
【完全版】ヴルトゥーム│登場作品・概要・シナリオ制作のヒントなどを完全網羅!※ネタバレ注意※
Vulthoom
目次
基本設定・概要
危険度: ★★★★★★★☆☆☆
本報告は、火星の支配者「植物なる神」として知られるヴルトゥームについての調査記録である。
ヴルトゥームは、植物と肉の特徴を併せ持つ特異な存在である。形態的特徴として、巨大な球根を中心に茎、つた、根が放射状に広がる姿を持ち、その巨大な幹からは多くの枝が分岐し、先端には妖精に似た奇怪な花を咲かせる。しかし、研究者たちの間では、ヴルトゥームの真の形態は人類の知覚できない高次元に存在する部分を含んでおり、我々の感覚で捉えられる姿はその一部に過ぎないとする見解が支持されている。
起源については、ヨグ=ソトースの子とする説とシュブ=ニグラスの子孫とする説が並立している。先史時代、ヴルトゥームはより強力な存在との抗争を逃れ、エーテル船で火星へと到来したとされる。膨大な科学技術知識を用いて火星の原住種族であるアイハイ族(人類に似た姿を持つ種族、現在は絶滅したと考えられる)を支配下に置いた。
特筆すべき特徴として、ヴルトゥームは1,000年の活動期と1,000年の休眠期を周期的に繰り返す生態を持つ。R.S.スカーウーンドの私家版『苦悶と譫妄』(ボストン、1785年)に記された魔術師スンダ=ロンの記録によれば、この周期的活動はヴルトゥームの火星到来後にアイハイ族にも適用され、崇拝者たちに長命性を付与したという。この能力は、ヴルトゥームが放出する特殊なフェロモンによってもたらされ、他種族の思考や行動様式に影響を与える可能性が指摘されている。
現在、ヴルトゥームは火星のラヴォルモスの廃都地下に存在する洞窟で休眠状態にあるとされる。物理的な顕現は不可能な状態にあるが、精神的な出現の可能性は否定されていない。また、1万年に一度、種さやを通じて自己増殖を行う可能性も指摘されているが、現在の地下での休眠状態を考慮すると、これらの種が火星表面や宇宙空間、地球に到達する可能性は極めて低いと考えられている。
火星でのヴルトゥーム崇拝は興味深い変遷を辿った。当初は征服者として畏怖されていたが、ラヴォルモスの地下洞窟に引きこもった後、その存在は徐々に伝説化し、多くのアイハイ族からは悪魔として認識されるようになった。しかし、下層階級の間では信仰が継続され、これらの信者たちは主との共眠と共覚醒を通じて不死に近い寿命を得たとされる。伝承によれば、覚醒時に信者たちは火星のみならず他世界へもヴルトゥーム崇拝を広めようと企図している。
【住処】
- 火星のラヴォルモス地下洞窟(休眠状態)
ゲーム上ステータス・能力・恩恵等
ステータス(7版)
STR | CON | SIZ | DEX |
150 | 375 | 425 | 40 |
POW | HP | MP | DB |
175 | 80 | 35 | +6D6 |
ビルド | 移動 | 正気度喪失 |
7 | 2 | 1D4/2D10 |
行動
- 攻撃回数:1D4+2回
- 近接戦闘:65%/1D6
- つかむ:対象をつかんで押さえ込む。次のラウンド以降、握りつぶして1D6のダメージを与える。もしくは引きずり込んで6D6のダメージを与える。抜け出すにはSTRかDEXでクリティカル成功する必要がある。
装甲
- なし。
- 通常の武器では最小のダメージしか与えられない。
- MPを1消費すると、HPを2回復できる。
- HPが0になれば黒く抜け殻のようになる。その後5D100年後に復活する。
魔術
- 呪文:能力「フェロモン」参照。
能力
- 優れた知覚:時空間を超えて、その場の出来事を見聞きすることができる。
- 甘美な声:ヴルトゥームに影響された者はこの存在の虜になる。
- フェロモン:距離に応じてその効果が強弱する。①記憶を曇らせる。②恐怖の注入。③心の雲。④支配。⑤植物に命令する。⑥精神的従属。⑦セイレーンの歌声。⑧動物に命令する。⑨夢の映像。
- 幻覚性の芳香:催眠効果のある匂いを放ち、影響されたものは幻覚を見る。※ガスマスクなどで無効化することができる、
恩恵
- 恩恵はなくヴルトゥームの種をもらうことがある。
シナリオ導入例・演出のヒント
原作「ヴルトゥーム」では
- ラヴァルモスの地下で長い眠りについている科学者として登場し、主人公たちを巧妙に騙して地球侵略への協力を要請する
- 地球侵略の協力の見返りとして事実上の不老不死となる薬を提供すると約束し、人間の欲望につけ込んだ
- 最終的に主人公が誘惑を断って抵抗したことで再び活動停止状態に追い込まれ、地球侵略の野望を阻止された

