【クトゥルフ神話TRPG】マイナーだけど大活躍!シナリオに登場させやすいクリーチャー5選
目次
前置き
「シナリオにクリーチャーを出したいけど、どれを選べばいいかわからない…」
クトゥルフTRPGのシナリオ制作で、こんな悩みを抱えていませんか?
邪神は強すぎて扱いが難しい、かといって食屍鬼やディープワンは使い古されている。もっとシナリオ映えする、面白いクリーチャーはないだろうか?
そんなKPのために、この記事では登場させやすくて演出が映える、マイナークリーチャー5選をお届けします!
どれも個性的で、「このクリーチャー初めて見た!」とPLを驚かせられる存在ばかり。しかも、シナリオへの組み込み方次第で、宇宙冒険、刑事モノ、心理ホラー、社会派ドラマなど、様々なジャンルのシナリオが作れます。
各クリーチャについて、以下の流れで解説していきます:
- 基本情報:見た目、生息地、どんな能力を持っているか
- シナリオの向き不向き:どんな雰囲気のシナリオに合うか
- 序盤・中盤・終盤の使い方:具体的なシナリオ例と演出のコツ
「このクリーチャー、使ってみたい!」と思えるような、実践的なヒントをたっぷり詰め込みました。紹介する内容はそのままシナリオに採用して構いません!
本編
1.ビヤーキー

基本情報
- 外見:コウモリ、鳥、モグラ、そして腐敗した人間の特徴を併せ持つ異形の存在。通常の物質で構成されているため、銃や刀などの一般的な武器でダメージを与えることができる。腹部には「フーン」と呼ばれる特殊な器官があり、これが星間移動の鍵となっている。
- 所在:恒常的な地球の拠点は持たず、主な生息域は星間空間。
ユゴスその他の異世界との往来が確認されており、召喚されると星間空間から呼び出し者の元へ飛来する。 - 特徴:高い知能と狡猾さを持ち、一部の個体は呪文を使用できる。
最も特徴的な能力は星間移動能力で、フーン器官を用いて空間を折り畳み、二地点間をほぼ瞬間的に移動する。乗り手を星々の間で運ぶことができるが、乗客は宇宙空間での生存のため「黄金の蜂蜜酒」の摂取が必要となる。 - その他:名状し難きものハスターに仕える星間種族。
アルデバランが地平線上に昇る夜に、特殊な笛を用いて定められた詠唱(「イア!イア!ハスター!…」)を行うことで召喚できる。通常は旧き印の使用も必要。ハスターの儀式への参加と星間移動の乗物としての使役が主な用途。シュリュズベリイ博士が遠隔地への移動手段やクトゥルー勢力からの逃亡手段として利用した記録がある。
こんなシナリオにおすすめ!
#宇宙ホラー #異世界 #召喚 #星間移動 #天文学 #ルート分岐 #戦闘可 #探索重視 #研究者向け #クリーチャーとの共闘 #図書館 #呪文使用

