本作は、”Dark Things”に所収された。
ダーレスがラヴクラフトの未完成作品を補完した最後の作品だ。元になった原稿の詳細は不明だが、よく知られたインズマスの町のその後を描く物語として作り上げられている。
- わたし
- ジェフリー・コレイ
【舞台】
- 1927年
インスマスの海は秘密を抱えている。1927年、パリからこの寂れた漁村へと移り住んだジェフリー・コレイの物語は、海の底に潜む真実への扉を開けることになった。
マーシュ家の血を引きながらも、その事実を隠し続けていたコレイ。彼との初めての出会いで私が目にしたのは、優美な顔立ちの40代の男性だった。しかし、彼の耳から垂れる奇妙な皮膚の形状は、何か異質なものを感じさせた。饒舌に語るコレイの言葉の裏には、語られぬ秘密が潜んでいるようだった。
2月、政府の突然の介入がインスマスを震撼させる。住民の一斉検挙、そして伝説の「悪魔の岩礁」への機雷投下。3月に入り、コレイから届いた手紙には驚くべき事実が記されていた—岩礁から砕け散った石が陸へと打ち上げられ、彼はその石で彫刻を作り上げたというのだ。
私がコレイを訪ねたとき、その彫像の姿に戦慄した。ほっそりとした体躯、水かきのついた足—そして最も不気味なことに、彫像の首元には繊細な鰓が刻まれていた。コレイはそれを自分で彫ったのではないと主張した。「夢の中で見たものを、無意識のうちに形にしていたんだ」と彼は震える声で語った。
その瞳の奥に潜む恐怖と秘密。翌日、コレイは姿を消した。残された財産と共に私が受け継いだのは、彼の日記だった。そこに記された言葉は、マーシュ家の血に纏わる呪いと、海の底から呼びかける古の存在への恐るべき真実を明らかにしていく—。