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サルナスに到る運命

サルナスに到る運命

The Doom That Came Sarnath

全集7 新訳4 ハワード・フィリップ・ラヴクラフト
概要
登場人物
あらすじ

本作は2,740語の短編で、1919年12月3日に執筆された。初出はScot(1920年6月号)で、後にMarvel TalesとWTに再掲された。単行本初収録はBWSで、校訂版がD、詳註版がDWHに収録されている。

この作品には『ロード・ダンセイニ』からの表面的な影響が多く見られる。サルナスという地名はラヴクラフトが独自に考案したと主張しているが、実際にはインドの実在する地名である。緑色の偶像ボクラグはダンセイニの『山の神々』に登場する緑の翡翠の神々を想起させる。また、巨大な象牙の玉座の描写は、ダンセイニの『ヤン川をくだる長閑な日々』との類似性が見られる。文体もダンセイニ風を模倣している。

これらの特徴は、ラヴクラフトがダンセイニの影響を受けつつも、自身の文学的声明を模索し始めた時期の作品であることを示している。ラヴクラフトが無意識のうちに実在の地名を使用していた点も、彼の創作過程における興味深い側面を示している。

  • 語り手
  • 大司祭タラン=イシュ…最初の犠牲者 Doomの印を残した人
  • 上古の王 ゾッカル
  • 大司祭ニャイ=カー…サルナスが乗っ取られる瞬間を一番最初に目撃した人
  • イブの生物
  • ボクラグ

【舞台】

  • サルナス

1万部のムナールの地。その広大で穏やかな湖畔に佇む石造都市イブ。この都市には、緑色の肌を持ち、膨れ上がった目と分厚い唇、奇妙な耳を持つ無言の生物たちが住んでいた。彼らの姿は、湖とその上に立ち昇る霧を思わせるものだった。

時は流れ、ムナールに新たな民が到来する。黒髪の羊飼いたち、この地における最初の人類だった。彼らは新たな都市サルナスを築き上げる。

しかし、羊飼いたちはイブの奇妙な生物たちを嫌悪した。その感情は激しさを増し、ついには都市ごとイブを滅ぼすに至る。イブの痕跡として残されたのは、水の蜥蜴ボクラグを象った緑色の石像のみ。

イブの陥落後、サルナスは繁栄の一途を辿る。毎年、イブ陥落を祝う祭りが催され、1000年目の祝祭は盛大になるはずだった…。

この物語は、異なる文明の衝突と、勝者が描く歴史の残酷さを映し出す。1000年目の祭りで明かされる驚くべき事実とは—。

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