本作は1957年、『ファンタスティック・ユニヴァース』の9月号に掲載された。
- 語り手
- ジャレット・フィリップス…父
- シルヴァン・フィリップス…叔父
- アダ・マーシュ
【舞台】
- インスマス
祖父の厳格な警告により、生涯を海から遠ざけて過ごしてきた主人公。両親を失い、また叔父シルヴァンの死後、二軒の家を相続する。一軒は不穏な雰囲気が漂うインスマスの町に、もう一軒は祖父の警告に反するかのように、海辺に佇んでいた。
海辺の家に足を踏み入れた主人公を待っていたのは、奇妙な装飾の数々だった。絨毯や壁掛けには円盤状の模様が刻まれ、その中央には魚類とも爬虫類とも判別しがたい人型の生物が描かれている。叔父の残した無数のコレクションが、静かに主人公の到着を待ち続けていたかのようだった。
町での買い物中、主人公の家系名を耳にした店主は、不気味な親近感を示す。「フィリップス家はマーシュ家と同じくらい由緒正しい」と告げ、アダ・マーシュという女性を紹介してくれた。
アダとの出会いは、まるで予定されていたかのように自然だった。翌日、彼女は初めて訪れたはずの家の中を熟知しているかのように歩き回る。「地球が誕生した頃から、二つの家系は結びついていた」—そんな意味深な言葉を残し、何かを探し求める素振りを見せた。
アダの去った後、主人公は彼女の探し物を先に見つける。叔父の調査記録だった。そこには1797年、マーシュ船長が異国から連れ帰った妻のこと、そしてそれ以来両家に降りかかった「呪い」についての断片的な記述があった。最終ページには「ルルイエの場所を見つけ、クトゥルフに会う」という謎めいた言葉と、現実には存在しない海底地形を示す地図が残されていた。
書斎から発見した古い魔導書を読み漁るうち、主人公はクトゥルフ神話が単なる創作ではなく、あらゆる神話の源泉であることを知る。さらに新聞記事からは、エンマ号の怪事件、謎の「悪魔の岩礁」への攻撃、インスマス住民の大量逮捕—すべてが何かの断片として主人公の前に現れる。
主人公が見つけた情報の一部をアダに見せると、彼女は絨毯の模様が「ルルイエの大いなる印」であることを静かに告げた。そして次に、アダは意味深な表情で「指輪を探すように」と告げた。主人公の耳には、巨大な何かが海の底から呼吸する音が、かすかに聞こえ始めていた。