使い方のポイント
【序盤での使い方】
ビヤーキーは「星間を飛ぶタクシー」のような存在です。クトゥルフ神話TRPGでは珍しい、実用的な移動手段として使えるクリーチャーです!
シナリオ導入では、天文学者や考古学者が失踪する事件から始めるのがわかりやすそうです。
例えば:
- 大学教授が自宅の屋上から謎の飛行生物と共に消えた
- 古代遺跡の発掘現場で、夜空に向かって奇妙な笛の音が響いていた
- アルデバランが見える夜にだけ、特定の場所で不気味な羽ばたき音が聞こえる
探索者の職業も幅広く対応できるのも特徴的:
- 研究者:失踪した同僚の調査として
- 警察官:連続失踪事件の捜査として
- オカルティスト:星間移動の伝説を追って
- ジャーナリスト:UFO目撃情報の取材として
【中盤での使い方】
中盤では、ビヤーキーの二面性を活かしましょう。
パターン1:敵として
邪魔な探索者を始末しようとします。廃墟や研究施設を舞台に、夜空から襲来するビヤーキーとの戦闘シーンは迫力がありそうです!
重要なのは、ビヤーキーは物理的に倒せるという点ですっ。銃火器や近接武器が有効なので、戦闘系の探索者が活躍できます。ただし、複数体で襲ってくると非常に危険です。
パターン2:乗り物として
召喚方法を発見した探索者が、緊急脱出手段としてビヤーキーを利用する展開も面白そうですっ。
例えば:
- 異世界に取り残された仲間を救出するため
- クトゥルーの眷属から逃れるため
- 時間制限のある儀式を阻止するため、遠方へ急行する必要がある
この場合、「黄金の蜂蜜酒」の入手が重要なサブクエストになります。蜂蜜酒なしで星間移動を試みると…宇宙空間での窒息と凍結、間違いなく死にます。
【終盤での使い方】
終盤では、シナリオの目標に応じた使い分けがポイントです。
脱出型シナリオの場合:ビヤーキーは最高の逃走手段です。敵の本拠地から脱出する際、召喚に成功すれば一気に安全地帯に行けます。
ただし召喚には条件があります:
- アルデバランが見える夜であること
- 特殊な笛(探索で入手)が必要
- 呪文の詠唱に成功すること
アルデバランが見える夜が一番難しく見えそうですが、逆に言うと「タイムリミット」を用意できるともいます!
次の日にはアルデバランは過ぎてしまうから、今日までにケリをつけないといけないなど、緊迫感も煽れそうです。
戦闘型シナリオの場合:ビヤーキーの群れとの最終決戦も盛り上がります。物理攻撃が有効なので、探索者たちの連携プレイが試されます。
<射撃>での迎撃、<隠密>での奇襲など、多彩な戦術が可能です。
※注意点:ビヤーキーを安易に「便利な乗り物」として扱うのは危険です。彼らはハスターに仕える存在であり、使役には常にリスクが伴います。召喚の代償として、ハスターの注意を引いてしまう可能性も示唆した方が易しいかもっ。
また、星間移動中に何が起こるかは、KP次第です。宇宙空間で未知との遭遇、時間の歪み、異次元の一瞥…無事に目的地に着くまで気が抜けません!






シュリュズベリイ博士のように、ビヤーキーを上手く使いこなせる探索者は、神話の深淵に一歩踏み込んだ存在になりそうです。
2.あの世からの漁夫


基本情報
- 外見:時々シャンタク鳥や先史時代の翼竜類と混同されることがあるが、これは全く独立した種である。具体的な外見の詳細は資料によって異なるが、飛行能力を持つ異形の姿をしている。
- 所在:星々の間やそのかなたの空間から呼び寄せられる存在。
探検家スロウェンワイトによれば、ジンバブエの遺跡を造った宇宙からの生物であり、かつて恒星間の大帝国を持っていたとされる。
ジンバブエの都市はその単なる前哨地に過ぎないという見解もある。現地の人々はこれらの存在に関連する場所を危険視し、可能な限り避けようとしている。 - 特殊能力:最も特異な能力は「不浄な似姿」である。
人間は漁夫の芸術的表現(彫像、絵画など)から悪影響を受けやすい。この似姿を見たり触れたりした者は悪夢に苦しめられ、精神的な影響を受ける。
被影響者は周期的に鬱な状態になり、周囲の出来事に気づかず自己防衛も不可能になる。この影響は似姿が破壊されるか、適切な精神的治療を受けない限り継続し、治療後も再び似姿を見ることで効果が復活する。 - その他:現在、グロス=ゴルカ(グレート・オールド・ワンの一員)に仕える存在として広く認識されている。時に神の代理として行動し、人間の生け贄を受け入れ、その主神の意志を推し量る役割を担っている。
グロス=ゴルカのカルティストたちは彼らを神の意志の顕現と見なしている。帰属に関しては諸説あり、ツァトゥグァとクトゥルフに仕えているという説も存在する。シャンタク鳥であるという見解もあるが、シャンタク鳥は通常無知性でドリームランドにのみ棲むとされており、区別されるべき存在である。
こんなシナリオにおすすめ!
#心理ホラー #悪夢 #呪い #芸術 #精神汚染 #美術館 #遺跡 #絵画 #トラウマ #探索重視 #戦闘可 #現代風 #ドリームランド #アーティファクト






