- 「エーリッヒ・ツァンの音楽」(ラヴクラフト)
【住処】
- アザトースの宮廷(恒常的な所在地)
- 一時的な宇宙各所への出現
本報告は、アザトースの宮廷において天球の音楽を奏でる、生きた音そのものとして存在する「調律」、トルネンブラについての調査記録である。
形態的特徴として、物理的な姿を持たない純粋な音として存在する。常に演奏を続け、波のように強弱を変化させながら自身を作り変え続ける。沈黙は即ち死であるとされ、絶え間ない音の生成が生命活動の本質とされる。
最も重要な役割は、アザトースの宮廷における天球の音楽の演奏である。『ネクロノミコン』によれば、アザトースの眠りを維持する存在の中で最も重要な地位を占めるとされる。初期には純粋な天球の音楽を奏でていたが、新たな聴衆に合わせて曲調を変化させ、メッセージの伝達、呪文の教示、生贄の受領などの機能を獲得したとされる。
その音楽の影響は人間の精神に対して破壊的である。聴取者を前後不覚にさせ、激しい感情の動揺や憤怒を引き起こし、記憶に残り続けることで多くの者を狂気に追い込む。人間による再現の試みは大惨事を招き、観客や演奏者の暴力や発狂を引き起こしている。ただし、極めて稀にこの外宇宙の音楽を理解し演奏できる者の存在が示唆されている。ヴィオル奏者のエーリッヒ・ツァンやキングスポートの隠遁音楽家がその例として挙げられる。
通常はアザトースの宮廷を離れることはないとされるが、稀少な地球への出現記録が存在する。『ナコト写本』によれば、先史時代に「偉大にして破壊的な音」をもたらし、ある種の魔術的結界を破壊して飛行するポリプを解放した。これにより、イスの偉大なる種族との戦争が引き起こされ、当時のイス人がほぼ絶滅に追い込まれたという。
現代的な懸念として、技術の発達により音声の記録や放送の可能性が増大している。全ての音を完全に捕捉することは困難とされるが、人間やミ=ゴによる部分的な記録・再生が実現した場合、極めて強力な兵器となる可能性が指摘されている。
【関連魔導書】
- 『ネクロノミコン』
- 『ナコト写本』
【相関】
従属/奉仕
- アザトース(宮廷における音楽の演奏者として)
敵対
- イスの偉大なる種族(過去の対立)
関連
- ミ=ゴ(音楽の記録可能性に関連)
【能力】
- 交響的存在…トルネンブラの曲は止まることがなく、聞き続けると精神に異常をきたす。
- 音波…建物を崩壊させたり、生物を傷つける音波を放つ。
- 音速…音の速さで動ける。
【恩恵】
- 霊感の調べ…恩恵を受けた者は、この世のものとは思えない曲を作曲できるようになる。
- 死体を目覚めさせる…曲を奏でている間、死体を目覚めさせることができる。
- 音の魔法…声だけでなく楽器でも呪文を唱えることができる。