本作は1937年『ウィアード・テイルズ』9月号に収録された。
オーガスト・ダーレス(1909年 – 1971年)とマーク・スコラー(1908年 – 1977年)は、ウィスコンシン州ソーク・シティの高校で同級生だった。スコラーは後に小説家、批評家、伝記作家として活躍し、カリフォルニア大学で英語学の教授を務めた。二人は高校時代から小説を共同で執筆していた。
1931年の夏、故郷で再会した二人は別荘を借り、缶詰工場でアルバイトをしながらパルプ小説を量産し、収入を得ようとした。毎朝ダーレスがプロットを考え、スコラーが第一稿を書き、夜にダーレスが仕上げるという分担で、怪奇小説を次々と書き上げた。
ダーレスの単独の怪奇小説は展開が緩慢で平板な傾向があったが、スコラーとの共作はテンポが良く、ダイナミックで面白みがあった。ダーレス神話は、この時期の怪奇パルプ小説の大量生産の過程で生まれたと考えられている。
本作には、ダーレス神話特有の名称は登場しないものの、このプロットはダーレスの後の神話作品で繰り返し用いられるようになった。
- エリック・サマセット…弁護士
- アンバー・ジョイス…ロンズディル家の娘
- アーサー叔父…行方不明
- ヒラリー叔父
- ネイピア神父…ヒラリーの兄
- フロビッシャー…使用人
- チャールズ・ランバート教授…ネイピアの友人
【舞台】
- ロンドン
弁護士のエリックは、ジョイスからの依頼で、ブラックプールからロンドンへと向かっていた。ジョイスの叔父、アーサーが行方不明になったのだという。
アーサーが最後に目撃されたのは、ジョイスの親戚、ヒラリーを訪ねた日のことだった。その夜、ジョイスが先に寝たあと、深夜2時頃、突然の叫び声と物音が聞こえた。慌てて駆けつけると、ヒラリーが倒れていた。どうやら、アーサーに薬を盛られ、眠らされていたようだ。それ以来、アーサーの姿を誰も見ていない。
ジョイスの屋敷は、彼女の曽祖父が建てたものだが、もともとは僧院か聖堂だったらしい。しかし、かつてこの建物が邪教崇拝に使われていたというのだ。曽祖父の遺言には、屋敷の地下深くに納骨堂があり、隠された通路でそこへ行けると書かれていた。
屋敷に隠された”過去”が、彼らにどのような運命を用意しているのか──。