
【読了ガイド】『ラヴクラフト全集3』│収録作品・購入方法まで紹介
はじめに
本書は、H.P.ラヴクラフト作品のみを収録した全集の第3巻である。
収録作品は「ダゴン」、「家のなかの絵」、「無名都市」、「潜む棲む恐怖」、「アウトサイダー」、「戸口にあらわれたもの」、「闇をさまようもの」、「時間からの影」、「資料:履歴書」の9編となっている。
特に「ダゴン」が収録されている他、現代のクトゥルフ神話作品が多く収録されている。「アウトサイダー」はクトゥルフ神話ではないが、ラヴクラフトを知るには必要な作品だろう。
収録作品リスト
- 「ダゴン」
- モルヒネに依存する語り手は過去の恐怖体験を綴り自害を決意する。
大戦中、ドイツ軍に拿捕され脱出した彼は、漂流中に海底から隆起した巨大陸塊に流れ着く。
乾いた泥を歩き丘の頂に辿り着くと、谷底に巨大な独立石を発見する。その表面には海棲生物の浅浮彫と不可解な碑文が刻まれた、人類の知らない古代文明の遺物だった。
宇宙的恐怖を覗き込んだ男の壮絶な体験。
- モルヒネに依存する語り手は過去の恐怖体験を綴り自害を決意する。
- 「家のなかの絵」
- 家系調査中の語り手は豪雨に見舞われ、ミスカトニック渓谷の朽ちかけた農家に避難する。
現れた老人は年齢に反して血色が良く逞しい体つきで、失われたニューイングランド方言を話していた。
テーブルの古書は1589年版『コンゴ王国』という希少本で、人肉嗜食のアンジック族の肉屋を描いた第十二図が頻繁に開かれていた。
老人はセイラムの船乗りから入手したこの書物について語り、絵が秘める邪悪な力を熱心に説明し始める。語り手は未知の恐怖に巻き込まれていく。
- 家系調査中の語り手は豪雨に見舞われ、ミスカトニック渓谷の朽ちかけた農家に避難する。
- 「無名都市」
- 遥かアラビア砂漠の彼方にある無名の都市を、勇敢な考古学者が目指す。
伝説的詩人アブドゥル・アルハザードの夢に現れた場所と同じ廃墟に足を踏み入れると、異様に低い天井と非人間的な構造に動揺する。
身をかがめながら探索を続けるうち、地下の古代寺院で不気味な装飾の箱を発見する。
真実を求める探究心から蓋を開けた瞬間、考古学者の運命と人類の認識が大きく変わる。
砂漠に眠る古の都市が秘めた真実と、かつて住んでいた得体の知れない種族の正体とは。
- 遥かアラビア砂漠の彼方にある無名の都市を、勇敢な考古学者が目指す。
- 「潜む棲む恐怖」
- キャッツキル山脈のマーテンス館を巡る不可解な災厄を調査する勇敢な探索者。
親友2人と共に館に潜入するが予想外の事態に直面する。
その後、新たな協力者マンローと再調査に乗り出すが、嵐の夜にマンローの様子が激変。
語り手は全ての問題が館にあると確信し調査をする。そして、1670年にオランダ人ゲーリット・マーテンスが建てた館で、後継者たちが近親婚を繰り返してきた事実を発見。
ジャン・マーテンスが謎解明の鍵となり、最終的に語り手はマーテンス家の血筋に隠された忌まわしき秘密と人知を超えた存在の正体を知る。
- キャッツキル山脈のマーテンス館を巡る不可解な災厄を調査する勇敢な探索者。
- 「アウトサイダー」
- 「戸口にあらわれたもの」
- アプトンは幼なじみエドワード・ダービィを射殺し、法廷でその経緯を語る。
ダービィはインスマス出身のアセナス・ウェイトと結婚後、人格が急変し狂気に陥る。アセナスは家に引きこもり、ダービィは運転すら忘れる異常事態に。
アプトンはインスマスとウェイト家の血筋に、超自然的な謎があることに気づく。
友人を救うべく真実を追求するが、想像を絶する恐怖の渦中へと巻き込まれていく。
- アプトンは幼なじみエドワード・ダービィを射殺し、法廷でその経緯を語る。
- 「闇をさまようもの」
