【読了ガイド】『大宇宙の魔女』│収録作品・購入方法まで紹介
はじめに
本書は、C・L・ムーアによる短編集で、宇宙を舞台にしたファンタジー作品群が収録されている。
収録作品は「シャンブロウ」、「黒い渇き」、「緋色の夢」、「神々の塵」、「ジュリ」、「暗黒界の妖精」、「イヴァラ」、「失われた楽園」、「生命の樹」、「スターストーンを求めて」、「狼女」、「短調の歌」の12編となっている。
シャンブロウは異例の人気を誇るヒロインで、後に「神々の塵」はクトゥルフ神話作品となった。本書は新訳版として刊行され、作者のエッセイも付録として収録されている。
収録作品リスト
- 「シャンブロウ」
- 荒々しい雰囲気を漂わせる密輸業者ノースウェスト・スミスは、火星の街で群衆に追い詰められた若い女性を目撃し、彼女を守らねばならないという衝動に駆られて行動を起こす。
周囲の人々は彼女を「シャンブロウ」と呼んでいたが、スミスにはその意味が分からなかった。
群衆は静かに立ち去ったが、彼らの目には憎しみではなく軽蔑の色が浮かんでいた。
女性は人並外れて魅力的でありながら明らかに人間ではなく、スミスは説明のつかない責任感から彼女を自分の住まいに匿う。
時が経つにつれ、シャンブロウは髪の毛に似た奇妙な生き物を使って他者の生命力を糧にし、犠牲者を強烈な快感で支配して、中毒状態に陥らせる能力を持つことが明らかになる。
- 荒々しい雰囲気を漂わせる密輸業者ノースウェスト・スミスは、火星の街で群衆に追い詰められた若い女性を目撃し、彼女を守らねばならないという衝動に駆られて行動を起こす。
- 「黒い渇き」
- 「緋色の夢」
- 「神々の塵」
- 火星の赤い荒野の薄暗い酒場で、生活に窮した密輸人ノースウェスト・スミスと相棒ヤロールが次の仕事を待っていた。
現れた依頼人が持ち込んだのは「ファロールの遺した塵を持ち帰れ」という危険な仕事だった。
ファロールとはかつて「三柱」と呼ばれた神々の主で、他の二柱サイグとルサが完全に消滅した今、わずかに存在を保つファロールの痕跡を依頼人は狙っていた。
真の目論見は塵を用いた儀式でファロールを復活させ、その叡智を我が物とし神を奴隷として従えることだった。
ファロールの眠る場所には「白い何か」が立ちはだかっているが、「酒なしで死ぬくらいなら化け物に殺された方がマシ」と二人は危険な旅路に出る決意を固めた。
- 火星の赤い荒野の薄暗い酒場で、生活に窮した密輸人ノースウェスト・スミスと相棒ヤロールが次の仕事を待っていた。
- 「ジュリ」
- 「暗黒界の妖精」
- 「イヴァラ」
- 「失われた楽園」
- 「生命の樹」
- 「スターストーンを求めて」
- 「狼女」
- 「短調の歌」
文庫版仕様の詳細
出版社:東京創元社
発売日:2021/11/11
ページ数:572ページ
価格:紙版:1650円
購入ガイド
読者レビューまとめ
良い点
- 新訳版は訳文の解像度が上がり、とにかくすらすらと読みやすい
- 旧訳版で省略されていた煽り文もちゃんと翻訳されていてお得感がある
- 90年前の作品ながら、映像でごまかさず心情までも風景描写に昇華していく文体のセンスオブワンダーが味わえる
- 「神々の塵」の読後の寂しさが印象的で変化球的な魅力がある
- 原文に忠実に訳そうとしている印象で、旧訳で怪しさを感じる箇所もより納得できる訳文になっている
- 宇宙が舞台とはいえ怪奇色の強いファンタジーとして楽しめる
気になった点
- 90年前の作品のため、敵役やプロットなどに既視感がある可能性
- 言葉の選択や文の流れは、旧訳の方が優れていると感じる部分が多々ある
- 幻想的な雰囲気や不気味さが、新訳では今ひとつ味わえない場合がある
- ノースウェスト・スミスは常に巻き込まれ型の受け身キャラクター
こんな人におすすめ!
- 原点となる古典作品に触れたい人
- ハヤカワ文庫版や論創社版を持っているファン
- 古典ホラーファン(SFよりもホラー寄りの内容)
- 怪奇色の強いファンタジーを求める人
- ウィアード・テイルズ系の作品に興味がある人
まとめ
本書は、SFの異色作ともいえる「ノースウェスト・スミス」シリーズの全短編が再び手軽に入手できるようになった貴重な一冊である。
新訳として読みやすさは向上したものの、旧訳の幻想的な雰囲気や文体の魅力も評価され、翻訳の難しさを示す好例となっている作品集である。




