
【完全版】イブ=ツトゥル│登場作品・概要・シナリオ制作のヒントなどを完全網羅!※ネタバレ注意※
YIBB-TSTLL
目次
基本設定・概要
危険度: ★★★★★★★★☆☆
本報告は、全知の暗黒神「光なき無窮の深淵に潜むもの」として知られるイブ=ツトゥルについての調査記録である。
イブ=ツトゥルは、その本質について研究者間で大きな議論を呼んでいる存在である。グレート・オールド・ワン、外なる神、あるいは寄生的存在など、その分類は研究者によって大きく異なる。
形態的特徴として、緑色の外套で全身を覆い、その下には多くの乳房を持つとされる。この乳房からは「黒いミルク」と呼ばれる特異な血液を分泌し、これを夜鬼たちが吸飲するという。この黒いミルクは半ば自我を持ち、本体から離れても独自に活動できる特性を持つ。『クタート・アクアディンゲン』によれば、イブ=ツトゥルの眠りの間にも、この血液は独立して行動し、「溺者の意思」を実行するという。魔術師たちはこの血液を「ザ・ブラック」と呼び、敵への攻撃手段として用いることがある。
イブ=ツトゥルの性質について、複数の解釈が存在する。『星と血について』(ウイップル、1768年)では、他の宇宙的存在の血を吸う寄生的な怪物として描写され、数千年に一度の摂食期間を除いて半覚醒状態で静止しているとされる。一方で、宇宙の動かざる記録者として、あらゆる知識を集積する生きた図書館のような存在とする解釈も存在する。
住処については、地球のドリームランドにあるとされ、特にクレドの密林を越えた未知の山、あるいは密林内の隠された森に存在するという報告がある。その領域には、クレドの密林にある聖なる泉の宮殿の背後から到達できるとされる。
人類との関わりにおいて、イブ=ツトゥルは「驚異の知識」を求める者に対して接触可能な存在とされる。特に「第六サスラッタ」と呼ばれる秘密の呪文によって夢の中での接触が可能とされ、この存在から知識を「食べさせて」もらうことができるという。しかし、より強力な「稀なる第八サスラッタ」による直接的な招来は、予測不能な結果をもたらすため忌避されている。歴史的には、ティームドラの北方人の神として崇拝され、象牙の刃の神官たちがドリームランドで奉仕していた記録が残る。
存在間の関係性について、複数の仮説が提起されている。ヨグ=ソトースとの関連を指摘する説では、イブ=ツトゥルをその子孫または具現化した一部とみなし、万物に遍在するヨグ=ソトースの知識を記録する存在として位置づける。他方、シュブ=ニグラスの子とする説や、バグ=シャースとの血縁関係を示唆する説も存在する。
特筆すべき特徴として、夜鬼との深い関係性がある。夜鬼たちはイブ=ツトゥルの周囲に群れ集い、その黒いミルクを吸飲する。この関係については、イブ=ツトゥルが夜鬼を産み育てるとする説と、単に支配下に置いているとする説が並立している。
【住処】
- 現在:ドリームランド(クレドの密林周辺)
- 過去:宇宙の外側にある混沌の領域
ゲーム上ステータス・能力・恩恵等
ステータス(7版)
STR | CON | SIZ | DEX |
200 | 240 | 260 | 80 |
POW | HP | MP | DB |
325 | 50 | 65 | +5D6 |
ビルド | 移動 | 正気度喪失 (遭遇した時) | 正気度喪失 (動いているイブ=ツトゥルの血を見た時) |
6 | 0 | 1D6/2D10 | 1D4/1D10 |
行動
- 攻撃回数:1回
- 近接戦闘:90%/2D6+知恵の接触 …イブ=ツトゥルは動かず近づかない限り無害な存在であり、無暗に近づくと触手で攻撃される。攻撃された時、知恵の接触を受ける。能力「知恵の接触」を参照。
- 黒きもの:80% …能力の「黒きもの」を参照。対象は回避ロールは可能。
装甲
- 外套:8ポイント、身:4ポイントの皮膚。
- MPを1消費すると、HPを2回復できる。
- HPが0になれば姿を消す。夜鬼も散っていく。その後1D100日後に復活する。
魔術
- 呪文:「アリアドネの糸」・「真実の一瞥」・「月棲獣との接触」・「支配」・「心臓破裂」・「カザンの飢え」・「生ける衣」・「夜鬼の召喚/従属」・「狂暴なる狂気」・その他キーパーの任意。
能力
- 黒きもの:自身の血を武器や恩恵、手先として放出できる。水に弱く、水をかけられと消滅する。
- 知恵の接触:イブ=ツトゥルに触れられた者は、精神的、身体的に様々な変化を起こす。
- 偉大な知恵:イブ=ツトゥルの乳から直接黒いミルクを摂取した者は、求める知識を得ることができる。
- 夜鬼:常に夜鬼が付き従っている。
恩恵
- 黒いミルク:イブ=ツトゥルの血を飲んだものは、イブ=ツトゥルとテレパシーが可能になる。
- 宇宙の英知:現在、過去、未来の出来事や、呪文などを授ける。
- 無貌のしもべ:夜鬼を貸してくれる。
シナリオ導入例・演出のヒント
原作「The Horror at Oakdeene」では
- オークディーン精神病院で看護師見習いの主人公が、オカルト研究で収監されているラーナー患者のファイルから「黒の書」という魔導書の存在を知る
- 患者の中には自ら片目を抉り出して死んだ者もいた
- ラーナーから「第六サスラッタ」という魔導書を持参するよう依頼される
- これをきっかけに主人公は夢の中でイブ=ツトゥルと遭遇する
- 最終的に11人の信者と共に、12人目として儀式に参加させられる
- イブ=ツトゥルの「反転」という能力で、主人公の精神が崩壊し患者の一人となってしまう
- ※「反転」はTRPGには反映されてないが、対象の状態をそのまま反転させる能力。
精神に異常をきたしてる患者は健康になり、逆に健康な人は異常をきたす。しかしたまに死亡する場合もある。

