【概要】
本報告は、「顔なき翼持つ者」「夜鬼の統治者」として知られるイェグ=ハについての調査記録である。
形態的特徴として、身の丈10フィート(約3メートル)の巨躯を持ち、コウモリのような小さな翼と、目も鼻もない顔を持つ二足歩行の怪物である。
この存在の起源については、イブ=ツトゥルの落とし子あるいは創造物であるとする説が『ネクロノミコン』に記されている。その本質については、下級のオールド・ワンとする説と、特別に大きな夜鬼の個体とする説が対立している。
最も詳細な歴史的記録として、紀元前128年のローマ軍団による報告書が残されている。それによれば、ブリテン島のハドリアヌスの長城で「顔なき怪物」との遭遇があり、「剣と魔法」による激戦の末、50人以上の死者を出して討ち取ったとされる。死体は部族民による復活を恐れ、長城付近の秘密の場所に埋葬された。ロリウス・ウルビクスの『国境の要塞』にもこの戦いの記録が残されている。
ローマ時代以前には、イギリスの様々な部族による崇拝の対象となっていた。ハドリアヌスの城壁近くの門を通してこの次元に進入したとされる。
近年、複数の探索者がイングランドとスコットランドの境界地帯でイェグ=ハの遺骸を探索しており、匿名の人物が発見に成功し、安全な納骨堂に移したとの噂がある。特に懸念されるのは、その骨が生命を取り戻し、新たな肉体を再生させる可能性である。タイタス・クロウは『国境の要塞』の記述を基に埋葬地点を特定し、髑髏と翼の骨を発掘したとされる。
関係性について、イブ=ツトゥルとの明白な繋がりの他、ノーデンスと同盟関係にあり、その配下である夜鬼に命令を下すとされる(『内なる空虚の福音』ハークネス、1793年)。また、ニャルラトテップに仕えているとの説もあるが、これを裏付ける証拠は見つかっていない。
ヘスティア・ロックスビーの『高等要素の調和』は、現在でもドリームランドにおいてイェグ=ハの影響力が健在であると記している。