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【読了ガイド】『ゾティーク幻妖怪異譚』│収録作品・購入方法まで紹介

【読了ガイド】『ゾティーク幻妖怪異譚』│収録作品・購入方法まで紹介

本書は、クラーク・アシュトン・スミスによるゾティーク連作短編集である。

遥か未来、太陽が衰えて弱まり、物質文明や技術が衰退して精神文明や魔術に取って代わられた時代の地球最後の大陸ゾティークを舞台としている。

収録作品は「ゾティーク」、「降霊術師の帝国」、「拷問者の島」、「死体安置所の神」、「暗黒の魔像」、「エウウォラン王の航海」、「地下納骨所に巣を張るもの」、「墓の落とし子」、「ウルアの妖術」、「クセートゥラ」、「最後の象形文字」、「ナートの降霊術」、「プトゥームの黒人の大修道院長」、「イラロタの死」、「アドムファの庭園」、「蟹の支配者」、「モルテュッラ」の17編。

クトゥルフ神話作品ではないが、「死体安置所の神」や「墓の落とし子」は後にクトゥルフ神話に取り込まれた。

  • 「ゾティーク」
  • 「降霊術師の帝国」
  • 「拷問者の島」
  • 死体安置所の神
    • ズル=バ=サイルの街では死者を神への贄とする奇妙な習慣が根付いていた。
      身体が麻痺する持病を抱えたエライスと夫ファリオムは、新たな人生を求めて旅立つが不吉な街へ迷い込んでしまう。
      宿で発作を起こしたエライスは死亡と誤診され、神モルディギアンへの贄として神殿に運び込まれてしまう。
      一方、妖術師アブノン=サは自らの欲望のために神殿から死体を奪い取ろうと企てる。
      絶望的な状況でファリオムは神殿への潜入を決意し、無数の死体が横たわる祭壇で愛する妻を見つける。
      ここから夫婦の命がけの脱出劇が始まる。
  • 「暗黒の魔像」
  • 「エウウォラン王の航海」
  • 「地下納骨所に巣を張るもの」
  • 墓の落とし子
    • 太古のゾティーク大陸を支配していた魔術王オッサル。ある日、彗星に乗って地球外からやって来た魔物ニオス・コルガイを王は宮殿の地下に住まわせ、その知恵を頼りにするようになった。
      しかし魔物は間もなく不治の病に冒され、王の強大な魔術をもってしても癒すことはできなかった。
      魔物の死後、王はその遺体を魔法の二重円で封印し地下室を閉ざした。
      王自身も逝去するとそのミイラは魔物と共に葬られ、オッサルの強力な魔法円が両者の遺体を守った。
      砂漠の街ファラードの酒場で語り部がオッサル王の伝説を語る声に、宝石商の兄弟ミラブとマラバクは聞き入っていた。
      半獣人ゴリーの襲撃で隊商が壊滅し、逃げ惑った兄弟は古代の遺跡へ迷い込む。
  • 「ウルアの妖術」
  • 「クセートゥラ」
  • 「最後の象形文字」
  • 「ナートの降霊術」
  • 「プトゥームの黒人の大修道院長」
  • 「イラロタの死」
  • 「アドムファの庭園」
  • 「蟹の支配者」
  • 「モルテュッラ」

出版社:東京創元社

発売日:2009年8月31日

ページ数:454ページ

価格:紙版:1760円

良い点

  • 遥か未来の神話として、魔術の誘惑に打ち克ち、あるいは絡め取られる人々の生き様が寓話的で面白い
  • 絵画的に豊かな描写がまさに神話的で、皮肉なオチが印象的
  • 「モルテュッラ」は大傑作で、現代が舞台でもおかしくない恋物語として官能的
  • 大変に凝った美しい文体で世界観に引き込まれ、葡萄酒の如く生と死に満ちた世界に酔える
  • 降霊術師や拷問王国、魔神タサイドンの配下など、エロスもグロテスクも現代に通用するレベル
  • 素晴らしき美文の煌めきと翻訳者の文体へのこだわりが秀逸
  • 著者の意図に沿った収録順で絶妙の構成になっている
  • 別の話で出た地名が小話的に出てきて、大陸の地続き感や存在感が増す

気になった点

  • 人間が制御不能な力に振り回され圧し潰されていく展開で、最初は主人公たちの無力さに苛立ちを感じることも
  • 各話でだいたい誰かが必ず悲惨な死に方をしており、嫌な死に方をする人が多い
  • ラヴクラフトなどを読める余裕がない時には重い作品

こんな人におすすめ

  • ダーク・ファンタジーの古典を味わいたい人
  • 美しい文体と凝った世界観を楽しめる人
  • クラーク・アシュトン・スミスの代表作を読みたい人
  • 一話ずつじっくりと時間をかけて読める人
  • 幻想小説と怪奇小説の境界を探求したい人

本書は、太陽が衰えた遥か未来の最後の大陸を舞台とした、スミスの代表的なダーク・ファンタジー連作集である。

凝った美文と陰鬱な世界観により、後の幻想文学に多大な影響を与えた古典的価値を持つ、時間をかけて味わうべき一冊となっている。