ヴルトゥーム自体はそこまで脅威的な見た目をしているわけではなく、幻覚を使って脅す小物感は可愛く感じました。
シナリオ導入例
1:火星探査遭遇型
- 火星探査ミッションや宇宙開発プロジェクトでラヴォルモス遺跡の調査を実施
- 探査チームが地下洞窟で巨大な植物状の構造物を発見
- 探索者は地球との通信が途絶えた探査チームの救援や調査継続のために火星へ派遣される
- 地下でヴルトゥームの休眠状態の姿を発見し、精神的な接触が始まる
- ヴルトゥームから地球への「科学技術提供」と引き換えに覚醒への協力を要請される
2:地球飛来型
- 隕石や宇宙塵と共にヴルトゥームの種が地球に到達
- 種から発芽した植物が異常な成長と影響力を示し始める
- 探索者は植物学的異常や周辺住民の行動変化の調査を開始
- 植物の成長と共にヴルトゥームの精神的影響が地球に拡散し始める
- 植物の完全な成長を阻止し、ヴルトゥームとの精神的接続を断つ必要がある

明確に地球を狙っている邪神で、1000年に1度しか活動ができません。火星が舞台のSFシナリオにして、科学の力バトルになるのは、クトゥルフ神話の中でも新鮮ではないでしょうかっ。
演出のヒント
1:植物と肉の混合形態演出
- 異質な質感対比:植物的な緑や木質部分と肉質的な赤い部分の不気味な組み合わせ
- 成長と腐敗の同時進行:新芽の成長と古い部分の腐敗が同時に起こる生理的嫌悪感
- 境界の曖昧さ:どこからが植物でどこからが動物なのかわからない不明確性
- 妖精花の異様さ:美しくも邪悪な印象を与える花の人面的特徴
2:1000年周期の壮大なスケール演出
- 時間感覚の麻痺:人間の時間概念を遥かに超える活動サイクルの提示
- 歴史との重複:人類文明の節目とヴルトゥームの活動期の不吉な一致
- 予測される覚醒:計算可能な覚醒時期による迫り来る脅威の緊迫感
- 過去の痕跡:前回の活動期の影響が現代にも残る歴史的連続性
3:フェロモンによる精神支配演出
- 無意識の影響:自覚のないまま思考や行動が変化していく恐怖
- 段階的洗脳:徐々に価値観や忠誠心が変化していく過程の描写
- 集団感染:一人から複数人へと影響が拡散していく様子
- 抵抗の困難さ:理性的に抵抗しようとしても生理的影響に勝てない無力感
4:不老長寿の誘惑と代償演出
- 共眠共覚醒の神秘性:主と信者の生命サイクル同期による超越的体験
- 時間の重荷:長すぎる寿命がもたらす精神的負担と孤独感
- 代償の段階的判明:最初は恩恵のみ、後から隠されていた代償が明らかになる
- 依存関係の形成:一度得た長寿を失うことへの恐怖による束縛



不老不死は人間の最大の欲望です。ヴルトゥームをロールプレイするときは、いかにこの不老不死を良いものにプレゼンできるかでエンディングが変わりそうです。
イラスト・ファンアート・素材紹介


- イラスト:EldritchArtworks様「Vulthoom – The Sleeper of Ravermos by EldritchArtworks on DeviantArt」


- 素材:醬散堂本店様「ヴルトゥーム立ち絵 – 醬散堂本店 – BOOTH」
単品価格:300円
他の神話生物・魔導書との関連
【相関】
【関連魔導書】
- 『苦悶と譫妄』(R.S.スカーウーンド、1785年)
- 『グラーキの黙示録』