墳丘

墳丘

the mound

ハワード・フィリップ・ラヴクラフト クト12 新訳1
概要
登場人物
あらすじ

本作は29,560語の中編小説で、1929年12月から1930年1月にかけて、ズィーリア・ブラウン・リード・ビショップのために代作されたもの。初出は1940年WTの11月号に短縮版が収録された。BWSに単行本の初収録、校訂版はMMに収録されている。

ビショップ自身が提案した物語の概要は単純なもので、近くのインディアンの墳丘で首なしの幽霊が出没するというものだった。ラブクラフトはこのアイデアを物足りないと感じ、自身の神話体系の複雑な要素を追加し、中編小説として地底に潜む恐怖を描いた。ビショップは作家仲間のフランク・ベルナップ・ロングも作品に助言をしてくれたと言ったが、ロングはこの作風はラヴクラフトならではのものだと、この話を否定している。

この物語はHPLが異文明を導入し、それを人類の文明(特に西洋文明)の進展段階を比喩した初めての作品である。最初はラヴクラフト的なユートピアと見えるクン=ヤンは、人口の少なさと科学技術の進歩により繁栄しているように思われる。しかし、物語が進むにつれて、その文明は退廃の兆しを見せ、科学の衰退、歴史の無視、宗教の堕落が浮かび上がる。語り手はクン=ヤンが機械化と標準化により堕落し、人々が反発している現状を指摘し、ラブクラフトの西洋文明への懸念が反映されている。

  • 私…民俗学者
  • クライド・コンプソン…イグの呪いで登場
  • コンプソン母…イグの呪いで登場
  • ヒートン…最初の犠牲者
  • ジョージ・B・ロウトン大尉…1889年の開拓にいた人
  • パンフィロ・デ・サマコナ・イ・ヌーニェス…コロナドの部下 1545年に塚の中を探索した人
  • フランシスコ・ヴァスケス・コロナド
  • チャージング・バッファロー…サマコナを、塚にある秘密の入り口まで案内した人
  • グレイ・イーグル酋長…ウィチタ族のインディアン 100歳超え
  • グル・フタア・ユン…クン・ヤンの統領
  • トゥル・ユブ…サマコナの脱出に協力してくれた女性
  • グン・アグン…審判者
  • ギャア・ヨトン…人間と動物のハイブリッド
  • イグ
  • ティラワ

 

【舞台】

  • 1928年のビンガー
  • 1545年 その3年後 クナ=ヤン
  • 1540−1542年 探検

深い森に包まれたオクラホマの地に、不気味な噂が渦巻く古い墳丘がある。昼は老人の、夜は首のない女の幽霊が現れるという。その謎に迫ろうとした者たちの運命は悲惨だ。行方不明になるか、正気を失って戻ってくるかのどちらか。そんな恐ろしい噂に、地元の人々もインディアンたちも、この地を避けて暮らしてきた。

1928年の夏、一人の考古学者がこの墳丘の調査に乗り出す。彼の目的は単なる学術研究か、それとも別の何かがあったのか。現地に到着した彼は、噂に違わぬ幽霊の姿を目の当たりにする。そして、調査を進めるうちに、400年前のスペイン人探検家、パンフィロ・デ・サマコナの手記を発見する。

その古ぼけた手記は、想像を絶する驚愕の内容だった。サマコナが地元インディアンの案内で洞窟を探検したところ、そこで出会ったのは未知の生命体と、人の姿をしているものの明らかに地球外の存在だった。彼らに導かれ、地下世界の都市ツァスを訪れたサマコナ。そこで彼が目にしたものとは…。

外界の情報源として歓迎されたサマコナだが、やがて彼は恐ろしい事実に気づく。もはや地上に戻ることは許されないのだと。ここから始まる彼の壮絶な脱出劇。その結末が、400年の時を超えて現代に何をもたらすのか―。

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