【読了ガイド】『クトゥルー11』│収録作品・購入方法まで紹介
はじめに
『クトゥルー-11』は、ロバート・ブロック、ヘンリー・カットナー、フランク・ベルナップ・ロングなど「ニュージェネレーション」と呼べる作家陣による7編を収録した短編集。
1998年刊行の本巻では、ラヴクラフトは資料としての書簡にのみ登場し、クレジットとしては「ブロック他」となっている。
大瀧啓裕氏による解説は本書籍でのみ読める独占収録となっている。
収録作品リスト
- 「深淵の恐怖」 ロバート・W・ロウンデス
- 「知識を守るもの」 リチャード・F・シーライト
- 「暗黒の口づけ」 R・ブロック&H・カットナー
- 医師グラハムは悪夢に悩まされ、同僚に相談した。
数か月前にサンペドロの家を譲り受けてから悪夢が始まり、夢では海底に緑の光が灯り不気味な影が泳ぎ寄ってくる。
同僚は悪夢の原因が、かつてその家を建てたディーン家の祖先モレラにまつわる噂だと語った。
スペイン旅行から連れ帰られたモレラは悪魔の力で年を取らず、魔術師との繋がりが噂される名家の出身で人間ではないという。
夫の死後、モレラは満月の夜に奇妙な水生生物と共に、沖へ泳ぎ去り二度と戻らなかった。
その後の住人は皆、海の不気味さに耐えられず去っていく。
そしてグラハムもまた、同じ運命を辿ろうとしていた。
- 医師グラハムは悪夢に悩まされ、同僚に相談した。
- 「窖に潜むもの」 ロバート・ブロック
- 「狩りたてるもの」 ヘンリー・カットナー
- 古代の魔術師たちは恐ろしい存在イオドを召喚する方法と、それから身を守る術を発見し、この知識は後に「妖蛆の秘密」という禁書にも記録された。
20世紀、資産家アンドリアス・ベンスンの死後、孫のウィルといとこのアルヴィンに遺産が残される。
遺産独占を企むアルヴィンは、人里離れた峡谷の小屋で暮らすウィルを訪ねる。
ウィルは祖父の死もアルヴィンの企みも知らず、今まさにイオド召喚の儀式中だと告げてその危険性を説明し追い返そうとする。
しかし退こうとしないアルヴィンにしぶしぶ立ち入りを許可すると、儀式の最中にアルヴィンは冷酷にもいとこを射殺した。
勝利を確信し車で逃げ出すアルヴィンだが、突如強烈な眠気に襲われる。
- 古代の魔術師たちは恐ろしい存在イオドを召喚する方法と、それから身を守る術を発見し、この知識は後に「妖蛆の秘密」という禁書にも記録された。
- 「蛙」 ヘンリー・カットナー
- 「恐怖の山」 フランク・ベルナップ・ロング
- 若くして美術館の責任者となったアルジャノンは、調査員が次々と奇妙な事件に巻き込まれていく。
ある日、クラーク調査員から「神」を拾ったと電話で伝えられる。
クラークは像の調査は許すが、最後には必ず破壊するよう警告し、過去にリチャードソンが同じ像に近づいて拷問を受けた例を挙げた。
運ばれてきた像は象をモチーフにしているが、扇のような耳から触手が伸び、鼻の先がラッパ状に広がる奇妙な特徴を持っていた。
帰還したクラークは像が「チャウグナー・フォーン」と呼ばれることを明かした。そして、顔を覆っていたスカーフを取ると、像と同じ特徴を持つ変形した顔が現れた。
この像をきっかけに美術館で不可解な事件が起こり始める。
- 若くして美術館の責任者となったアルジャノンは、調査員が次々と奇妙な事件に巻き込まれていく。
- 「補足資料」 ラヴクラフトの書簡より
文庫版仕様の詳細
出版社:青心社
発売日:1998/3/1
ページ数:307ページ
価格:紙版:2650円(中古で価格変動有)/電子版:660円
購入ガイド
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読者レビューまとめ
良い点
- フランク・ベルナップ・ロングの「恐怖の山」は人気の邪神チャウグナー・フォーンを描いた代表作として評価が高い
- ラヴクラフトが夢の内容を原案として提供し、ロングが作品化したという興味深い創作背景
- ヘンリー・カットナーの「狩りたてるもの」では次元をさまようものイオドが登場し、クトゥルフ神話らしい苦痛な最後が描かれる
- ブロック&カットナーの「暗黒の口づけ」には山田医師という日本人キャラクターが登場する新しさ
- 全体的におぞましく、エグいと思える作品が揃っており、神話らしい恐怖感が味わえる
気になった点
- 「恐怖の山」のラストシーン近くは怪獣映画感が出てしまう
- 先進国のエゴイズム、人種差別、学歴主義などの時代的な表現に不快感を覚える場合がある
- 当時の時代背景による表現の壁があり、現代の読者には楽しみにくい部分もある
- 邪神よりもおぞましい人間の行為が描かれており、吐き気を催す場合がある
こんな人におすすめ!
- チャウグナー・フォーンに興味がある神話ファン
- イオドなどの次元をさまよう存在について知りたい人
- ラヴクラフトと他作家の創作交流に興味がある人
- おぞましくエグい恐怖表現を求める人
- 時代背景を含めて作品を理解したい人
まとめ
本巻は、ラヴクラフト以降の世代による神話作品群を集めた短編集として、クトゥルー神話の発展を示している。
特に「恐怖の山」は、ラヴクラフトの夢を原案とした作品として、作家間の創作交流の貴重な記録となっている。チャウグナー・フォーンやイオドといった人気の神話的存在が登場し、神話世界の拡張を感じさせる内容となっている。
ニュージェネレーション作家たちによる神話の継承と発展を知る上で重要な位置を占める一冊といえる。




