順にWT1944年3月号、1945年7月号、1949年3月号、1951年5月号、1952年1月号に掲載された。
作中時は1938年から1947年まで。各編は、それぞれの語り手の手記であり、彼らの失踪後に公表されたものと位置づけられている。具体的な状況は5編それぞれ異なるが、概ねとしてはパターン化している。作中時では9年にわたる物語であるが、明らかとなっているのは手記に残されている部分のみ、つまり主人公が博士と関わってから身をくらますまでのごく短期であり、本格的に潜伏準備している間の出来事は描写されておらず、空白期間の割合が大きい。
人類がクトゥルフに抗戦するというオカルトアクションである。シュリュズベリイ博士のアクティブなヒーロー像は、後続作品群に大きな影響を与えた。文庫(クト2)カバーでは「クトゥルーと人類との凄惨な闘争を描いたクトゥルー神話の白眉」と紹介されている。既存作品の後日談であり、さらにラヴクラフトの存在が取り込まれており、虚実が入り混じる。
全5部作のうち、第2部のみ別の邦訳が存在し、単発で特定書籍に収録されている。
- ラバン・シュリュズベリィ博士
- アンドルー・フェラン…一人目の主人公
- ティモト・フェルナンデス
- アセナス・デヴォト医師…フェランを診察した人
- ピーバディ…ミスカトニック大学の図書館員
- ネイランド・マッシー
- ペトラ師…マッシーを保護している人
- エイベル・キーン…二人目の主人公 フェランの失踪後 フェランの家に住んでいた人 神学校に通う学生 インスマスでマーシュを追う 最後に死ぬ
- エイハブ・マーシュ…深きもの
- クレンボーン・ボイド…3人目の主人公、アサフ・ギルマンの子孫
- ジュダとパイロン…ギルマンの相続を担当した弁護士
- ジェイフェット・スミス…ギルマンの遺産を狙う深きもの
- ヴィベルト・アンドロス教授…ギルマンと繋がりのある教授
- アンドラダ…秘密結社の神父
- ネイランド・コラム…4人目の主人公
- ヘンリー・ビルゴア…教授
- ホーヴァス・ブレイン…5人目の主人公、考古学者
- アサフ・ウェイト…ブレインの祖父
- アーヴォルド・ブレイン…ホーヴァスの義理両親
- ホルバーグ准将…海軍 黒い島の破壊を手伝ってくれた人
- バイアクヘー
- 深きもの
- クトゥルフ
【舞台】
- 1938年~1947年 ボストン インスマスを覆う影の続編
第一部では、1938年、「想像力に欠如した者」という奇妙な条件で雇われた秘書アンドルー・フェランが物語の中心となる。20年間の失踪から突如帰還したシュリュズベリイ博士の下で働き始めたアンドルーは、黄金の蜂蜜酒によって超常の世界へと導かれる。南米ペルーの地底湖、イギリス、そしてルルイエへと、バイアクヘーに乗って繰り広げられる冒険。クトゥルフ教団との闘争、そして「赤の供物」の謎―。
第二部は1940年、アンドルーとエイベルによるインスマスでの冒険を描く。深きものの脅威が再び頭をもたげたインスマスで、二人はマーシュ家の新当主エイハブ・マーシュの正体を暴く。魔力石を用いた策略を立て、緊迫したアクションが展開される。
第三部の主人公は、クリオール文化研究家クレイボーン・ボイド。大叔父アサフ・ギルマン教授の遺した研究資料から、邪教団の存在を知ることになる。敵の追跡を逃れながら、クレイボーンはペルーの奥地へと向かう。そこで彼は、クトゥルフを崇める人外の司祭アンドラダと対決し、地底湖の神殿でクトゥルフの従者と遭遇し…。
第四部は、ロンドンの小説家ネイランドを主人公に据える。彼の怪奇小説が現実のクトゥルフ崇拝を反映していたことから、深きものに狙われることに。シュリュズベリイ博士と共に、失われた禁書「アル・アジフ」を求めてアラビアへ。砂漠に埋もれた伝説の都市アイレムでの冒険、アルハザードの亡霊との対話など、神秘的な要素が満載。
第五部は、1947年、考古学者ホーヴァスを中心に物語が進行。1928年のインスマス事件から奇跡的に生き残った彼が、シュリュズベリイ博士らと共にルルイエの島を探索する。アメリカ政府の支援を受けた一大作戦で、ついにクトゥルフと対峙することになる―。