使い方のポイント
【序盤での使い方】
あの世からの漁夫は、芸術作品を通じた呪いという独特な恐怖を演出できるクリーチャーです。最大の特徴は、本体だけでなく、彼らを描いた絵画や彫刻を見ただけでも悪夢に悩まされるという点です。
現代風のシナリオ導入として、呪物YouTuber企画とかが作れそうです!
有名なYouTuberが「特級呪物を見てみた」という動画で、あの世からの漁夫(もしくは信仰する邪神グロス=ゴルカ)の芸術作品を撮影。その後、本当に悪夢に悩まされることになる…という展開です。
現代でも特級呪物の動画は人気コンテンツですし、PLにも想像しやすい設定ですっ。
シナリオの舞台は「裏」美術館にしてもよさそうです。
曰く付きの呪物コレクションなども面白いでしょう。これなら探索者の職業も幅広く対応できます:
- オカルト研究家:呪物の真相を追って
- 博物館のスタッフ:所蔵品の謎を調査
- 警察:連続悪夢事件の捜査として
- 医者:原因不明の睡眠障害患者の治療
- YouTuber:呪物検証企画として
さらに、探索者の中に既に芸術作品を見て悩んでいる人物がいるというハンドアウトを用意しましょうっ。こうすると探索者同士の関係値が自然に出来上がります。
「友人が原因不明の悪夢に苦しんでいる」「同僚が精神的におかしくなっている」など。
序盤は全員疑心暗鬼から始まります。「呪いなんて信じない」「ただの偶然だ」「精神的なものでは?」と、オカルトを否定する空気を演出しましょう。
【中盤での使い方】
中盤から状況が深刻化します。悪夢の影響が強まり、探索者たちは現実と夢の境界が曖昧になってきます。
ここでは芸術作品の破壊を試みる探索者が出てくるでしょう。絵画を燃やす、彫像を砕く…しかし、破壊しても悪夢は止まらない。なぜなら、真の原因は芸術作品ではなく、その元となった存在そのものだからです。
SAN値減少が多くなるので、狂い始める探索者も出てきてると思います。
周期的に鬱な状態になり、周囲の出来事に気づかず、自己防衛も不可能になる。この演出はじわじわとした恐怖になります。
探索が進むと、あの世からの漁夫と信仰する邪神グロス=ゴルカの関係性が明らかになります。両者は同じような能力を持っており、見ただけで悪夢に悩まされます。
ここで重要なのが難易度調整のしやすさ!
- 高難易度:グロス=ゴルカ本体を登場させる(邪神クラスで非常に強力)
- 中難易度:あの世からの漁夫を登場させる
- 低難易度:芸術作品のみで、本体は言及されるだけ
シナリオに戦闘を入れたいかどうか、グロス=ゴルカを登場させるかどうかで、難易度が大きく変えられそうですっ。
【終盤での使い方】
終盤は、悪夢の中での決着という独特な展開が非常に映えそうです!
通常であれば数日から数週間で悪夢は自然に終わりますが、それを待つか、もっと早くに解決に向かうかは探索者次第です。
解決方法のパターン:
パターン1:本体との対決
真の原因である本体(あの世からの漁夫、またはグロス=ゴルカ)を現実世界で退治します。戦闘系の探索者が活躍できる王道の展開です。
パターン2:悪夢の中での対決
これが最も映える展開です!
SF映画「パプリカ」のように、夢の中に干渉できる機械を使う、あるいはドリームランドに入っていくという設定です。
悪夢の中が舞台というのは珍しく、絶対面白くなります!
夢の中では特殊技能、<夢見>や<夢の知識>といった技能が重要になります。探索者の記憶や恐怖が具現化する演出もあるとなおよしっ。
パターン3:芸術作品の完全破壊
元となる芸術作品だけでなく、その複製や写真、データまで全て破壊する。情報化社会では困難なミッションですが、やりがいがあります。
※注意点:あの世からの漁夫は単体で活動する種族というよりも、グロス=ゴルカと一緒に登場させることで真価を発揮します。ただし、グロス=ゴルカは邪神クラスで強力なので、言及されるだけでも十分な脅威となります。
また、探索者が芸術作品を見てしまった場合の悪夢描写は丁寧に行いましょう。単なるSAN値チェックで終わらせず、具体的な悪夢の内容を語ることで、最後の展開に活用できます。






