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忘却より

忘却より

Ex oblivione

ハワード・フィリップ・ラヴクラフト 新訳4
概要
登場人物
あらすじ

この作品は715語の散文詩で、1920年末か1921年初頭に執筆されたと推測される。United Amateur 1921年3月号にウォード・フィリップス名義で初出し、単行本初収録はBWS、校訂版がMWに収録されている。

作品の中心テーマである「生は死よりも恐ろしい」という考えは、ラヴクラフトの散逸した作品「生と死」の主題でもあったと考えられている。この思想の背景には、当時ラヴクラフトがショーペンハウアーの著作を読んでいたことが影響しているとされる。

例えば、ラヴクラフトの「ダゴン弁護論」(In Defence of Dagon)には「忘却に勝るものはない。なぜなら、忘却の世界では、いかなる願望も実現されるからである」という一節がある。この考え方は、生よりも死や忘却を肯定的に捉える本作品のテーマと通じるものがある。

【収録】

  • 「新訳クトゥルー神話コレクション4」
  • 語り手

【舞台】

  • ザカリオン

現実世界に失望し、日々の憂鬱に押しつぶされそうな一人の男がいた。彼は夜ごと、夢の中で異国の世界を彷徨い歩く。そこでは、現実では味わえない驚異と美に満ちた光景が広がっていた。

しかし、目覚めた後の灰色の日常はますます耐え難いものとなっていく。やがて彼は、より鮮明な幻視を求めて麻薬に手を染める。その効果は絶大だった。夢の中で彼は「ザカリオン」と呼ばれる神秘の都にたどり着く。

そこで彼が発見したのは、古の賢者が残した一枚のパピルス。そこには、想像を絶する驚異への入り口かもしれない「青銅の小門」のことが記されていた。高い障壁に嵌められたその門は、未知の世界への扉なのか、それとも破滅への道なのか。

彼は門を開くため、さらに大量の麻薬を摂取し始める。現実と幻想の境界が曖昧になっていく中、ついに彼は門の前に立つ。

そして、その扉は、ほんの少しだけ開いていた。

果たして門の向こうには何が待っているのか―。

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