本作は、『Dark Things』に収録された。
リンウッド・カーター(1930-1988)は「小説を書くほうが自分には向いている。自分だけの想像の世界で物語を書くのは楽だ。ノンフィクションのほうが書くのがずっと難しい」と『Lovecraft: A Look Behind the Cthulhu Mythos』(1972年、バランタイン・ブックス刊)で述べていた。しかし、日本でも知られた「ゾンガー」シリーズなど、彼の創作はどれもE・R・バロウズやハワードの文体や設定を模倣したような作品だった。
フロリダ出身のカーターは1950年代のSFファンコミュニティで最も精力的な活動家の一人で、怪奇ファンタジー書籍を熱心に収集し、この分野の著名な専門家となった。1960年代には、ギャンリーやパルプ雑誌研究家ロバート・ワインバーグらとともに、ラヴクラフトやハワードの再評価ブームを牽引した。1969年にバランタイン・ブックスの編集アドバイザーに就任し、ペーパーバック版「アダルト・ファンタジー・シリーズ」を企画・出版した。後に『Lovecraft: A Look Behind the Cthulhu Mythos』は、クトゥルフ神話に関する初の本格的研究書であり、貴重なガイドブックとなった。
『シャッガイ』はC・A・スミスの文体とユーモアを真似て、『エイボンの書』からの一節を翻訳したという設定で書いたら面白いだろうという発想から生まれた作品だと、カーターは前述の著書で明かしている。
- 語り手
- ファロール
【舞台】
- シャッガイ
星のあいだの禁断の知識を求め、魔道士エイボンはファロールを三度召喚した。神秘の存在を目の前に現したエイボンは、古代のナコト写本に記された秘密の章句について問うても、ファロールは直接の答えを与えず、ただ「ピラミッドを目指せ」という謎めいた言葉だけを残した。
異界の知識を渇望するエイボンは、ファロールの言葉に従い、ピラミッドに宿る存在を探る旅に出ることを決意する。肉体を安全な場所に残し、幽体となって最初に向かったのは、暗黒の惑星ユゴスだった。そこに住まう魔術師たちに接触するも、彼らは警戒心を隠さず、ピラミッドに住まうものについての知識を分かち合おうとはしなかった。
諦めないエイボンは次なる目的地、星間の闇に浮かぶクシミールへと幽体を飛ばした。しかしそこでも、求める答えは得られず、冷たい沈黙と拒絶だけが彼を迎えた。時空の境界を越える旅の中で、エイボンの決意は一層強まるばかりだった。
最後の望みをかけ、エイボンはムトゥーラと呼ばれる領域へと降り立った。そこで出会ったズーリアイという不思議な種族は、エイボンの問いに対して初めて応答を示し、「シャッガイへ行くべし」という導きの言葉を告げた。
幾多の世界を経て、遂にエイボンはシャッガイに辿り着く。そこで彼の目に映ったのは、想像を絶する規模の巨大なピラミッド型建造物だった。この異形の建築がファロールの示した目的地であり、そこには彼が求め続けた秘密が眠っているのだろうか—あるいは、人知を超えた恐怖が待ち受けているのか。