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暗黒のファラオの神殿

暗黒のファラオの神殿

Fane of the Black Pheraoh

ロバート・ブロック クト3
概要
登場人物
あらすじ

本作は1937年、WTの12月号に収録された。

  • カータレット大尉
  • アラブ人
  • ネフレン=カ
  • ニャルラトホテプ

【舞台】

  • エジプト カイロ

砂漠の風が吹きすさぶカイロの夜。老齢のカータレット大尉は、目の前のアラブ人を鋭い目で見据えていた。このアラブ人は大尉を街の地下深くに眠る秘められた納骨堂へと案内しようとしていた。アラブ人は秘密を語ることを禁じられているから、カータレットに公表してもらおうとしているのだ。

「何かの駒にされているのか」とカータレットは苛立ちを隠さなかった。しかし彼は、そこに何かが隠されていることは承知していたのだ。

アラブ人は静かに懐から奇妙な金属の印を取り出した—ネフレン=カの印だ。老大尉の目に驚きの色が浮かんだ。

「これはネクロノミコンに記されている品だ…だがエジプトにネクロノミコンは存在しないはずだ」

「私はアルハザードの知人です」アラブ人は穏やかに答えた。

案内する前に老大尉は饒舌に語り始めた。エジプト駐屯時代に芽生えた考古学への情熱、そして次第に深まっていった暗黒の知識への渇望。「専門家どもは『暗黒神の神殿を汚してはならない』と警告したがな」と彼は嘲笑うように言った。彼の好奇心はそんなもので止まるものではなかった。

ネフレン=カの噂を耳にしたとき、カータレットは躊躇なく調査に乗り出した。伝説によれば、ネフレン=カは玉座を奪った神官であり、ニャルラトホテプの熱狂的な信奉者だった。彼は権力を握るとすぐに、他の全ての信仰を禁じ、ニャルラトホテプのみを崇めることを命じた。しかし、やがて反乱が起き、新たな支配者によってニャルラトホテプの像は破壊され、関わった神官たちは追放された。

ブバスティスの神官たちはイギリスまで逃れたが、ネフレン=カとその信奉者たちは包囲されていたため、カイロ近郊に秘密の納骨堂を作り、そこで最期を迎えたとされていたのだ。

老大尉はルードヴィヒ・プリンの『デ・ウェルミス・ミステリイス』で「暗黒のファラオ」と呼ばれるネフレン=カについての章を発見していた。そこには、地下の納骨堂がカイロの真下にあること、過去に一度封印が解かれたことが記されていた。

ネフレン=カは真理と予言の力を求めていた。

ネフレン=カはついにニャルラトホテプを顕現させることに成功し、百人もの生贄を捧げる儀式を行って予言の力を得た。そして納骨堂の壁に、その予言を記したというのだ。

カータレット自身は懐疑的な口ぶりでありながらも、「もしこれが真実なら歴史を覆す発見になる」と考えていた。そして彼はその発見を公表するつもりでいた。

アラブ人は静かに耳を傾けた後、今からでもその納骨堂へ案内すると言った。

「あなたの話は真実です。ただし、解釈が間違っています」その声は夜の闇よりも深かった。

「ネフレン=カの神官たちは死にましたが、教団は途絶えてはいません。私もまた、その神官の一人なのです」

砂漠の風が強まり、二人の姿を包み込んだ。カータレット大尉は気づかぬまま、古代の暗黒へと一歩一歩近づいていた—予言の真実を求めて。

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