本作は1929年に執筆されて、初出は1931年WT11月号に収録された。
ヒューペルボリアが舞台の最初の作品で、既にコモリオムが廃都となっているが、その理由や背景は後続作品で執筆されている。
邪神ツァトゥグァの初登場作品。スミスは未発表の原稿を友人のH.P.ラヴクラフトに送り、ラヴクラフトはツァトゥグァを気に入り、自身の作品『墳丘の怪』『闇に囁くもの』に組み込んだ。結果として、ラヴクラフトの作品が先に発表され、ツァトゥグァはラヴクラフトの手でデビューした。
主人公サタムプラ・ゼイロスは25年後の「三十九の飾帯盗み」に再登場。未執筆作品「石棺の影」または「古代の影」では、彼とオムパリスが活躍する構想が存在した。
- サラムプラ・ゼイロス…盗賊
- ティロウヴ・オムパリオス…友人
- ツァトゥグア
- 無形の落とし子
【舞台】
- ハイパーボリアの首都 コモリウム
ヒューペルボリアの首都ウズルダロウム。かつてはこの地で名を轟かせた大泥棒サタムプラ・ゼイロスと相棒ティロウヴ・オムパリス。しかし、厳重になる一方の警備に阻まれ、2人の暮らしは日に日に窮屈になっていく。
追い詰められた二人は、ある大胆な計画を思いつく。誰も近づかない廃都コモリオムに眠る古代の財宝。その誘惑に、彼らは抗えなかった。
密林に分け入り、ようやくたどり着いたのは邪神ツァトゥグァの神殿。しかし、そこで彼らを待っていたのは、予想外の光景だった。青銅のツァトゥグア像には、期待していた宝石の欠片すら見当たらない。
落胆する二人。だが、それは悪夢の始まりでもだった。
神殿の奥で見つけた青銅の大鉢。そこから漂う悪臭に、二人は顔をしかめる。しかし好奇心に負け、中をのぞき込んだ瞬間、恐怖の化身が姿を現す。粘液から生まれた怪物が、彼らに襲いかかったのだ。
必死の逃走劇が始まる。しかし、どれだけ逃げても、彼らの足は神殿へと戻ってくる。まるで迷宮に囚われたかのように。
追い詰められた二人がとった行動は、そしてその後の運命は―。