本作は41,500語の長編小説で、1931年の2月24日から3月22日にかけて執筆された。初出は1936年アスタウンディング・ストーリーズの2月〜4月号で、初めてまとめられたのはO。校訂版がMMに、詳註版がAn1とTDに収録されている。
この物語は、Wilkes’s ExplorationsやThe Voyages of Capt. Ross, R.N.などの論文を始め、ボルヒグレヴィンク、スコット、アムンゼン、および他の初期の探検家たちに関する熱心な報告を経て展開されている。ジェイスン・C・エックハートの手法にも倣い、物語の前半は1928年から1930年にかけてのバード提督の探検隊と同時期の他の探検隊の影響を受けていて、さらに、1901年に北極圏への探検を描いたM. P.シールの小説『The Purple Cloud』からも、スタイルやイメージのヒントを得ている。
登場人物のダイアーの歴史に関する余談は、「オールド・ワン」たちの社会的・経済的機構を通じて、彼らと人類が同一視され、ラヴクラフトのユートピア的な願望が表れている。彼らの政治体制や奴隷制度に見られる社会主義的な傾向は、当時のラヴクラフトの思想を反映されていると考えられ、ショゴスはアフリカ系アメリカ人の比喩にも読める。また、オスヴァルト・シュペングラーの『西洋の没落』と類似点があることから、「オールド・ワン」たちの歴史の着想を得ている。
ラヴクラフトは南極大陸が未踏であり、かつヒマラヤ山脈ほど広く知られていなかったことと、南極大陸は最も高い山脈があり、畏怖の念を引き起こす場所だったために、この物語の舞台をヒマラヤにせず、南極大陸に設定した可能性がある。
『狂気の山脈にて』は「テケリ=リ!」という特徴的な鳴き声や、エレバス山のくだりなど、エドガー・アラン・ポーの『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』からアイデアを借用したと思われるが、ポーの作品の続編というわけではない。
- 私…地質学者
- フランク・H・パボディ博士
- 生物学のレイク
- シャクルトンやアムンセン、スコット、バードら…第一陣
- スタークウェザー・ムーア探検隊…第三陣
- 物理学のアトウッド(気象学にも造詣が深かった)
- ナサニエル・ダービー・ピックマン財団…出資してくれた人
- J・B・ダグラス…アーカム号を指揮 探索の船を操縦
- ゲオルク・ソルフィンスソン…ミスカトニック号の指揮 探索の船を操縦
- グンナルソンとラーセン
- オーレンドルフとワトキンス
- マイルズ
- リョーリフ
- ジェドニー
- スコアズビー
- 古のもの
- ショゴス
【舞台】
- 1930年 南極
1930年から1931年にかけて、ミスカトニック大学の南極探検隊が新型ボーリング機を使って南極の調査を進めていた。そんな中、彼らは「オールド・ワン」と呼ばれる化石を発見する。生物学者のレイクはこの発見に興奮し、詳しい調査のためにメイン隊から分かれて行動することになった。
ところが数日後、分隊との連絡が途絶えてしまう。不安を感じたダイアーたちが救出に向かうと、そこには想像を絶する光景が広がっていた。無残な姿で発見された隊員たちの遺体。そしてレイクが報告していた「未知の生命体」が埋められていたのだ。
南極の氷の下に眠る、人知を超えた何かの存在。その真相に迫るにつれ、探検隊の面々は徐々に狂気に飲み込まれていく。この未知の生命体の正体とは― そして南極に潜む恐るべき秘密とは―