【概要】
本資料は月棲獣(ムーン=ビースト)と呼ばれる存在についての調査報告である。
外見的特徴として、通常大きな灰色がかった白色の油まみれのような体をしており、体の容積を縮めたり引き伸ばしたりする能力を持つ。その形状はおおよそヒキガエルに似ており、鼻面の先端にはピンク色の触手の塊があるが、それ以外の感覚器官は確認されていない。しかし、その高い知性と徹底的な冷酷さがこの欠点を補っているとされる。
現在、主にドリームランドと呼ばれる異次元の月に広く分布していると考えられている。地球上には存在しないとされるが、現実の月の裏側に彼らの居留地が存在し、人類の観測から隠れ続けている可能性も指摘されている。アポロ11号の写真分析によってもこの可能性は排除されていない。
特筆すべきは、彼らの残虐な性質と独特の社会構造である。月棲獣はドリームランドにおいて知性を持つ奴隷を食料または労働力として広く取引している。彼らの奴隷は既知の宇宙のあらゆる場所の出身であるが、月が近いこともあり、主に人間が選ばれる傾向にある。
彼らは黒いガレー船に乗って宇宙、次元、時間を越えて旅するとされる。この船は空を飛ぶことができ、長い櫓で操船され、月棲獣は甲板の下に隠れている一方で、奴隷となったレンの男が甲板上に姿を見せるという特異な形態をとる。
食性に関しては、生きている生物のみを捕食し、その肉体と魂から特殊な滋養を抽出しているとされる。さらに、彼らは娯楽として拷問を行い、他の生物の苦しみから何らかの精神的・肉体的な恩恵を得ている可能性も指摘されている。
なお、同様の特徴を持つ生物との区別として、無形の落とし子は黒色であること、また外なる神の従者は月棲獣よりも形状が曖昧で手足の代わりに触手を持つことが挙げられる。