【読了ガイド】『クトゥルー8』│収録作品・購入方法まで紹介
はじめに
『クトゥルー-8』は、ラヴクラフトの代表作「インスマスを覆う影」を筆頭とした7編を収録した短編集。
本作の最大の特徴は「インスマスを覆う影」で、クトゥルフ神話を知るきっかけとなる重要作品。深きものという神話生物の代表的な登場作品として知られている。
また、大瀧啓裕氏による「クトゥルー神話画廊Ⅱ」も本書籍でのみ読める独占収録となっている。
収録作品リスト
- 「屋根裏部屋の影」 ラヴクラフト&ダーレス
- 「侵入者」 ヘンリーカットナー
- 怪奇小説家マイケルの作品は、創作の域を超えた実体験のような迫真性で読者を不安に陥れていた。
ある日、親友のビルとジーンのもとに彼からの不穏な電報が届く。
サンタ・バーバラ北方の彼の家を訪れた二人を待っていたのは、やつれきった親友の姿だった。
「途中、何か異常に気付かなかったか?」というマイケルの問いに、ビルは不吉なカラスを、ジーンはそれ以外の鳥の存在を告げると、マイケルの顔が青ざめた。
窓の外には人の腕ほどの太さを持つ象牙色の蔓があり、半透明な表面は生命の息吹きを感じさせ、先端の球根からは無数の繊毛が生えていた。
ジーンが触れた瞬間、蔓は意思を持ったように蠢いて消え去り、マイケルの小説が創作ではなかったことが明らかになる。
- 怪奇小説家マイケルの作品は、創作の域を超えた実体験のような迫真性で読者を不安に陥れていた。
- 「屋根の上に」 R・E・ハワード
- 「電気処刑器」 アドルフェ・デ・カストロ
- メキシコ行きの列車の密室客室で、書類持ち逃げ犯フェルダンの追跡という単純な任務についていた無名の語り手が遭遇したのは想像を絶する狂気だった。
胡散臭い怪しげな男が取り出したのは、フード状の電気処刑器具。
その発明者を自称する狂人は「最初の実験台」として語り手を狙う。
腕力での対抗を諦めた語り手に残されたのは知恵のみ。
遺書を書くという口実や友人記者への売り込み話で時間を稼ぐが、それは一時しのぎに過ぎない。
列車が目的地メキシコ・シティに到着するまでの極限状況での機知と狂気の対決。
- メキシコ行きの列車の密室客室で、書類持ち逃げ犯フェルダンの追跡という単純な任務についていた無名の語り手が遭遇したのは想像を絶する狂気だった。
- 「潜伏するもの」 ダーレス&スコラー
- アメリカの探検隊が中央アジアビルマの秘境に挑むが、想像を絶する恐怖へと一変する。
突如として「チョー=チョー人」と呼ばれる矮躯の人外種族に襲撃され、唯一生き延びたエリック・マーシュは、伝説の廃都アラオザルにたどり着く。
そこで彼はチョー=チョー人に捕縛され、既に死亡したはずのフォ=ラン博士と驚愕の再会を果たす。
博士は誘拐され、古の双子神を復活させる儀式に加担させられていたという。
絶体絶命の窮地に陥った二人は長老エ=ポオを騙してアラオザルからの脱出に成功するが、それで全てが終わったわけではなかった。
- アメリカの探検隊が中央アジアビルマの秘境に挑むが、想像を絶する恐怖へと一変する。
- 「名もなき末裔」 C・A・スミス
- 「インスマスを覆う影」 H・P・ラヴクラフト
- 1927年冬、マサチューセッツ州の港町インスマスが、政府の秘密作戦により爆破され地図から消えた。
夏に遡り、成人祝いの一人旅をしていたロバート・オルムステッドは、アーカム行きの汽車チケットが手に入らずバスで移動することになる。
途中でインスマスという町に立ち寄る。かつて繁栄したこの港町は流行病で住民の半数を失い、今や呪われた町として忌み嫌われていた。
住民たちは奇妙な容貌をしており、手足は大きいのに耳や鼻は未発達で、魚や蛙を連想させる姿だった。
バスの故障により一夜を過ごすことになったロバートの運命は。
- 1927年冬、マサチューセッツ州の港町インスマスが、政府の秘密作戦により爆破され地図から消えた。
- 「クトゥルー神話画廊Ⅱ」 大瀧啓裕
文庫版仕様の詳細
出版社:青心社
発売日:1990/1/1
ページ数:331ページ
価格:紙版:814円/電子版:660円
購入ガイド
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読者レビューまとめ
良い点
- ラヴクラフトの「インスマスを覆う影」は個人的最高傑作として評価が高い
- この話のためだけに買っても損はないほどの価値がある傑作が収録
- 「電気処刑器」は異形ではなく狂人を相手にする密室劇として独特な魅力を持つ
- C・A・スミスの「名もなき末裔」が俊逸な作品として高く評価されている
- 物語の危機の契機(「自ら立ち入る」「巻き込まれる」)について興味深い考察ができる作品群
- 久しぶりに読んでも意外に面白く、多くの人々を魅了するだけの力がある
- 現実的な狂人の描写が、「正論が通じず一方的に主張を押し付けてくる」という人間関係とリンクして興味深い
気になった点
- ラヴクラフト&ダーレスの合作「屋根裏部屋の影」は、ダーレスの作風が強く出すぎてイマイチ感が否めない
- 別の選集やラヴクラフト・ダーレスの短編集に収められた作品が多く、既読者には重複感がある
- 訳が異なっている作品もあり、既に他で読んだ作品との違いに戸惑う可能性がある
こんな人におすすめ!
- クトゥルフ神話の入門として「インスマスを覆う影」を読みたい人
- ディープ・ワンズ(深きものども)について詳しく知りたい人
- ラヴクラフトの最高傑作と評される作品を読みたい人
- 異形よりも狂人を扱った密室劇に興味がある人
まとめ
本巻は「インスマスを覆う影」という決定的な傑作を軸とした、クトゥルー神話入門に最適な短編集となっている。
ディープ・ワンズの恐怖を描いた本作品は、多くの読者がクトゥルフ神話に魅了されるきっかけとなった作品として、その地位を確立している。
大瀧啓裕氏の「神話画廊Ⅱ」と合わせて、視覚的にも神話世界を楽しめる構成となっており、クトゥルー神話の魅力を改めて実感できる一冊といえる。