「反転」という設定が良すぎました。賭け狂うしかありません。
シナリオ導入例
1:医療従事者転落型
- 探索者たちが精神病院で医師、看護師、カウンセラーとして勤務開始
- 特定の患者から「治療に役立つ古い文献」の情報を得る
- 最初は患者を助けたい善意から禁断の知識に手を出す
- 徐々に患者と職員の境界が曖昧になっていく
2:病院調査型
- 精神病院で職員の離職率が異常に高く、調査依頼を受ける
- 元職員たちは「患者と職員が入れ替わっている」と主張
- 調査を進めると、治癒率が異常に高い一方で死亡率も高い矛盾
- 実は「反転」能力による「治療」が行われている

イブ=ツトゥルが悪の存在か、ただの慈悲あるママか。まずはそこを決めてからシナリオ制作に織り込むのがいいかもしれません。
演出のヒント
1:精神病院の閉鎖的恐怖演出
- 隔離感:外界から切り離された環境での孤立
- 監視体制:常に見張られている圧迫感
- 脱出困難:物理的にも社会的にも出ることの難しさ
- 権力構造:医師→看護師→患者の絶対的ヒエラルキー
2:精神状態の境界曖昧化演出
- 正常と異常:何が正常で何が病気なのかわからなくなる恐怖
- 診断の主観性:医師の判断一つで患者にされる不安
- 社会復帰の困難:一度「患者」になると元に戻れない絶望
- 記録の改竄:自分の過去や身元が書き換えられる恐怖
3:反転能力の恐怖演出
- 予測不可能:良くなるか死ぬかわからないギャンブル性
- 人格変化:治ったとしても別人になってしまう恐怖
- 選択の強制:反転を受けるか、精神病のままかの二択
- 成功の皮肉:治癒しても以前の自分を失う悲劇
4:自傷行為の連鎖演出
- 模倣自害:一人の自傷が他の患者に波及する
- 象徴的意味:片目を抉るという行為の宗教的含意
- 痛みの意味:肉体的苦痛による精神的解放への渇望
- 死への誘惑:反転の失敗リスクへの無謀な挑戦



精神病はセンシティブなので扱いが難しいです。あらかじめ探索者には保険を張っておくと安心な進行ができると思います!。
イラスト・ファンアート・素材紹介


- イラスト:MerianDenham様「Spawn of Yibb-Niggurath by MerianDenham on DeviantArt」


- 素材:9の隠れ家様「神話生物素材 イブ=ツトゥル SPLL:E195819 – 9の隠れ家 – BOOTH」
単品価格:200円
他の神話生物・魔導書との関連
【相関】
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夜鬼 従者 |
【関連魔導書】
- 『クタート・アクアディンゲン』
- 『星と血について』(ウイップル、1768年)
- 『古代ルーンの伝説』
- 『ナコト写本』
登場作品
- 「Ulthar and Beyond」(ハーバー)
- 「大いなる帰還」(ラムレイ)
- 「黒の召喚者」(ラムレイ)
- 「The Horror at Oakdeene」(ラムレイ)
- 「続・黒の召喚者」