- 怪奇小説作家ロバート・ブレイクは創作の舞台を求めてプロヴィデンスに引っ越してくる。街に佇む古い教会の不気味な魅力に惹かれた彼は、住民たちの忠告を無視して足を踏み入れる。
光を拒絶するかのように閉ざされた教会内部で、ブレイクは禁断の書物、謎めいた多面体、そして「星の智慧派」協会の儀式の痕跡を発見する。
知ってはならないものを見てしまった彼の好奇心が引き金となり、町全体を覆う未知なる恐怖が目覚め始める。
怪奇小説作家自身が最も恐ろしい物語の主人公となる運命が待ち受けていた。
- 怪奇小説作家ロバート・ブレイクは創作の舞台を求めてプロヴィデンスに引っ越してくる。街に佇む古い教会の不気味な魅力に惹かれた彼は、住民たちの忠告を無視して足を踏み入れる。
- 「時間からの影」
- ミスカトニック大学経済学教授ナサニエル・ピースリーは、1908年のある日講義中に突然意識を失う。
目覚めた彼の様子は奇妙で、まるで自身の体を初めて動かすかのようにぎこちなく、話し方も以前と異なっていた。記憶は失われていたが知性は驚くべき高みに達していた。
奇妙な夢の中で、ピースリーは見知らぬ場所と肉体でひたすら記録を取り続ける。
やがて「大いなる種族」という存在が彼の精神と入れ替わっていたことを知る。
彼らが地球に古代コロニーを築いていた驚くべき事実も判明し、時空を超えた恐るべき真実が明らかになる。
- ミスカトニック大学経済学教授ナサニエル・ピースリーは、1908年のある日講義中に突然意識を失う。
- 「資料:履歴書」
文庫版仕様の詳細
出版社:東京創元社
発売日:1984/3/30
ページ数:342ページ
価格:紙版:902円/電子版:537円
購入ガイド
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- ebookjapan:「ラヴクラフト全集 (3) (創元推理文庫) – 著:H・P・ラヴクラフト 訳:大瀧啓裕 – 無料漫画・試し読み!電子書籍通販 ebookjapan」
読者レビューまとめ
良い点
- Kindle版なら好きな時に好きなだけ読むことができ、通勤時間が楽しくなる
- 「アウトサイダー」の最後の一文は翻訳の妙技が光り、読み終わりに言葉の並びと文字使いにはっとさせられる
- ラヴクラフト全集の中でもかなり良作がまとめられた一冊
- 「無名都市」で初登場する「ネクロノミコン」や「アーカム」「インスマス」など重要な要素が多数収録
- 特に「時間からの影」の〈大いなる種族〉は圧巻で、世界観の描写を想像するだけで意識を交換させられたような不思議な気持ちになる
- ラヴクラフトの宇宙感がひしひしと伝わってくる
- ラヴクラフト全集の中でもかなり読みやすい一冊
- 巻末のラヴクラフト解説も面白く、翻訳家の作者への深い理解が感じられる
気になった点
- 内容的に膨大なので、紙の本では途中でしんどくなってしまう可能性がある
- 「アウトサイダー」は話の内容自体は「ふーん」という感じで、物足りなく感じる場合もある
- 2巻までの異形ゴシックホラーから途中で方向転換するため、期待していた雰囲気と異なる
こんな人におすすめ!
- 翻訳の技巧や言葉の妙技を楽しみたい人
- クトゥルフ神話の重要な要素(ネクロノミコン、アーカム等)の初出作品を読みたい人
- 〈大いなる種族〉や宇宙的スケールの作品に興味がある人
- ラヴクラフト全集の中でも読みやすい巻から始めたい人
- 翻訳家の解説も含めて楽しみたい人
まとめ
本書は、クトゥルフ神話の重要な基盤となる要素が多数初登場する記念すべき巻である。
異形ゴシックホラーからSF的要素への方向転換を示しながらも、ラヴクラフトの宇宙観と想像力の豊かさを存分に味わえる、全集中でも特に価値の高い一冊となっている。