはあるものの、ラストシーンに向けて収束していく構成が優れている
  • 「緑の深淵の落とし子」と「深きものども」はアップデートされたクトゥルー神話を感じさせる現代的な作品
  • 両作品にはラブ・ストーリーの要素が交じり、クトゥルー神話の自由さと多様性を感じさせる
  • 「深きものども」では水没したルルイエの周りをイルカの群れが泳ぐ想像ができて印象的
  • 「遥かな地底で」は都市の地下を舞台とした想像力をかき立てる作品
  • 懐かしい故郷に戻ってきた感じの安心感がある

気になった点

  • クトゥルーものを連続で読むと「全部同じ」という印象でいらつくこともある
  • 「哄笑する食屍鬼」はラストシーンが全てだがイマイチな評価
  • 「深きものども」のイルカの設定はぶっ飛んでいて賛否が分かれる可能性

こんな人におすすめ

  • マイナーな邪神の代表作を読みたい人 音や振動、光といった要素の独特な解釈を楽しみたい人
  • アップデートされた現代的なクトゥルー神話作品に興味がある人
  • ラブ・ストーリー要素のある神話作品を求める人
  • シリーズを通して読み続けてきた人 都市の地下や海洋を舞台とした作品が好きな人

本巻は、暗黒神話体系シリーズの最終巻として、クトゥルー神話の自由さと多様性を示す作品群で締めくくられている。

マイナーな邪神を扱った高クオリティな作品群は、神話世界の奥深さを改めて実感させる内容となっている。

特に現代的にアップデートされた「緑の深淵の落とし子」や「深きものども」は、クトゥルー神話が時代とともに進化し続けていることを示している。

シリーズ全体を通じて、読者はクトゥルー神話の豊かな世界観とその発展過程を体験でき、最終巻にふさわしい充実した内容の一冊といえる。