01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56
トップ > 作品一覧 > 短編集 > 【読了ガイド】『クトゥルー4』│収録作品・購入方法まで紹介
【読了ガイド】『クトゥルー4』│収録作品・購入方法まで紹介

【読了ガイド】『クトゥルー4』│収録作品・購入方法まで紹介

クト4

本作は、クトゥルフ神話の世界への理想的な1冊。本短編集の最大の特徴は、他の短編集には収録されていない貴重な作品群を含んでいることだ。特に大瀧啓裕氏による「クトゥルー神話ー迷宮の地理学」と、C・A・スミスの「七つの呪い」は、この短編集でしか読むことができない独占収録作品となっている。

  • 魔犬」 H・P・ラヴクラフト
    • 倦怠に満ちた日々を送る語り手と友人セント・ジョンは、墓荒らしという禁忌の行為に刺激を見出していた。
      道徳の境界を超え、死者の眠りを妨げることに快感を覚える二人。しかし500年の時を経た古墓から持ち帰った翼の生えた犬の魔除けが、彼らの運命を狂わせる。
      家に響く羽ばたき音、夜の闇に轟く巨大な猟犬の遠吠え。
      やがてセント・ジョンが何者かに襲われ命を落とし、最期に魔除けについて語る。親友を失った語り手を待ち受ける運命とは。
      500年の時を超えて追いかける”何か”の正体とは。
  • 魔宴」 H・P・ラヴクラフト
    • クリスマスの季節、語り手は古き町キングスポートを訪れ、雪に覆われた墓地を抜けて年代物の家に向かう。そこには変わらない祖父母がいたが、その表情には仮面を被ったような不自然な硬さがあった。
      夜更けに夫婦に導かれ外に出ると、フードを纏った人々の行列が待っていた。
      その列に加わり教会へ向かうと、地下深くで病的な緑色の炎に照らされた奇怪な儀式が始まる。この町の住人たちの正体とは。
      彼らが守り続けてきた秘密の儀式の目的とは。表面上の穏やかさの下に潜む異形の世界が明かされる。
  • ウボ・サスラ」 C・A・スミス
    • オークランドの骨董品店でポール・トリガーディスは奇妙な乳白色の水晶を発見する。
      店主は「太古の時代、グリーンランドの地層から発掘された魔法の水晶」と説明し、「エイボンの書」という言葉を口にする。
      帰宅したポールは所有するエイボンの書の写本から「ウボ=サスラ」という存在についての記述を見つける。
      水晶を見つめ始めると奇妙な感覚に包まれ、自分の意識が溶け出し、別の人物である古代の魔術師ゾン・メザマレックの視点を通して世界を見るようになる。
      神々の知恵を復活させる野望と記憶が時間を超えてポールの中に流れ込んでいく。
  • 奇形」 ロバート・ブロック
    • 語り手は自分の体験が真実か夢か精神の病か確信を持てないが、この世界には人知の及ばない恐ろしい真実が潜んでいると信じている。
      神経を高ぶらせた彼は大学の教壇生活から離れ、ブリッジタウンの湖畔にあるケイン・ハウスで静養することにした。
      そこでかつての学生サイモン・マグロアと再会する。
      背が高く痩せたサイモンは、左肩甲骨の下に特異な腫瘍のような隆起を持つが、並外れた知性の持ち主で詩や随筆に病的なまでの才能を示していた。
      彼のアパートには、『墳墓の屍体嗜食』や『妖蛆の秘密』といった禁断の書物が並んでいた。1933年の秋に父親の死を理由に大学を去ったサイモン。
      今や髪は乱れ老け込んでいたが、最も恐ろしいのは彼の背中の瘤が以前の二倍の大きさになっていることだった。
  • 風に乗りて歩むもの」 オーガスト・ダーレス
    • カナダの辺境で上級警察官が記した報告書が、言葉にできない恐怖の全貌を明かそうとしていた。
      失踪した警官ロバート・ノリスに課せられた任務は、カナダの広大な荒野で忽然と姿を消した一つの村の謎を解き明かすことだった。
      捜査が佳境に入ったある日、前年に行方不明となっていた三人が天から降ってきたかのように突如現れる。
      生存していた二人が語る証言によると、その村には太古から崇拝されてきた邪悪な存在がおり、信者への「不興」を示すために彼らを誘拐させ姿を消させていた。
      この証言を聞いたノリスはさらなる真相究明に乗り出すが。
  • 七つの呪い」 C・A・スミス
    • コモリオムの行政長官ラリバール・ヴーズ卿は、蛮族ヴーアミ狩りの最中に妖術師エズダゴルの儀式に遭遇してしまう。
      怒り狂った妖術師は、ヴーズに邪神ツァトゥグァへの生贄として捧げられるという恐ろしい呪いをかける。
      怪鳥ラフトンティスに導かれ地下洞窟へ追いやられたヴーズだが、満腹だったツァトゥグァは新たな呪いを加え、蜘蛛神アトラク=ナクアへの貢物とする。
      ここから悪夢のような旅が始まり、誰も彼を受け取ろうとせず、次々と新たな呪いを加えられながら様々な存在の間をたらい回しにされる。
      すべてに拒絶されたヴーズの苦難の果てとは。
  • 闇に棲みつくもの」 オーガスト・ダーレス
    • ウィスコンシン州のリック湖周囲の森は、古くから呪われた土地として知られていた。
      1940年、パイロットが湖の水面下に巨大生物の影を目撃し、300年前に消えた人物の遺体がほぼ無傷で発見される怪事件が勃発する。
      調査に乗り出したガードナー教授が突如消息を絶ち、ジャックと助手レアードが師の行方を追って森に入る。
      発見したレコード盤には不気味なフルートの音色と呪文、そして教授の声でフォマルハウト、クトゥグアの名が響いていた。
      現れた教授は全て幻覚だと説明するが、翌朝には重要な書類と共に姿を消していた。
      夜の静寂を破るフルートの音色が次第にロッジに近づいてくる。
  • 石像の恐怖」 ヘイゼル・ヒールド
    • 狂人と思われていたダニエル・モリスには秘密があった。
      彼が繰り返し読む『エイボンの書』の古い写本には、生命を石に変える化学式が記されていた。それは魔術ではなく単純な化学反応による急激な石化作用だった。
      彫刻家アーサー・ウィーラーへの嫉妬と、妻ローズを奪われるという妄想に取り憑かれたモリスは、ついにその禁断の力を使用する。
      次なる標的はローズ。
      愛する者を永遠の芸術に変えようとするモリスだが、予期せぬ展開が待ち受けていた。
      制御不能な力は彼の野望を達成させるのか、それとも彼自身を飲み込んでしまうのか。
  • 「異次元の影」 ラヴクラフト&ダーレス
  • アーカムそして星の世界へ」 フリッツ・ライバー
    • 語り手はアーカム・ハウスに宿泊し、ミスカトニック大学の文学科学科主任アルバート・ウィルマース教授を訪ねる。
      70歳を超えているとは思えない銀髪の老人である教授は、怪奇現象を記録した若い作家の作品が、単なる幻想小説ではなく実体験に基づいていることを仄めかす。
      教員談話室では数学のアバム教授、医学のモーガン教授、経済学のピースリイ教授らが集い、南極で発見された「古のものども」や「冥王星人」の存在など、常識を超えた会話を当たり前のように交わしていた。
      語り手は膝の上に置いた箱を強く意識し続けている。
  • 「クトゥルー神話ー迷宮の地理学」 大瀧啓裕

