本作は1930年6月26日に執筆され、初出は1932年ストレンジ・テイルズ 一月号に収録された。
スミスは物語の軽い皮肉や風刺に満足している
エイボンという名前の起源について、ここではユダヤ人キリスト教徒の分派であるエビオン派の架空の創始者である、エビオンから名前を取る可能性があると言われている。エビオンはヘブライ語で「貧者」を意味し、「信心深い者」と同義になった。物語『The Devotee of Evil』では、彼がマニ教という別の初期キリスト教「異端派」についても詳しく触れていて、これらの知識は辞書を読破するという独学だったようである。
- エイボン…ツァトゥグアの信仰者
- モルギ…イホウンデーの神官 エイボンと敵対
- ゾタクア…ツァトゥグアのこと
- フジウルクォイグムンズハー
- ブフレムフロイム族…首がない種族
- ドジュヒビ族
【舞台】
- サイクラノーシュ
王国の権力者、神官モルギと、魔道士エイボン。二人の確執は誰もが知るところだった。モルギの容赦ない追及から逃れるため、エイボンは邪神ゾタクアの助言を受け、異界への扉をくぐる。行き着いた先は、惑星サイクラノーシュ。しかし、執念深いモルギもまた、その扉を見つけ出し、追跡の手を緩めない。
見知らぬ世界で再会した二人。かつての仇敵は、皮肉にも運命を共にすることとなる。地球への帰還も望めぬ中、彼らは不本意ながら旅を共にする羽目に陥る。
そんな折、神フジウルクォイグムンズハーから、エイボンに謎めいた言葉が託される。「イクイ・オドシュ・オドフクロンク」。その意味するところは不明だが、エイボンはこれを神託と受け止める。
彼らの旅路は、土星人の一種族ブフレムフロイム族との邂逅をもたらす。神の言葉を告げた二人は、思いがけず賓客として歓待される。しかし、エイボンは彼らの神への無関心さに戸惑いを覚える。女王の婿として選ばれた二人。名誉ある立場を与えられるも、あまりの文化の違いに戸惑い、ついには逃亡を決意する。
次なる目的地は、イドヒーム族の地。エイボンは再び神託の言葉を口にするが、果たしてそこで彼らを待ち受けているものは…。
エイボンとモルギは、この奇妙な旅路の果てに何を見出すのか。そして、神託の真の意味とは―。