
【2025年版】「レッド・フックの恐怖」入門|あらすじ・登場人物・おすすめ版まとめ
The Horror at Red Hook
概要
本作は8,400語の短編で、1925年8月1日から2日にかけて執筆された。初出は 1927年、『Weird Tales』の1月号で、単行本初収録は『Beyond the Wall of Sleep』。改訂版が 『Dagon and Other Macabre Tales』に、詳註版が 『More Annotated H.P.Lovecraft』、『From the Pest Zone:The New York Stories』、『The Dreams in the Witch House and Other Weird Stories』に収められている。
ラヴクラフトはフランク・ベルナップ・ロング宛ての手紙で、この作品を「騒々しい若者たちの裏に潜む恐ろしいカルト的慣習」を扱ったもので、その神秘的な本質に深く印象づけられたと述べている。彼は作品を「やや長く、まとまりに欠ける」と自己評価しつつも、「洗練されていない平凡な題材」から恐ろしい雰囲気を引き出せたと考えていた。
1925年3月8日にレッド・フックを訪れたことが、ラヴクラフトの日記に記録されている。ソニア・H・グリーンは回顧録で、ある夜のレストランでの粗野な客との遭遇が物語のインスピレーションになったと示唆している。
物語にはブルックリンの地域色が強く反映されており、例えばダンスホール代わりの教会は実在の建物をモデルにしているとされる。サイダムの住居の位置についても具体的な推測がなされている。
作中に登場する邪悪な居留民たちの設定は、E・ホフマン・プライスの作品『The Stranger from Kurdistan』からの影響が示唆されている。
魔術的宗教儀式の詳細の多くは、Encyclopedia Britannica 第9版の魔術および悪魔学の項目から直接引用されたものだという。特に、ラテン語の引用や召喚呪文などが該当する。
マローンというキャラクターの導入は、探偵小説的要素を加えようとしたラヴクラフトの意図を反映している可能性がある。彼は当初、この作品を Detective Tales 誌に投稿しようと考えていたが、実際にそうしたかどうかは不明である。後に、Weird Tales 誌を意識して書いたと主張している。
登場人物
- トーマス・F・マロウン:ニューヨーク警察の刑事
- ロバート・サイダム:博学の隠者
- コーニリア・ゲリトセン:サイダムの妻
- 老デルリオ
舞台
- レッド・フック地区
あらすじ
ブルックリンのレッド・フックという異人種のスラム街近くに位置するバトラー・ストリート署。そこに勤務するアイルランド人刑事、トーマス・マローンの目に映る、驚くべき事件の数々。
物語の中心にいるのは、古いオランダ系の名家の裕福な男性、ロバート・サイダム。彼の奇妙な行動が、マローンの鋭い洞察力を刺激する。区役所付近で不審な外国人と接触を繰り返すサイダム。その謎めいた行動の真意は。
親族たちの圧力をかわし、表面上の上品さを装うサイダム。彼が選んだ策は、高貴な女性コーニリア・ゲリトセンとの結婚。華やかな結婚式は、キュナード埠頭を出発する蒸気船の上で執り行われる。しかし、祝福に包まれるはずの式は、想像を絶する悲劇へと変貌を遂げる。
新郎新婦の無残な遺体。そして、彼らの体内から一滴の血も見つからないという衝撃の事実。さらに謎は深まる。サイダムの署名入り書類に従い、彼の遺体が得体の知れないアラブ人とその一党に引き渡されたというのだ。
レッド・フックの闇に潜む、人知を超えた存在の正体とは? サイダムが関わっていた秘密の組織の目的は? そして、マローン刑事が辿り着く恐るべき真実とは――?
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