出版社:青心社

発売日:1989/3/1

ページ数:331ページ

価格:紙版:1458円(中古で価格変動有)/電子版:660円

良い点

  • フリッツ・ライバーの「アーカムそして星の世界へ」は他のクトゥルー作品とは毛色が違う独特な魅力があり、ラヴクラフト作品のキャラクターが一堂に会する貴重な作品
  • 「奇形」と「黒い石」は非常に迫力があり、恐怖を感じさせる優れたホラー作品
  • クトゥルー神話の資料として非常に有用で、秘術書、アーティファクト、神話生物、作者同士のつながりなど興味深いコンテンツが豊富
  • 「恐怖(FEAR)」「幻想(FANTASY)」「冒険(ADVENTURE)」それぞれを主軸とした作家たちの個性が楽しめる
  • ウボ=サスラ、ダーレスの四元素論、イ=スの大いなる種族など多様な神話要素が登場
  • 芸術家が超常的存在に魅せられる描写など、人間と名状しがたい存在の邂逅が巧妙に描かれている

気になった点

  • ホラー小説として見ると、一部作品は恐怖感が物足りない場合がある
  • フリッツ・ライバーの作品はやや短く感じられる
  • 恐怖よりも神話的設定や世界観重視の傾向があり、純粋なホラーを求める読者には合わない可能性がある

こんな人におすすめ

  • TRPGからクトゥルフ神話に入り、ラヴクラフト以外の作家作品にも興味がある人
  • クトゥルー神話の資料や設定を深く知りたい人
  • ダーレスの「闇に棲みつくもの」など特定作品目当ての人

特に注目すべきは、大瀧啓裕氏の「クトゥルー神話ー迷宮の地理学」と C・A・スミスの「七つの呪い」。これらの解説・評論は他の短編集には収録されておらず、神話体系の理解を深める貴重な資料となっている。

「七つの呪い」では、ツァトゥグアやアトラック=ナチャなど有名な邪神たちの意外な一面が描かれており、既存の神話ファンにも新鮮な驚きを与えてくれる