本作は1935年、WTの9月号に収録された。
ロバート・ブロックは40年代から怪奇小説家として成功を収めたが、30年代の作品はしばしばラヴクラフトの影響を受けていた。しかし、「サイコ」などで知られるブロック独自のスタイルが際立ち、新鮮な印象を与えた。彼は十歳の頃に「ウィアード・テールズ」を手にし、十六歳でデビュー作「修道院の饗宴」を発表。師であるラヴクラフトへの感謝の意味を込めて「妖蛆の秘密」を執筆したが、作品内で師を惨殺するというオチをつけた。しかしこれにはラヴクラフトも「闇の跳梁者」でブロックを殺し返している。
- 私
- 友人
- 星の吸血鬼
【舞台】
- プロヴィデンス
16世紀のブリュッセル。錬金術師ルドウィク・プリンの周りには、目に見えない使い魔たちが集っていたという。「星の送りし下僕」と呼ばれるそれらの存在は、やがてプリンを破滅へと導く。異端審問所に捕らえられた彼は、拷問にも屈せず沈黙を貫き、獄中で秘密の書物を著した。処刑される直前、何者かがその禁断の知識を持ち出し、『妖蛆の秘密』として世に出したのだった。
時は流れ、現代。リアルなホラーを追求する怪奇作家の主人公は、禁断の知識に魅了されていく。年長の友人「プロヴィデンスの夢想家」の警告も聞かず、主人公は探求の末に『妖蛆の秘密』を古書店で見つける。
鉄の表紙に覆われた黒い書物。わずか1ドルで手に入れた初版本は、しかしラテン語で記されていた。解読を求めて友人のもとを訪れた主人公。最初は躊躇していた友人も、翻訳を始めるとその内容に引き込まれていく。
「星から召喚した不可視の下僕」。プリンの伝説が、次第に明らかになっていく。
そして、友人の口から呪文が紡ぎ出される瞬間―。
禁断の知識が解き放つ恐怖。好奇心が招く予期せぬ結末。目に見えぬ恐怖の正体とは。