本作は1930年、WTの3月号に収録された。
- ウィリアム・ラーキンズ…作家
- コリンズ…不動産屋
- ジョン・ブレント…科学者
- ジョナサン・ロバーツ…ブレントの協力者
- ホルマン・ダヴィット
- 食屍鬼のような怪物
【舞台】
- ロンドン
不動産業者コリンズとの会話の中で、ウィリアム・ラーキンズは一軒の家に強い関心を示す。過去に入居者が亡くなり、奇妙な苦情が相次いでいるという物件だ。コリンズは開かずの間の存在や、家の中で聞こえる不可解な足音について警告するが、ラーキンズの決意は揺るがない。
かつてこの家で狂死したという科学者ジョン・ブレントの噂も、むしろラーキンズの好奇心を刺激する。ブレントはエーテルから霊を引き出す理論を研究していたらしい。謎めいた過去を持つこの家に、ラーキンズは惹かれるように引っ越しを決める。
引っ越し後6日目、執筆に集中していたラーキンズの耳に、二階から奇妙な音が届く。狭い空間を歩く足音、壁を叩くような反響音。調査を開始したラーキンズだが、二階の各部屋には異常がない。残るは例の「開かずの間」だけだ。
ブレントの協力者ジョナサン・ロバーツへの手紙を通じて、ラーキンズは衝撃的な事実を知る。ブレントは浮遊するエーテルを肉体に宿す実験を行っていた。ある青年の魂を抜き、別の魂を宿そうとしたのだ。しかし実験の成否は不明のままブレントは死亡したという。
更なる調査でラーキンズは、この家で起きた別の死亡事件を発見する。ホルマン・ダヴィットという男性の不可解な死だ。全身に奇妙なあざがある異常なほど冷たくなった遺体。コリンズの証言と食い違う部分があり、真相は闇に包まれている。
翌朝、ジョナサンの手紙に記された「草の生えない場所」を庭で発見したラーキンズ。その形状に違和感を覚え、試しに自らの体を当てはめてみると、それは膝を抱え込んだ人間がぴったりと収まる形だった―。