「裏」美術館という舞台設定、YouTuber企画という現代的な導入、悪夢の中での決着という斬新な展開…。
あの世からの漁夫は、従来のクトゥルフシナリオとは一味違った、ホラーを楽しめるクリーチャーです。
3.炎の吸血鬼


基本情報
- 外見:知性を持つガスやプラズマのように見え、無数の小さな炎または赤い稲妻のような閃光として現れる。時折、特に大気圏に入る際に集合して大きな炎の球を形成し、その後個々に分散することもある。
- 所在:みなみのうお座にあるフォーマルハウトあるいはその星系に生息している。
単独で地球に現れることは稀で、通常は召喚されて特定の任務を遂行する場合が多い。正しく従属させた場合に限り地球での活動が可能となる。
中には支配者フサッグァと共に小惑星クティンガに棲み、エネルギーを引き出せる知的生命体を探索しているとされる。 - 特殊能力:宇宙空間や惑星の大気中でも自由に移動できるが、水中を移動することはできず、水は彼らを殺すことができる。攻撃は真紅の稲妻のひらめきで始まり、犠牲者は自然発生的な人間燃焼が起きたかのように破壊される。この攻撃は生存に必要なエネルギーを提供するだけでなく、犠牲者の記憶をすべて奪取する。
集団記憶を持ち、一匹が得た犠牲者の知識はすべての炎の精が共有できる。集合状態では建物を攻撃し、ガラスを爆発させ、大規模な火災を引き起こすことが可能。
複数の炎の吸血鬼による狂乱的な踊りは人間や特定の動物に催眠効果を持ち、影響下にある者は目前の火の危険に気づかなくなり、動けない状態で炎を凝視し続ける。トランス状態の犠牲者は自分に火がついても気づかず、覚醒しない限り焼死する恐れがあるが、冷たい水をかけることで即座に回復させることが可能。 - その他:クトゥグァに奉仕する存在として知られ、クトゥグァが召喚されるときにはその護衛として多数が地球に来訪する。召喚されると、いかなる燃焼性の物質をも発火させようとする。
フサッグァとその手先は、炎の吸血鬼が奪取した犠牲者の記憶情報を利用して、世界を征服しエネルギー源とするための戦略を立てているという。
なお、元々はワンドレイの作品においてフサッグァの手下として登場したが、”クトゥルフ神話TRPG”ではダーレスの「闇に棲みつくもの」で言及されたクトゥグァの従者という設定が採用されている。
こんなシナリオにおすすめ!
#刑事モノ #連続事件 #放火 #炎 #ミステリー #現代風 #警察 #催眠 #記憶喪失 #二重事件 #探索重視 #戦闘可 #段階的展開






