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アザトース

アザトース

Azathoth

新訳4 ハワード・フィリップ・ラヴクラフト
概要
登場人物
あらすじ

本作は1922年6月に執筆された断章で、現存しているのは480語のみである。初出はLeaves(1938年)で、後にMarginaliaに収録され、校訂版がDに収録されている。

現存する原稿には、長い年月が経ち人々から驚きの念が失われた世界で、「人生を抜け出して、世界の夢が逃げ出した空間へと探究の旅に出た」ある男の物語が描かれている。この男は「不毛の黄昏に支配される高い塀に囲まれた街」に住み、そのような環境に置かれた反動として「人間が失ってしまった夢」を見始める。

ラヴクラフトはこの作品を「『ヴァテック』のような奇譚」と表現している。『ヴァテック』はウィリアム・ベックフォードによる1786年のアラビア奇譚で、ラヴクラフトは1921年7月に初めてこれを読んだ。「アザトース」は『ヴァテック』の持つ夢物語的な雰囲気と、その流れるような語り口、章立ての欠如を模倣しようとする試みだったと考えられる。

ラヴクラフトは1921年10月には既に「18世紀風の東方奇譚」を書く構想を持っていた。執筆開始後、彼は「アラビアンナイト」風の物語を目指し、現代の文学規範にとらわれず、初期のロード・ダンセイニのような神話創造を目指すと述べている。また、この作品を通じて、幼少期に見た夢や、シンバッドやアジーブ、バダ=アブダラー、シディ=ノンマンといった物語から得た印象を表現しようとしたことがわかる。

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