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妖術師の帰還

妖術師の帰還

The Return of the Sorcerer

クラーク・アシュトン・スミス クト3
概要
登場人物
あらすじ

本作は1931年、『ストレンジ・テールス』の9月号に掲載された。

フランク・ベルナップ・ロングは1928年に『喰らうものども』を世に出した。この作品は冒頭にラヴクラフト考案の架空書物「ネクロノミコン」からの一節を引用しており、ラヴクラフト以外の作家による初のクトゥルフ神話作品となった。

クラーク・アシュトン・スミスの未公開原稿『サタムプラ・ゼイロスの物語』に登場する邪神ツァトゥグァを気に入り、自作『闇に囁くもの』にこの存在を取り入れた。

スミスのこの作品では、ロングの『喰らうものども』と違い、ネクロノミコンが物語内の実際の物体として登場する。ラヴクラフトが自分の物語をスミスの創作世界と結びつけたように、スミスもまた同じような相互参照を行った。

ラヴクラフトは『ネクロノミコンの歴史』という文章で、ネクロノミコンの原題が「アル・アジフ」であるなどの基本設定を定めた。ロングの『喰らうものども』に出てくるネクロノミコンはジョン・ディー博士が英訳したものという設定だが、本作に登場するのはアラビア語版とされている。

  • オグデン…秘書
  • ジョン・カーンビイ
  • ヘルマン・カーンビイ
  • 暗きものども

【舞台】

  • オークランド

オークランド郊外、ジョン・カーンビイの求人広告は一見して常識を超えた厳しい条件を突きつけていた。オグデンがたまたまアラビア語を学んでいたという偶然だけが、この不吉な運命への扉を開いてしまった。

霧に覆われたカーンビイの屋敷に足を踏み入れた瞬間、背筋に冷たいものが走った。彼は想像通りの男性だった—研究熱心さが肉体を蝕み、骨ばった顔には不健康な青白さが滲み出ていた。その窪んだ目は、何かを切望するように異様な輝きを放っていた。

「君を採用しよう」彼は一目見るなり、ほとんど審査らしい審査もなく言い放った。その声には抑えきれない切迫感が混じっていた。

「一緒に住んでもらうことになる」とカーンビイは言った。

「快適な暮らしと食事は保証しよう。以前は弟が助手をしていたのだが…今は長旅に出ている」—その最後の言葉には、何か語られない真実が潜んでいた。

恐怖と期待が入り混じる中、オグデンは一度下宿に戻り、必要な荷物をまとめてからカーンビイの家に引っ越した。彼の仕事部屋のドアが開かれた瞬間、その異様な雰囲気に圧巻された。類人猿の骸骨や、人間の骸骨、ワニの剥製が牙をむき出していた。書棚からは悪魔学や黒魔術の書物が並び、骸骨の間に鎮座する鍵付きの戸棚だけが、この部屋の最大の秘密を抱えていた。

「ネクロノミコンのアラビア語版を翻訳してもらいたい」

ネクロノミコン—その禁断の書物は知っていた。アラビア語版など、入手不可能と言われていたはずだった。

取り出されたネクロノミコンは、触れた瞬間に魂を凍らせるような冷気を放った。古びた羊皮紙をめくると、そこには人間の理性では到底理解できない恐怖が記されていた—死者に命を吹き込む呪文の数々。

翻訳に没頭するオグデンの耳に、突如として廊下から何かが這う湿った音が侵入してきた。「鼠だ」とカーンビイは言ったが、彼の目は恐怖に見開かれ、額には冷や汗が光っていた。彼は嘘をついていた。

次の章を翻訳すると、そこには悪魔の名前が踊り、禁断の儀式の方法が血で書かれたかのように生々しく記されていた。文字は私の目の前で蠢くように見え、ページからは腐敗した匂いが立ち上った。

夜も更け、その日の作業をやめてから、自室への暗い廊下を歩いていると、背後から不自然な音が聞こえた。振り向くと、何かが階段から降りていく影を捉えた。恐怖で固まった私は、明かりをつける勇気すら失っていた。

翌朝、再び仕事部屋に足を踏み入れると、空気が一変していた。温かみを装いながらも、部屋には青い煙が漂い、床には慌てて消した魔法陣の跡が生々しく残っていた。

翻訳を再開した私の耳に、再び廊下からの不吉な音が忍び寄った。這うような、引きずるような、生きているはずのない何かの動く音。カーンビイの「鼠だ」という言葉は、もはや嘘にすらならなかった。

その時だ—突然、重々しいノックが部屋のドアを震わせた。同時に、鍵付きの戸棚からも何かが出ようとする音が響いた。カーンビイの顔から血の気が引き、白い紙のように青ざめた。

「開けてはならない」という彼の悲痛な叫びも虚しく、オグデンは恐怖と好奇心に駆られ、震える手でドアノブに触れた。

ドアが開いた瞬間、オグデンの視界は恐怖で歪んだ。そこには、手首から切断された一つの手が、転がっていた—まるで生きているかのように。

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