使い方のポイント
【序盤での使い方】
炎の吸血鬼は、連続放火事件という現代的な事件を通じて、じわじわと恐怖を演出できるクリーチャーです!
このクリーチャーも奉仕種族なので、信仰先の邪神であるクトゥグアもしくはフサッグァと一緒に登場させるといいでしょう。
特にフサッグァとの相性が抜群です!
炎の吸血鬼は爆発や催眠効果を持ち、フサッグァは記憶を燃やす(記憶を消す)能力を持っています。この組み合わせをシナリオに落とし込むと、非常に面白い展開が作れます。
刑事モノの二重オチとして例えます。
ある時から、街で連続放火事件が発生します。警察官である探索者たちはこの事件の犯人を追うことになります。
序盤は情報集めです。火事が起きている家の傾向を調べると、ある共通点が浮かび上がります:
- 火事の原因は全て家の中にある
- コンセント、コンロ、ストーブなど、要因は様々だが全て家の中
- 必ず一人の住人が逃げ遅れている
逃げ遅れた人は病院に運ばれ、命は助かります。しかし目を覚ますと、一部の記憶がなくなっていることがわかります。火事の前後の記憶が曖昧で、「気づいたら火に囲まれていた」としか言えないのです。
探索者の職業は以下が適しています:
- 警察官/刑事:事件の捜査として
- 消防士:現場検証の立場から
- 保険調査員:不審な火災保険請求の調査
- ジャーナリスト:連続放火事件の取材
【中盤での使い方】
中盤で、衝撃の事実が判明します。家主自身が放火の犯人だったのです!
各家庭の火事を詳しく調べると、全て家主が不注意で火を出したように見えます。防犯カメラや目撃証言を集めても、外部からの侵入者はいません。
ここで上層部は結論を出します:「連続放火犯はいない。各家庭での不注意な火事が偶然続いただけ。」
事件は打ち切りになります。しかし、探索者たちは違和感を覚えるはずです:
- なぜこのタイミングで集中的に?
- なぜ全員が記憶を失っている?
- なぜ逃げ遅れるほど気づかなかった?
納得できない探索者たちは、個人的に調べることになるでしょう。ここから本当の調査が始まります。
さらに調査を進めると、次に放火が起こりそうな家を見つけます。「家主の様子がおかしい」という通報があったり、同じパターンの兆候が見られたり、理由は適当につけちゃいましょうっ。
夜、その家を監視することにします。すると…
深夜、家主が夢遊病のようにふらふらと起き上がり、コンロに火をつけようとします。その周囲には、赤い稲妻のような小さな炎が踊っているのが見えます。
炎の吸血鬼は催眠効果で家主を操り、火がつくような行動をとらせていたのです。真犯人は神話生物だったと判明する瞬間です!
探索者が介入すれば、放火を未然に防ぐことができます。炎の吸血鬼との初戦闘です。水が弱点なので、消火器や水道を使えば撃退できるでしょう。
【終盤での使い方】
終盤は、炎の吸血鬼とフサッグァの真の目的が明らかになります。
なぜ連続放火を起こしていたのか?それはフサッグァの復活のためです。
炎の吸血鬼は生贄となる人間を燃やし、そのエネルギーをフサッグァに捧げていました。事件が進むにつれ、フサッグァが少しずつ顕現し、大きくなっています。
被害者の記憶を消していたのは、この小さいサイズのフサッグァです。事件が難航させるため、記憶を燃やしていたとかでしょう。
最終決戦は、まだ小さいフサッグァとの戦いです。完全に姿を現したフサッグァは強大すぎて勝てませんが、まだ復活途中の小さいサイズなら倒せそうですっ。
解決方法のパターン:
パターン1:水攻め
フサッグァも炎の吸血鬼も水が弱点です。消火器、スプリンクラー、消防車の放水など、大量の水で攻撃すれば倒せます。シンプルですが難易度は易しめです。
パターン2:炎の吸血鬼の撃退
フサッグァ本体ではなく、手下の炎の吸血鬼たちを全滅させます。生贄を捧げる者がいなくなれば、復活は失敗します。複数体との連戦になりますが、水を準備しておけば対処可能です。
※注意点:炎の吸血鬼の催眠効果は非常に危険です。狂乱的な踊りを見てしまうと、探索者も炎を凝視し続けてしまいます。冷たい水をかけることで回復するので、仲間との連携が重要です。
また、炎の吸血鬼は集団で行動することが多いです。一匹だけでなく、複数体が同時に現れる可能性も示唆しておきましょう。集合して大きな炎の球を形成し、建物を攻撃することもあります。






刑事モノという馴染みやすいジャンル、段階的に真相が明らかになるミステリー要素、水という明確な弱点…炎の吸血鬼は、現代日本を舞台にした本格的な神話事件シナリオに最適なクリーチャーです!
4.星の吸血鬼


