
【読了ガイド】『グラーキの黙示Ⅰ』│収録作品・購入方法まで紹介
はじめに
本作は、ラムジー・キャンベルによる初期クトゥルフ神話作品集『Cold Print』の、完全邦訳版となる短編集。
キャンベルは、クトゥルフ神話の啓蒙に努めたダーレスに才能を見出された作家で、ダーレスの指導により生まれ育ったイギリスに架空の都市を作り上げ、そこを舞台とした神話作品を創作した。
本書には内11篇が収録されており、各作品の邦訳はこれまでも個別に出版されていたが、完全邦訳は初めての試みとなっている。
収録作品リスト
- 「ハイ・ストリートの協会」
- 「城の部屋」
- 「橋の恐怖」
- 「昆虫族、シャッガイより来たる」
- 「ヴェールを剥ぎ取るもの」
- 「湖の住人」
- 「奏音領域」
- 「魔女の帰還」
- 「ユゴスの坑」
- 「スタンリー・ブルックの遺志」
- 「ムーン=レンズ」
文庫版仕様の詳細
出版社:サウザンブックス社
発売日:2022/2/17
ページ数:384ページ
価格:紙版:2420円/電子版:1760円
購入ガイド
- Amazon:「https://amzn.to/4nzreMf」
読者レビューまとめ
良い点
- イギリスを舞台としたことでキャンベルによって新しい世界観の創造に成功している
- 「ユゴスの坑」「ムーン=レンズ」「湖の住人」などの面白い作品が収録されている
- 「昆虫族、シャッガイより来たる」の細かい描写が印象的で読み応えがある
- 「スタンリー・ブルックの遺志」は明確にオチがついている作品として評価される
- 基本的な流れ(禁足地への立ち入り、禁忌への接触)がクラシカルなクトゥルーものの良さを表現
- 鬱々とした雰囲気がクトゥルー神話らしい魅力を醸し出している
- 各話毎に用語解説が付いており、TRPG創作に役立つ内容
- キャンベルによる「ラヴクラフト私論」「未知なるものを追い求めて」などの興味深いエッセイも収録
- 神話生物の表現が明確になった部分があり、資料的価値も高い
気になった点
- 一見ラヴクラフトの模倣という印象を受ける場合がある
- 作品の出来にバラツキがあるという指摘
- わりとあっさりめの文体で、訳による影響もある可能性
こんな人におすすめ!
- イギリスを舞台としたクトゥルー神話作品に興味がある人
- ラムジー・キャンベルの初期作品を読みたい人
- クラシカルなクトゥルー作品の雰囲気を求める人
- TRPG創作の参考資料を求める人
- 神話生物の詳細な描写を楽しみたい人
- 禁足地や禁忌をテーマとした作品が好きな人
- 作家のエッセイや自作品への考察に興味がある人
まとめ
本書は、キャンベルによるイギリス版クトゥルー神話の世界観を、初めて完全な形で体験できる貴重な作品集となっている。
ラヴクラフトの影響を受けながらも、舞台をイギリスに移すことで独自の神話世界の構築に成功している。
クラシカルなクトゥルー作品の魅力である鬱々とした雰囲気と禁忌への恐怖を、現代に伝える重要な架け橋的作品として位置づけられる。