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臨終の介護

臨終の介護

The Death Watch

ヒュー・B・ケイヴ クト5
概要
登場人物
あらすじ

本作は1939年、WTの6,7月号に収録された。

  • ハリイ・クランドール…無線技師、マークの同僚
  • エレイン・イングラム…マークの姉
  • ピーター・イングラム…エレインの夫、作家
  • マーク…エレインの弟
  • ヤゴ…セミノル族を名乗る不気味な男
  • ビル・メイシイ…無線局の同僚
  • ウェンデル医師…マークの死に立ち会った医者

【舞台】

  • フロリダ

沼地の闇に囲まれた孤立した屋敷で、死者を呼び戻す秘儀が静かに進行していく。無線技師のハリイは、同僚マークの死に立ち会った後、その妹エレインに嘘をついた—「死ぬ前に、君を愛していると言っていた」と。しかし真実は語れないほど恐ろしいものだった。

エレインは夫のピーターと共に、不吉な噂のある弟の屋敷へ移り住む。「マークは戻ってくる」と固く信じ、セミノル族を名乗る謎めいた男ヤゴを雇い入れた彼女は、日に日に現実から遠ざかっていく。作家であるピーターは妻の異変に気づき、ハリイに助けを求めるが、ハリイの「心霊研究の本を読んで論破せよ」という助言が、想像もしない方向へピーターを導いてしまう。

ある夜、ハリイは彼らの屋敷を訪れる。そこで目にしたのは、本を読むエレイン、物言わぬヤゴ、そして二階の部屋で狂気に取り憑かれたように無線装置を組み立てるピーターの姿だった。極超短波装置と奇妙な増幅器を接続し、科学では説明できない振動を生み出そうとするピーター。引き出しの中には黒魔術とヴードゥー教の本が大量に隠されていた。

「エレインには内緒だ」と告げるピーターの瞳には、かつてマークの目に見た不吉な光が宿っていた。帰り際、ハリイは衝撃的な光景を目撃する—エレインがマークの写真に向かい、異教の神々に祈りを捧げる姿を。「強壮なるナイアーラトテップ」「邪悪の皇太子ハスター」に弟の復活を願う彼女の言葉は、沼の闇よりも深い恐怖をハリイの心に植えつけた。
科学と黒魔術、二つの方法で死者を呼び戻そうとする夫婦。しかし彼らは知らない—時に死者は呼ばれなくとも戻ってくることを。

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