本作は1948年、WTの9月号に掲載された。
舞台は4月のアイズベリイだが、『ダンウィッチの怪』の前日譚にあたる。
- ダン・ハロップ
- エイバル・ハロップ…従兄弟
- レム・ジャイルズ…エイバルの隣人、妻アビイ、息子アーサー、アルバート、娘ヴァージニア
- ルートとジェトロ・コーリイ兄弟…使用人カーティス・ベクビー
- セス・ウェイトリイ…妻エンマ、子供ウィリー、マミー、エラ
- ラバン・ハフ…子供スージー、ピーター、ラヴィニア
- クレム・オズボーン…妻マリー、使用人ジョン、アンドルー
- ルーフェス・ホイーラー…妻エンジャリーン、子供ペリイ、ナサニエル
- へスター、ジョセフィーン、アメリア…使用人ジェシー・トランブル、エイモス・ウェイトリイ
【舞台】
- 1928年 アーカム アイルズベリイ
奇妙な失踪を遂げた従兄弟エイバルの家に足を踏み入れた瞬間から、ダン・ハロップの平穏な日常は終わりを告げた。
「エイバルは変わり者だ」—家族の誰もがそう言い、誰も彼に近づこうとしなかった。だからこそダンは、彼の謎めいた失踪を調査するために、この静かな丘の上の家に移り住むことにした。
家の中は驚くほど整然としていた。古い家具は丁寧に手入れされ、警察も不審な形跡は見つけられなかったという。ただ、4月7日、煙突から煙が上がらないことを不審に思った隣人が訪れた時には、デスクに開かれたままの本があるだけで、エイバルの姿はなかった。
ダンが到着してわずか2時間後、電話が鳴った。共同電話だったため、声を出さず耳を傾けると、隣人同士の会話が聞こえてきた。「あの家に誰かが入っていくのを見た」と言い、「エイバルではない」と確認すると安堵の声を漏らしていた。そして不気味な言葉が続いた—「エイバルは悪魔の本を読んで、奴らを呼び出したから連れていかれたんだ」
初日の夜、眠りにつこうとしたダンの耳に、夜鷹の鳴き声が響いた。ウィップァーウィルと呼ばれるその鳥は、一晩中鳴き続けた。
翌朝、また電話が鳴った。名も名乗らぬ声が「家から出ていけ」と警告する。次の電話では村の女性たちが話していた。「昨夜の夜鷹は尋常じゃなかった」「ベンジー・ホイーラの時と同じよ。夜鷹がまた誰かの命を奪いに来たわ」
その夜、ダンは窓から夜鷹たちが家の周りに集まるのを目撃した。再び、あの不気味な鳴き声が夜を切り裂いた。
翌朝、エイバルの書棚を調べると、様々な言語で書かれた魔導書が並んでいた。村人から情報を得ようとしたが、誰も口を開こうとしない。ようやく出会えたエイモス・ウェイトリイは、ダンが調査を終えたら立ち去ると告げると、少しだけ心を開いた。
「エイバルは外から来たものに連れていかれた」彼はそう警告し、「魔導書は全て燃やせ」と言い残した。
家に戻り、エイバルのデスクを調べると、手書きのノートを発見した。そこには魔導書からの引用とメモが英語で記されていた。ヨグ=ソトースという名前と、ルルイエ異本からの引用—それは太鼓の音で何かを呼び寄せる呪文のようだった。
その夜も夜鷹たちが集まってきた。疲れていたせいか、それとも別の理由か—夜鷹たちが異常に大きく見えた。
村の隠された秘密、エイバルが見つけた禁断の知識、そしてダンを取り囲む夜鷹たち。この丘で何が起きているのか、そしてエイバルはどこへ消えたのか—。