『Wings in the Night』は1975年に完成し、4,900語の短編小説として世に送り出された。物語の原案自体は1969年に構想されたが、当時のバーグランドには、その構想を十分に実現させるだけの技巧が備わっていなかった。
転機となったのは1972年頃、ウォルター・C・デビルJr.の『ホームカミング』との出会いである。デビルが用いたモザイク形式に着想を得たバーグランドは、従来の線形的な物語展開ではなく、物語の断片を組み合わせる手法を採用した。この手法により、読者は最後まで全体像を把握しづらく、恐怖な物語を体験することになる。
この新たな手法の習得と作品の完成には3年の歳月を要した。他の作家のフォーマットを借用しつつ独自の世界観を構築する試みは、バーグランドにとって挑戦的な創作過程となった。
本作の題は『The Wings of Darkness』となる予定だっただが、別の作家が先にこの題の作品を出したため、変更となった。
影響を受けた作品の中に、フランク・ベルナップ・ロングの『ティンダロスの猟犬』もある。
- エリック・モルトーネ
- チャールズ・B・グリッツ
- ディブ・サザン
- シンディ・ヒンソン
- マイノグーラ
【舞台】
- 1973年 セイラム
精神病院に収容されたエリックの物語から幕が開く。彼の背中には大きな傷があるが、その由来すら覚えていない。さらに、日没に異常な反応を示す彼は、「チャールズ・B・グリッツ」という作家の名を口にする。
場面は過去へ遡り、ダグラス島に住むチャールズを取材しようとするモルトーネの視点に切り替わる。島では屈強な警備員サザンが彼を阻み挫折する。
しかし二日後、モルトーネは泳いで島に侵入。予想外にも簡単に屋敷に辿り着き、チャールズに発見されるも、屋敷に招かれる。
チャールズとの対話中、突如島全体が停電に見舞われる。闇の中、得体の知れない存在「マイノグーラ」が現れ、モルトーネは逃げ惑う。その様子を目撃するサザン。
物語は再び現在に戻る。事件から一年後、独房に収監されたモルトーネは、チャールズの最期の言葉を思い出すが…。