- 「Zoth-Ommog」(カーター)
- 「The Inhabitant of the Lake」(キャンベル)
- 「ヴルトゥーム」(C.A.スミス)
【住処】
- 火星のラヴォルモス地下洞窟(休眠状態)
本報告は、火星の支配者「植物なる神」として知られるヴルトゥームについての調査記録である。
ヴルトゥームは、植物と肉の特徴を併せ持つ特異な存在である。形態的特徴として、巨大な球根を中心に茎、つた、根が放射状に広がる姿を持ち、その巨大な幹からは多くの枝が分岐し、先端には妖精に似た奇怪な花を咲かせる。しかし、研究者たちの間では、ヴルトゥームの真の形態は人類の知覚できない高次元に存在する部分を含んでおり、我々の感覚で捉えられる姿はその一部に過ぎないとする見解が支持されている。
起源については、ヨグ=ソトースの子とする説とシュブ=ニグラスの子孫とする説が並立している。先史時代、ヴルトゥームはより強力な存在との抗争を逃れ、エーテル船で火星へと到来したとされる。膨大な科学技術知識を用いて火星の原住種族であるアイハイ族(人類に似た姿を持つ種族、現在は絶滅したと考えられる)を支配下に置いた。
特筆すべき特徴として、ヴルトゥームは1,000年の活動期と1,000年の休眠期を周期的に繰り返す生態を持つ。R.S.スカーウーンドの私家版『苦悶と譫妄』(ボストン、1785年)に記された魔術師スンダ=ロンの記録によれば、この周期的活動はヴルトゥームの火星到来後にアイハイ族にも適用され、崇拝者たちに長命性を付与したという。この能力は、ヴルトゥームが放出する特殊なフェロモンによってもたらされ、他種族の思考や行動様式に影響を与える可能性が指摘されている。
現在、ヴルトゥームは火星のラヴォルモスの廃都地下に存在する洞窟で休眠状態にあるとされる。物理的な顕現は不可能な状態にあるが、精神的な出現の可能性は否定されていない。また、1万年に一度、種さやを通じて自己増殖を行う可能性も指摘されているが、現在の地下での休眠状態を考慮すると、これらの種が火星表面や宇宙空間、地球に到達する可能性は極めて低いと考えられている。
火星でのヴルトゥーム崇拝は興味深い変遷を辿った。当初は征服者として畏怖されていたが、ラヴォルモスの地下洞窟に引きこもった後、その存在は徐々に伝説化し、多くのアイハイ族からは悪魔として認識されるようになった。しかし、下層階級の間では信仰が継続され、これらの信者たちは主との共眠と共覚醒を通じて不死に近い寿命を得たとされる。伝承によれば、覚醒時に信者たちは火星のみならず他世界へもヴルトゥーム崇拝を広めようと企図している。
【関連魔導書】
- 『苦悶と譫妄』(R.S.スカーウーンド、1785年)
- 『グラーキの黙示録』
【相関】
- 血縁:ヨグ=ソトース(父説)、シュブ=ニグラス(先祖説)
- 支配:アイハイ族(火星原住民)、ヴルトゥーム・カルト(信者)
- 対立:何らかのより強力な存在(火星移住の原因)
【能力】
- 優れた知覚…時空間を超えて、その場の出来事を見聞きすることができる。
- 甘美な声…ヴルトゥームに影響された者はこの存在の虜になる。
- フェロモン…距離に応じてその効果が強弱する。①記憶を曇らせる。②恐怖の注入。③心の雲。④支配。⑤植物に命令する。⑥精神的従属。⑦セイレーンの歌声。⑧動物に命令する。⑨夢の映像。
- 幻覚性の芳香…催眠効果のある匂いを放ち、影響されたものは幻覚を見る。※ガスマスクなどで無効化することができる、
【恩恵】
- 恩恵はなくヴルトゥームの種をもらうことがある。