本作は1937年、WTの5月号に掲載された。
ヘイゼル・ヒールド(1896年 – 1961年)は、H・P・ラヴクラフト(1890年 – 1937年)の門下生のひとりだった。ヒールドはマサチューセッツ州サマーヴィルの出身で、1932年に未亡人となってラヴクラフトの指導を受けるようになったが、彼女の詳しい経歴は不明である。
ヒールドの代表作『博物館の恐怖』や『永劫より』は、『ウィアード・テールズ』誌上で高い評価を得た。彼女は「ミセス・ラヴクラフト」や「ラヴクラフトをも凌ぐ」と称賛されることもあったが、実際にはこれらの作品の大部分は、ヒールドの粗筋をもとにラヴクラフトが書き上げたものだった。
ラヴクラフトは『文学と超自然的恐怖 Supernatural Horror in Literature』の中で、ポーの「群衆の人」を宇宙的恐怖を表現した作品と評している。この宇宙的恐怖とは、人間の普遍的な恐怖心を指していると考えられる。ヒールドの『墓地に潜む恐怖』にも、生き埋めへの恐怖という人類の根源的な恐れが反映されているようだ。
- ソフィー・スプレイグ…閉ざされた家の主
- トム・スプレイグ…ソフィーの兄
- ジョニー・ドウ…白痴
- ヘンリー・ソーンダイク…ラットランド出身の葬儀屋
【舞台】
- スティルウォーター
陰鬱な街として知られるスティルウォーター。丘の上の農家や、墓地に話しかける白痴の存在が、この街の不気味な雰囲気を醸し出していた。村人たちの間では、スプレイグ家の悲劇が常に話題になっていたのだ。
ソフィー・スプレイグはかつて、兄のトムと平穏な日々を送っていた。しかし1886年、トムの突然の死と、もう一つの不可解な事件が彼女を一変させた。それ以来、白痴のジョニーが彼女の家の窓辺で怒鳴り、墓地ではトムとヘンリーの墓に話しかけるのが日課になっていた。
一方、ヘンリーはソフィーに好意を寄せていたが、出身地不明の怪しげな男で、常に奇妙な実験を行っていた。トムはそんな彼を快く思っていなかった。
そして事件が起きたのは、1886年6月のことだった。
9日、トムが酒盛りに出かけた。そして一週間後の15日、彼は帰宅した。しかしその日、村人たちはスプレイグ家から悲鳴を聞いた。ソフィーが慌てて医師を呼びに行くが、トムはそのまま息を引き取ったのだ。
ヘンリーもその場にいて、医師に早急な埋葬を提案した。この時ジョニーは、トムの遺体がまだ暖かく、瞼が動いていたと証言したが、誰も白痴の言葉を信じなかった…。
しかしこの直後に、思いもよらぬ事態が起こる。
トムの死の真相、ヘンリーの怪しい実験、ソフィーを襲った悲劇。そしてジョニーが目撃した真実。スプレイグ家の一連の出来事は、闇に葬られたまま。果たして、この謎の真相は。