『シャンブロウ』は、C・L・ムーアが手掛けた短編小説で、原題は『Shambleau』である。この作品は、ムーアがプロ作家としてデビューした商業作品であり、同時に彼女の代表作としても知られている。
初出は1933年11月号の『ウィアード・テイルズ』であった。その後、本作品は幾度も再版され、多くの読者に親しまれてきた。
物語の主人公は、ムーアが創造したヒーローの中で最も有名なノースウェスト・スミスである。彼を通じて、読者は独特の世界観に引き込まれていく。
作品全体としては、ギリシャ神話に登場するメドゥーサの物語を下敷きにしている。しかし、ムーアはこの古典的な題材を独自の視点で再解釈し、新たな魅力を付与している。
また、本作は性的欲望とそれへの依存症という現代的なテーマも扱っている。
- ノースウェスト・スミス
- ヤロール
- シャンブロウ
【舞台】
- 火星
荒々しい雰囲気を漂わせる密輸業者ノースウェスト・スミスは、火星の街で思わぬ光景に遭遇する。群衆に追い詰められた若い女性を目にした瞬間、彼の心に不思議な衝動が芽生えた。彼女を守らねばならない—その思いに駆られ、スミスは行動を起こす。
周囲の人々は彼女を「シャンブロウ」と呼んでいたが、スミスにはその意味が全く分からなかった。「この女は俺が引き取る」とスミスが言うと、予想外にも群衆は静かに立ち去った。しかし、彼らの目には憎しみではなく、軽蔑の色が浮かんでいた。この反応にスミスは戸惑いを覚える。
女性を近くで見たスミスは、彼女が人並外れて魅力的でありながら、明らかに人間ではないことに気づく。説明のつかない責任感から、スミスは彼女を自分の住まいに匿うことにした。その一方で、彼はいつもの非合法な商売も続けていた。
時が経つにつれ、スミスは恐るべき事実に直面する。シャンブロウは髪の毛に似た奇妙な生き物を使って、他者の生命力を糧にしていたのだ。さらに、彼女は犠牲者を強烈な快感で支配し、中毒状態に陥らせるという特殊な能力を持っていた。
シャンブロウの正体を知ったスミス。この危機的状況の中で彼は救われるか—。