『心霊電流』は、アメリカの著名なホラー作家スティーヴン・キングによって書かれた長編小説である。原題は『Revival』で、2014年に英語で出版され、2019年に日本語に翻訳された。
邦題の『心霊電流』は原題の直訳ではなく、内容に即した意訳となっている。原題の「Revival」には「復活」や「再生」といった意味がある。
本作はクトゥルフ神話の要素を含んでおり、特に「妖蛆の秘密」という概念が登場する。また、冒頭部分にはH・P・ラヴクラフトの文章が引用されており、キングがクトゥルフ神話の伝統を意識して執筆したことがうかがえる。
映像化の計画も存在し、ホラー映画の名匠マイク・フラナガンが監督として名乗りを上げていた。しかし、残念ながらこの企画は実現には至らなかった。
- ジェイミー・モートン…語り手
- チャールズ・ジェイコブス…ハーロウの町にやってきた若い牧師
- クレア…ジェイミーの姉
- アンディ…ジェイミーの兄
- コン(コンラッド)…次男
- テリー(テレンス)…三男
- リチャード…ジェイミーの父
- ローラ…ジェイミーの母
- パッツィ(パトリシア)…ジェイコブス師の妻
- モーリー(モーリス)…ジェイコブス師の息子
- ドウェイン・ロビショード…リチャードの友人
- アストリッド・ソダーバーグ…ジェイミーの高校時代の恋人
- ポール・オーヴァートン…クレアの夫
- キャシー・モース…稲妻写真の被写体になった少女
- ヒュー・イェーツ…音楽界の大立者
- ジョージア・ドンリン…ヒューの秘書
- ブリー(ブリアナ)・ドンリン…ジョージアの娘
- アル・スタンパー…ジェイコブスの助手
- ジェニー・ノールトン…アストリッドの友人、看護師
- キャシー・モース…稲妻写真の被写体になった少女
- ロバート・リヴァード…ジェイコブスの「治療」を受けた少年
- ムーキー・マクドナルド…ヒューのスタジオのミキサー
- ノーム・アーヴィング…ジェイミーの高校時代のバンド仲間、ギタリスト
【舞台】
- 1962年〜2012年 ハーロウ
1962年、メイン州の静かな田舎町に若き牧師チャールズ・ジェイコブスが赴任する。6歳のジェイミー・モートンは、牧師一家と親しくなり、特にジェイコブス師の電気への並々ならぬ情熱に魅了される。ある日、牧師は手製の電気仕掛けのキリスト像をジェイミーに披露し、少年の好奇心を掻き立てる。
悲劇は突然訪れる。ジェイミーの兄コンが事故で発声障害を負う。両親が治療方針で対立する中、ジェイコブス師は「神経電気刺激器」なる発明品でコンを治療し、奇跡的に成功を収める。この出来事は、ジェイミーと牧師の絆を一層深めることとなる。
しかし1965年10月、不幸な交通事故でジェイコブス師は妻子を失う。深い悲しみに沈んだ牧師は、11月21日の説教で突如、神を呪う言葉を吐く。町中に衝撃が走り、ジェイコブス師は解任され、去っていく。別れ際、牧師はコンへの治療がペテンだったと告白し、ジェイミーの心に傷を残す。
時は流れ、ジェイミーは音楽の道を歩み始める。高校時代はバンド活動に没頭し、初恋も経験する。しかし1992年、36歳になった彼はヘロイン中毒に陥り、プロのギタリストとしてのキャリアを失う。
どん底にいたジェイミーは、オクラホマ州のフェスティバルで偶然、ダン・ジェイコブスと名乗る男と再会する。かつての牧師は今や、電気を使った派手なトリックで観客を魅了していた。ジェイコブス師の治療で薬物依存から脱したジェイミーだが、同時に危険な実験の片鱗も目にする。
2008年、52歳となったジェイミーは、コロラド州デンヴァーの音楽スタジオで働きながら、不可解な悪夢に悩まされていた。そんな折、「ダニー牧師」の名で大イベントを開催するジェイコブスの噂を耳にする。同僚のヒュー・イェーツもまた、ジェイコブス師の治療を受けた過去があり、奇妙な後遺症に苦しんでいた。
真相を突き止めるべく、ジェイミーとヒューはイベントに潜入する。そこで目にしたのは、電気を用いた劇的な治療の数々。車椅子の者が歩き出し、難病が癒される光景に、二人は戦慄する。16年ぶりに再会を果たしたジェイコブス師。その眼差しに潜む狂気と、秘められた野望の行方は―。