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【読了ガイド】『真ク・リトル・リトル神話体系3』│収録作品・購入方法まで紹介

【読了ガイド】『真ク・リトル・リトル神話体系3』│収録作品・購入方法まで紹介

真3

本書は、クトゥルー神話アンソロジーの第三巻で、短篇8作品を収録している。

収録作品は「セイレムの怪異」「墓地に潜む恐怖」「暗黒の接吻」「セベックの秘密」「メデューサの呪い」「触手」「ハイドラ」「幽遠の彼方に」となっている。セイレムの怪異、セベクの秘密、触手、ハイドラ等、現代のクトゥルフ神話に通ずる邪神たちの代表作が収録されている。

  • セイレムの怪異」 H・カットナー
    • 1692年のセイレムで魔女アビゲイル・プリンは、朽ち果てた三日月の角を持つ異形の神像に生贄を捧げていた。
      魔女裁判で火刑を宣告されるも、炎の中で燃え尽きることなく、狂気の笑みを浮かべたまま消えたという伝説が残る。
      作家のカーソンは創作のため、地元の人々が恐れるアビゲイルの呪われた家を執筆の場として選んだ。
      ある夜、一匹の鼠に奇妙な親近感を覚えて追いかけ地下へ降りると、壁の奥に隠された秘密の円形の部屋を発見する。
      寒色系の石で描かれたモザイク模様と、謎めいた円盤がはめ込まれた部屋にいると、創作意欲が湧き上がり、カーソンは執筆拠点をそこに移していく。
      彼は自分の行動が、300年前のアビゲイルの儀式を完成させる最後のピースになっていることに気づいていなかった。
  • 墓地に潜む恐怖」 H・ヒールド
    • 陰鬱な街スティルウォーターでは、村人たちの間でスプレイグ家の悲劇が常に話題になっていた。
      ソフィー・スプレイグはかつて兄のトムと平穏な日々を送っていたが、1886年にトムの突然の死ともう一つの不可解な事件が彼女を一変させた。
      それ以来、白痴のジョニーが彼女の家の窓辺で怒鳴り、墓地でトムとヘンリーの墓に話しかけるのが日課になっていた。
      ヘンリーはソフィーに好意を寄せる出身地不明の怪しげな男で、常に奇妙な実験を行っていた。
      6月15日、酒盛りから帰宅したトムが息を引き取った際、ヘンリーは医師に早急な埋葬を提案した。
      ジョニーはトムの遺体がまだ暖かく瞼が動いていたと証言したが、誰も白痴の言葉を信じなかった。
  • 暗黒の接吻」 R・ブロック&H・カットナー
    • 医師グラハムは悪夢に悩まされ、同僚に相談した。
      数か月前にサンペドロの家を譲り受けてから悪夢が始まり、夢では海底に緑の光が灯り不気味な影が泳ぎ寄ってくる。
      同僚は悪夢の原因が、かつてその家を建てたディーン家の祖先モレラにまつわる噂だと語った。
      スペイン旅行から連れ帰られたモレラは悪魔の力で年を取らず、魔術師との繋がりが噂される名家の出身で人間ではないという。
      夫の死後、モレラは満月の夜に奇妙な水生生物と共に、沖へ泳ぎ去り二度と戻らなかった。
      その後の住人は皆、海の不気味さに耐えられず去っていく。
      そしてグラハムもまた、同じ運命を辿ろうとしていた。
  • セベックの秘密」 R・ブロック
    • 古代エジプトで暗黒のファラオ・ネフレン=カの没落と共に、ナイアーラトテップ信仰が闇に葬られる一方、鰐神セベクへの信仰が力を増していた。
      メンフィスの神殿では、毎年セベクが高位神官の前に降臨すると信じられ、ミイラを守護する力を得るため生贄が捧げられた。
      現代、セベクの神官のミイラが四体発見されるが発見者たちは不可解な死を遂げる。
      193X年、ニューオーリンズでエジプトの神官に扮したヘンライカス・ヴァニングと出会った私は、彼に誘われ舞踏会に出席することとなった。
      そこで、クロコダイルの頭をした神官の姿を目撃する。
  • メデューサの呪い」 Z・ビショップ
    • ケープ・ジラードーを目指していた私は、ミズーリの田舎道で道に迷い、雨雲が迫る中で一軒の古びた屋敷を見つけた。
      無断侵入を謝ると、家主は意外にも温かく迎え入れてくれたが、その丁寧すぎる物腰の裏に暗い影を感じた。
      夜が更けると家主は身の上話を始め、身寄りを亡くし唯一の家族である息子がパリに留学したと語る。
      息子は悪魔崇拝のサークルに所属し、特に親友マーシュとの関係を深め、彼らの儀式を取り仕切る謎めいた女性タニト・イシスに心を奪されて結婚した。
      新しい女主人の到着と共に使用人たちが次々と姿を消し、1916年6月に神経を病んだマーシュを招いて始まった三人の共同生活が、取り返しのつかない破滅への序章となった。
  • 触手」 H・カットナー
    • 怪奇小説家マイケルの作品は、創作の域を超えた実体験のような迫真性で読者を不安に陥れていた。
      ある日、親友のビルとジーンのもとに彼からの不穏な電報が届く。
      サンタ・バーバラ北方の彼の家を訪れた二人を待っていたのは、やつれきった親友の姿だった。
      「途中、何か異常に気付かなかったか?」というマイケルの問いに、ビルは不吉なカラスを、ジーンはそれ以外の鳥の存在を告げると、マイケルの顔が青ざめた。
      窓の外には人の腕ほどの太さを持つ象牙色の蔓があり、半透明な表面は生命の息吹きを感じさせ、先端の球根からは無数の繊毛が生えていた。
      ジーンが触れた瞬間、蔓は意思を持ったように蠢いて消え去り、マイケルの小説が創作ではなかったことが明らかになる。
  • ハイドラ」H・カットナー
    • 新聞が報じた「スコット事件」は不可解な死の連鎖だった。
      頭部が切断されたスコットの遺体、姿を消したロバート、そして頸動脈を深く切られたエドモンドの死体。
      これら不気味な死の背後には『魂の投射』という自費出版の薄い本があった。
      陳腐な内容の7ページの後に突如現れる、星気体への投射法が記された最後の1ページ。
      ドイツからカリフォルニアへの途上で本を手に取ったロバートが、ハリウッドのエドモンドを訪れた時、二人の目には既に狂気の色が宿っていた。
      オカルト知識に魅入られた二人はカンナビス・インディカを入手し、8月15日にスコットへの最後の手紙を残して禁断の実験を始めた。
  • 幽遠の彼方に」A・ダーレス
    • 図書館で働く私のもとに、北部ウィスコンシンの従兄弟フリーリンから切迫した手紙が届いた。
      祖父のジョサイア・アルウィンが突如として奇妙な様子を見せ始めたという。
      黒い瞳を持つ頑健な老人である祖父には、年齢を感じさせない不自然さがあった。
      駅で従兄弟から聞かされたのは、書斎に籠もりきりとなった祖父の異変、夜な夜な響く得体の知れない音楽、漂う奇妙な臭気など不可解な出来事だった。
      1850年にインスマスの船乗りだった大叔父が建てた屋敷で祖父に会うと、彼は「イタカ」「ロイガー」「ハスター」という不吉な名前と、決して超えてはならない境界線の警告が記された書き物を見せた。

