本作は1936年、WTの11月号に収録された。
- 語り手…幻想文学作家、エドガー・ゴードンの友人
- エドガー・ヘンキスト・ゴードン…幻想小説家
- 「暗きもの」…ニャルラトホテプの化身
「わたし」はある幻想小説家、エドガー・ゴードンとの奇妙な友情と、その謎めいた死の真相を語り始める—これまで世間には明かされなかった真実を。
六年前、同じ町に住む幻想文学界の鬼才ゴードンと出会った語り手は、その博学さと文体に魅了され、やがて親交を深めていく。普段は孤独を好み、文通以外に人と交わることの少ないゴードンが、語り手との交流を喜ぶのは意外だった。やがて語り手は驚くべき秘密を打ち明けられる—ゴードンの小説はすべて「夢」から生まれているという事実を。
しかしゴードンの夢は通常の夢とは違っていた。彼は昼夜を問わず、わずか15分でも眠りに落ちると、宇宙の最果ての暗黒都市や、不可思議な生命体との遭遇、三次元では描写できない現象まで、鮮明に体験するという。夢の中でガス状の知性体や奇怪な存在と交流し、「アザトース」や「ユゴス」など、古代の秘本にのみ記された存在と出会っていたのだ。驚くべきことに、ゴードンはこれらの禁断の書物を読む前から、すでに夢の中でそれらの存在に出会っていたという。
やがてゴードンの作風は変化し始める。人間ではない存在の視点で物語を書き、その内容は病的で読者の好みを超え、出版社からも拒絶されるようになる。同時に彼の生活も変わり、外出を止め、夕闇が落ちると小さなランプだけを頼りに暮らすようになる。体はやせ細り、目は虚ろに輝き、語り手は友の精神状態を心配する。
最後の会話の日、青白い月光の中で異様に輝く目をしたゴードンは、衝撃の告白をする—「わたしはメシアになるよう選ばれていた」。彼が仕えるのは神ではなく、「暗きもの」。それは邪悪ではなく「異界的な存在」だという。ゴードンは地球における暗きものの使者となるのだと…