本作は9,350語の短編小説で、1935年11月5日〜9日にかけて執筆されたもの。初出は1936年WT12月号で、単行本初収録はO。校訂版がDHに、詳注版がCCおよびAn2巻に収録されている。
本作の結末に関して、ブレイクが日記で「ロデリック・アッシャーだ」と述べるくだりが謎めかしい出来事の鍵である。「文学における超自然の恐怖」の中で、ラヴクラフトはエドガー・アラン・ポーの『アッシャー家の崩壊』を解説しているが、その解説を見るに本作の結末も同じなのかもしれない。ニャルラトテップの化身の一つである「闇をさまようもの」がブレイクに取り憑き、体を乗っ取った後で不運にも雷に打たれてブレイクと闇をさまようものの両者が滅んだ可能性が考えられるのだ。
物語の制作は『星から訪れたもの』が発表された際、読者のB・M・レイノルズがロバート・ブロックに賛辞を寄せ、「ラヴクラフトも自らの作品を捧げ返し、ブロックへの賛辞とするべきだ」と提案したことに触発された。これを受けてラヴクラフトは、ロバート・ブロックにちなんだ変名の登場人物が窓の外を見つめながら死ぬという物語を執筆したのだ。
他にも本作のプロットは、ラヴクラフトがダシール・ハメットの『Creeps by Night』で読んだハンス・ハインツ・エーヴェルスの『蜘蛛』から着想を得ている。エーヴェルスの作品は、窓を通して見かけた不気味な女性に引き寄せられた男性が、次第に自我を失っていく物語である。
本作に登場する多くの場所は実在のものに基づいていて、ブレイクの書斎からの景色の描写は、ラヴクラフトが実際に見ていたカレッジ通り66番地の景色を反映している。同様の景色は今でも、カレッジヒルの見晴らしの良いプロスペクト・テラスから見ることができ、さらにブレイクの住所は実際にロバート・ブロックが住んでいたミルウォーキーの住所であり、描写された教会はフェデラル・ヒルのアトウェルズ通りにあるセント・ジョン・カトリック教会に基づいている。
- ロバート・ブレイク…小説
新たな創作の舞台を求め、怪奇小説作家ロバート・ブレイクはプロヴィデンスへ引っ越してきた。この古い街で、彼は執筆活動に没頭しようとしていた。しかし、その計画は思わぬ方向へと導かれていく。
プロヴィデンスの街に佇む、忘れ去られた古い教会。ブレイクは、その不気味な魅力に惹きつけられていた。
街の人々は、まるでその存在を認めたくないかのように教会を避け、近づく者さえいない。しかし、ブレイクは周囲の忠告も聞かず、好奇心に駆られるままに足を踏み入れる。
教会の内部は、想像を絶する異様な光景だった。まるで光そのものを拒絶するかのように、全ての窓が閉ざされている。薄暗い空間に漂う、得体の知れない緊張感。
探索を進めるブレイクの前に、次々と驚くべき発見が待ち受けていた。禁断の書物、不可解な多面体、そして謎めいた「星の智慧派」協会の儀式の痕跡。特に、その多面体は不思議な魅力を放ち、ブレイクの心を捉えて離さない。
しかし、突如として彼を襲う言い知れぬ恐怖。ブレイクは急いでその場を後にする。だが、もはや後戻りはできない。彼は知ってはならないものを見てしまったのだ。
古の教会に眠る禁忌に触れたブレイク。その行為が引き金となり、町全体を覆う未知なる恐怖が目覚め始める。彼の好奇心が呼び覚ましたものとは一体何なのか。
怪奇小説作家自身が、最も恐ろしい物語の主人公となる瞬間が訪れようとしていた。