黄の印

黄の印

The Yellow Sign

リン・カーター クト3
概要
登場人物
あらすじ

ロバート・W・チェンバースの、1895年に刊行された短編集『黄衣の王』に収録されている。

『黄衣の王』は『黄の印』のみならず、『評判を回復するもの』『仮面』『ドラゴン路地にて』など、各作品を結びつける重要な役割を果たしている。ラヴクラフトは書簡の中で、この書物が『ネクロノミコン』を着想する契機となったことを明かしている。

『黄衣の王』で暗示的に言及されるハスター、ハリの岸辺、ヒヤデス星団といった固有名詞は、後にラヴクラフトによって神話体系に組み込まれることになった。さらに、同短編集の巻頭に掲げられた一節には、ハスターと同様にビアスの作品に由来するカルコサの名も登場する。

「黄の印」は作中で縞瑪瑙のメダルとして描写される。『クトゥルフ神話TRPG』では、歪んだ三つ巴を想起させる図案として「黄の印」が表現されている。

  • スコット…主人公
  • テシー・リアドン…ヒロイン
  • トーマス…ベルボーイ
  • 夜警

【舞台】

  • マサチューセッツ州

春の穏やかな日差しの中、画家であるスコットはモデルのテシーと共に制作に励んでいた。そんな平和な時間に、不意に目に留まったのは教会へ入っていく奇妙な夜警の姿。

後に窓から再び夜警を見た主人公は、その顔に強烈な違和感を覚える。ぶよぶよと歪んだ表情は蛆虫を思わせ、見るだけで不快感が広がった。同じ頃、テシーの肖像画も突如として描けなくなっていく。何度修正しても肌の色彩が悪化し続け、制御不能に陥ったスコットはついにキャンバスを破り捨てた。

夜警の話をするとテシーも同じ人物を見ていたと言う。さらに彼女は繰り返し見る悪夢を告白した—その夢では、夜警が運転する霊柩車に横たわるスコットの姿があり、テシーがそれを窓から見ているという恐ろしい光景だった。

翌日、ベルボーイのトーマスから教会が突如売却されたという報道を聞く。さらにトーマスも夜警に関する恐ろしい経験を打ち明ける。怒りにまかせて夜警を殴ったところ、夜警の指が不自然に取れてしまったという。

その夜、スコットもついにテシーと同じ悪夢を見る—今度は棺の中で自分が横たわり、動けない恐怖を味わうという逆転した視点だった。

ある夜の帰宅途中、スコットは再び教会の夜警を目撃する。夜警の唇から漏れる言葉

「黄の印はみつかったか」―

スコットは帰宅後もこの言葉が脳裏に焼き付いていた。

翌朝、テシーへの贈り物として十字架のネックレスを渡す主人公。お返しにテシーは縞瑪瑙のメダルをくれた。しかしそこには人間の文字とは思えない奇妙な刻印があり、テシーはそれを悪夢が始まった日に拾ったと告白する。

このメダルこそが「黄の印」なのだろうか—

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