出版社:国書刊行会

発売日:2008/1/21

ページ数:275ページ

価格:紙版:1650円/電子版:1320円

良い点

  • カットナーのクトゥルフ神話代表作品である「セイレムの怪異」が収録されている
  • H・カットナーの「ハイドラ」は、名状し難いクトゥルフ的恐怖と終焉が淡々と描かれた秀作
  • これぞまさしくコズミックホラーと言える、人間の理解の範疇を超えた何者かの気配を描いている
  • 徐々に精神的に追い詰められていく登場人物の様子など、生々しい描写に生理的な恐怖と不快感を煽られる

気になった点

  • 初期の日本語訳のため読みづらい部分がある可能性
  • 前の二巻に比べるとグロテスクな恐怖を描いたものが多く、苦手な読者には重い内容
  • 生理的な恐怖と不快感を煽る生々しい描写があり、ホラー耐性の低い読者には刺激が強い

こんな人におすすめ

  • ヘンリー・カットナーの作品に興味がある人
  • コズミックホラーの真髄を味わいたい人
  • グロテスクな恐怖描写を楽しめるホラー愛好家

本書は、クトゥルー神話アンソロジーシリーズの第三巻として、邪神たちの代表作を集めた作品集である。

現代のクトゥルフ神話につながる重要な要素を含む8篇により、神話体系の発展と継承を示す貴重な資料的価値を持つ一冊となっている。