【概要】
本作は1939年、WTの4月号に収録された。ヘンリー・カットナーはサンフランシスコで育ち、エージェントとして働いた経験を生かし、パルプ小説の作家として才能を発揮。彼は様々な作家のスタイルを取り入れ、「ウィアード・テールズ」に初めて採用された「墓地の鼠」はラヴクラフトの雰囲気に似ており、一時はラヴクラフトの代作ではないかと噂された。
しかし、実際にはラヴクラフトとの文通が始まった後であり、交流期間は短かった。本作では、脳髄を狙う怪物が描かれていて、これはF・B・ロングの「怪魔の森」からの影響を受けた可能性がある。
【収録】
【登場人物】
- ロバート・ルドウィク
- ポール・エドマンド…小説家
- ケネス・スコット…オカルト研究家
【舞台】
- カリフォルニア
【あらすじ】
新聞が報じた「スコット事件」は、誰もが頭を抱える不可解な死の連鎖だった。頭部が切断された状態で発見されたスコットの遺体。姿を消したロバート。そして場所を大きく離れて発見された、頸動脈を深く切られたエドモンドの死体。これら不気味な死の背後には、一冊の自費出版された薄っぺらな本の存在が浮かび上がっていた。
『魂の投射』と名付けられたその本は、まるで罠を仕掛けるかのように、最後の1ページにだけ異質な記述を宿していた。陳腐な内容で埋め尽くされた7ページの後に、突如として現れる星気体への投射法。
エドモンドの日記が、事件の闇をさらに深くしていく。ドイツからカリフォルニアへの途上、偶然、本を手に取ったロバート。彼がハリウッドのエドモンドを訪れた時、二人の目には既に狂気の色が宿っていた。
オカルトの知識に魅入られていた二人は、ある化学者からカンナビス・インディカを密かに入手。8月15日、スコットへの最後の手紙を残し、禁断の実験への扉を開いた。そしてこの実験が恐怖の連鎖となっていくのだった。