本作は1964年、アーカムハウスで刊行された、キャンベル初の単行本である。
『緑の崩壊』はラヴクラフトが代作した『石の男』に由来し、セベクとヴルトゥームの言及はそれぞれ別の作品から取られたもの。本作ではヴルトゥームが子供であるという描写から、途方もない年月を過ごせる存在だということがわかる。また、後にリン・カーターはヴルトゥームをヨグ=ソトースの子、クトゥルーとハスターの弟とした。
2013年に刊行された『グラーキ最後の黙示』は、ブリチェスター大学図書館のレナード・フェアマンがグラーキ崇拝を調査するために、ガルショーの町を訪れる中編作品。町の住民が彼に『グラーキの黙示録』を手渡す中で、物語が展開され、本作がグラーキ神話に終止符をうった。
『グラーキの黙示録』はブリチェスター大学図書館の所蔵本とされていたが、後に失われた可能性が指摘されている。しかしこの説はキャンベル自身の設定とは異なり、『森のいちばん暗いところ』によれば、学生の放火によって『ネクロノミコン』や『妖蛆の秘密』といった稀覯書とともに焼失したとされている。
- トーマス・カートライト…画家
- カーニー・アラン…語り手
- ジョゼフ・バルガー…友人
- 不動産屋
- トーマス・リー
- グラーキ
- 木のような姿の怪物
【舞台】
- 1960年 ブリチェスター
英国ブリチェスター郊外、伝説の隕石湖が潜む辺境の地。そこには、人知を超えた存在が棲むという噂が、幾世紀にもわたって囁かれてきた。1790年、神秘的な神グラーキを崇めるカルトが、この地に足跡を残す。だが、彼らの姿は1870年頃を最後に、闇の中へと消え去った。
時は流れ、1960年。画家カートライトが、この忌まわしき地に魅せられるように移り住む。人里離れた静寂の中で、彼の筆は新たな創造の息吹を得るはずだった。だが、やがて彼を襲う悪夢。そして、前住人の不可解な失踪。カートライトの心に、次第に不安の影が忍び寄る。
運命の歯車が大きく動き出したのは、隣家で発見された一冊の手書きノート。『グラーキの黙示録』と呼ばれるその書は、カートライトの目の前に、想像を絶する世界を広げる。神グラーキ、カルト、そして生ける屍となった信者たち。現実と幻想の境界が、今まさに崩れ去ろうとしていた。
友人アランへの悲痛な電話。不動産屋の不審な態度。そして、消息を絶った友バルガーの運命。カートライトを取り巻く謎は、次第に恐怖の色を帯びていく。
闇が湖面を覆い始めたとき、カートライトとアランは運命の書「黙示録」を手に入れる。だが、それは悪夢の幕開けでもあった―。