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【読了ガイド】『The Xothic Legend Cycle』│収録作品・購入方法まで紹介

【読了ガイド】『The Xothic Legend Cycle』│収録作品・購入方法まで紹介

本書は、リン・カーターによるクトゥルフ神話短編集である。全16編がすべて英語で収録されており、各短編には解説が付いている。

主にカーターの作品で構成され、ゾス三神の原作も多数収録されている。「外から来た漁師」の収録は珍しく、カーター&プライス、カーター&ラヴクラフトの共作も含まれる。

  • Introduction (ロバート・M・プライス)
  • The Red Offering (リン・カーター)
    • ムー大陸でガタノソア教団の台頭により、イソグサ教団が存亡の危機に瀕していた。
      幼少期にイソグサから神秘的な夢を授かった信徒ザントゥーは、「赤の供物を捧げるべし」という謎めいた啓示を胸に秘めていた。
      教団の衰退で大神官の座に就いたザントゥーは、古の召喚術師イラーンが所有していた魔術アイテム、「黒の印章」を手に入れれば地位が確立されると考える。
      弟のクスと共に古都を訪れ、シュブ=ニグラスの神殿書庫でイゴス文書の写本を発見し、イラーンの最期と埋葬場所、黒の印章について記述を得る。
      幾多の困難を乗り越え墓に辿り着いた兄弟を待つものとは。
  • The Dweller in the Tomb (リン・カーター)
    • 1913年、考古学界の異端児コープランド教授は、「ポナペ経典」と「無名祭祀書」の暗号を解読した。
      伝説の神官ザントゥーの墳墓の在処を突き止めたと確信して、中央アジアへの探検隊を組織する。
      しかし未踏の地への旅路は苛酷を極め、疫病が隊員を蝕み、野獣の襲撃で水源を失い、現地ガイドの離反が相次ぐ中、禁忌とされるツァン高原の奥地へ足を踏み入れる。
      40日目を過ぎた頃、古城が出現し、極寒と乾燥に肉体を蝕まれながらもコープランドの執念は衰えない。
      ミ=ゴの襲来で最後のガイドを喪失し、孤独な探検家となった彼の前に無名の山脈が聳え立つ。
  • The Thing in the Pit (リン・カーター)
    • 古代ムー大陸の神官ザントゥーの生涯を綴る「ザントゥー碑文」をコープランド教授が翻訳した物語。
      ティオグの時代から約11,000年後、クナー王国では大神官ヤー・トボスの影響でガタノトア神の崇拝が唯一の公認宗教となり、異教は禁じられた。
      隣国グトゥーの神官ザントゥーは、イェーの深淵のそばに建つ宮殿で「31の儀式」を研究し、封印された神イソグサを解放する呪文を発見する。
      ウブとユッグと手を組み断崖で儀式を執り行うと、顔のない山のような巨体に一本の黒い角を持つ存在が深淵から現れる。
      続いて第二、第三の「怪物」が現れた時、ザントゥーは真の姿を理解する。
  • Out of the Ages (リン・カーター)
  • The  Horrer in the Gallery (リン・カーター)
    • 1920年代末、カリフォルニアの古代遺物研究所で職員ホジキンスが、休職中のブレイン博士に代わり、故コープランド教授の遺品整理を任される。
      作業が進むにつれ悪夢に支配される夜が続き、特に「ポナペの小像」には言い知れぬ不吉な雰囲気が漂っていた。
      研究所の理事会は小像の一般公開を決定するが、ホジキンスは危険性を訴える。
      真相究明のためアーカムのミスカトニック大学で『ネクロノミコン』を調査し、「旧支配者」についての恐ろしい記述を目にする。
      護符「旧き印」を託され研究所に戻ると、警備員の無残な遺体と小像を崇める得体の知れない人影が待ち受けていた。
  • The Winfield Heritance (リン・カーター)
  • Perchance to Dream (リン・カーター)
  • Strange Manuscript Found in the Vermont Woods (リン・カーター)
  • Dreams from R’lyeh (リン・カーター)
  • Something in the Moonlight (リン・カーター)
  • The Fishers from Outside (リン・カーター)
    • 考古学者メイヒュー教授の20年に及ぶ研究が実を結ぼうとしていた。
      彼が追い求めてきたのは、太古の昔に地球を植民地化し、ウガンダ中央部に巨石の前哨基地を築いた「外界の漁師」と呼ばれる異星の生物だった。
      禁断の書『ネクロノミコン』から、この存在が古の神グロス・ゴルカの使徒であることを突き止める。
      1946年、助手のスローンと共にジンバブエで、怪物めいた鳥の偶像に混じって十二面体の「黒い石」を発見する。
      刻文を解読すると、それは「外界の漁師」ことシャンタクを召喚する儀式の手順だった。
  • Behind the Mask (リン・カーター)
  • The Strange Doom of Enos Herker (リン・カーター&ロバート・M・プライス)
  • The Bell in the Tower (リン・カーター&ラヴクラフト)
  • The Soul of the Devil-Bought (ロバート・M・プライス)

出版社:Chaosium

発売日:1997/2/1

ページ数:271ページ

価格:紙版:23100円(中古で価格変動有)

良い点

  • カーターは真のラヴクラフト愛好家で、ゾシック・サイクルは彼の剣と魔法作品よりも優れている
  • 神話作家としてのカーターの文章は非常に良質で、ブライアン・ラムレイのような単なる暴力や女性蔑視ではない
  • 現実的で神話に調和したサスペンスフルな物語を創造している
  • 利用可能な神話の知識体系を適切に活用している
  • 各短編に解説が付いている
  • スリルを求める読者には楽しめる内容

気になった点

  • カーターが神話知識全体を百科事典化しようとして、自分の物語にしようとする際に問題が生じる
  • 「ギャラリーの恐怖」でダーレスの善良な旧神という概念を拡張し、キリスト教的な善悪二元論を導入している
  • ラヴクラフトが意図しなかった宇宙的恐怖を減少させる「慈悲深い救世主」的な旧神描写
  • 「外から来た漁師」では、簡単に倒される程度のグロス=ゴルカを、旧支配者として崇拝させる不自然さ
  • ダーレスが確立した陳腐化や常套手段に従っている
  • 収録された短編の多くが非常に似通っている
  • ラヴクラフト伝統から大きく逸脱した独自の歪んだ物語になっている

こんな人におすすめ

  • 過小評価されている作家への素晴らしいオマージュを求める人
  • ラヴクラフト神話の様々な作家による解釈に興味がある人
  • 英語でクトゥルフ神話作品を読みたい人
  • 読み物としてのスリルを求める人
  • 神話作家としてのカーターの位置づけを理解したい人

本書は、リン・カーターによるクトゥルフ神話作品の完全版として、神話愛好家には貴重な一冊である。良質な文章とサスペンス構築能力を持ちながらも、ラヴクラフトの原初的な宇宙的恐怖から逸脱し、賛否が分かれる作品集となっている。