基本情報
- 外見:通常は不可視の状態にあり、その存在は気味の悪いクスクス笑いのような音によってのみ察知できる。ただし、摂食中および摂食後は、吸血した血液によって少なくとも6ラウンドの間は可視化する。この可視化の持続時間は、摂取した血液量と、血液が透明な物質へと代謝されるまでの時間によって変動する。
- 所在:深宇宙を浮遊する怪物で、地球への飛来や召喚による出現が確認されている。十分な獲物が存在する地域には留まる傾向があるが、そうでない場合は満足な休息の後に宇宙空間へ帰還する。
- 特殊能力:最大の特徴は不可視性である。通常、星の吸血鬼の姿は透明で見ることができない。
獣じみた飢餓状態にある個体は獲物を狩って血液を摂取し、その後休息をとる。正しい方法で従属させることができれば制御下に置くことが可能とされるが、その血への渇望を満たさなければ制御が困難となり、召喚者に対して攻撃的となる危険性がある。 - その他:「深宇宙の渇きし者」「見えざる血に飢えしもの」として知られる空中吸血鬼。クトゥルフ神話の神々との関連性については不明な点が多く、現在の研究では独立した存在として自身の目的のために活動していると考えられている。
こんなシナリオにおすすめ!
#王道ホラー #不可視 #吸血 #廃病院 #心霊スポット #初心者向け #技能活用 #戦闘重視 #探索重視 #閉鎖空間 #救出 #宇宙






使い方のポイント
【序盤での使い方】
星の吸血鬼の一番の特徴は完全な透明という点です!
また、独立種族なので他の邪神と絡みがなく、単体で出すことができます。
透明な状態から人間を襲い血を吸う…その結果、宙に星の吸血鬼の形をした血液が浮いているという、極めて不気味な光景が生まれます。このホラー演出に特化した神話生物です!
シナリオは異常な失血死事件から始めましょう。
街で謎の死体が発見されます。死因は失血死ですが、致命的な傷はなく、犯人の痕跡も一切ありません。犯人はもちろん星の吸血鬼です。透明かつ浮遊しているため、痕跡が見つからないまま事件が迷宮入りしそうになります。
ただし、全く情報がないのは難易度が上がりすぎるので、技能を使って少し情報は与えてもいいでしょう。
例えば:
- <交渉>や<説得>で、たまたま事件を目撃した人と会話ができる
→「空中に浮かぶ赤い生物を見た気がする」という曖昧な証言 - <図書館>で「見えざるもの」という都市伝説を発見
この時点では、探索者は事件の詳細を知るだけで、まだ直接的には関わりません。
次に舞台を廃病院に移します。
星の吸血鬼は見えませんが、くすくすと笑っているのも特徴的です。「廃病院から不気味な笑い声が聞こえる」という書き込みがSNSで話題になります。心霊スポットとして注目を集めるでしょう。
探索者たちは「他人事」と思っていた矢先、友人から緊急連絡が入ります。興味本位でその廃病院に向かった友人が、「何者かに追われている気がする」「助けて」と言ってきます。
これで自然な形で事件に巻き込まれます。友人を助けるために、廃病院へ向かうことになりますっ。
【中盤での使い方】
ここから舞台は廃病院です。ただでさえ怖い環境、そのうえで見えない敵がいます。
探索者が徘徊すると、不気味な笑い声が聞こえてきます。<聞き耳>で方向を特定できるかもしれません。
廊下を進むと、何もないはずの空間から風が吹いたような感覚、急に寒気を感じるなど、「何かいる」という気配を演出するといいでしょうっ。
ようやく友人を見つけますが、友人は怪我を負っています。聞くところによると、「何者かに掴まれて血を吸われた」と言います。近くにあった武器(パイプ椅子や木の棒など)で抵抗したため、なんとか一命は取り留めたとのこと。
ここで重要な変化が起きます。友人の血を少し吸ったことで、星の吸血鬼の一部が可視化します!
不気味な笑い声、そして宙に浮く少量の血液…それが星の吸血鬼の姿です。完全には見えませんが、血液の輪郭でおぼろげに形が分かります。
探索者はこれらを頼りに星の吸血鬼を追うことになります。
<目星>で血液の動きを追跡し、<聞き耳>で笑い声の位置を特定します。<追跡>技能も有効でしょう。
【終盤での使い方】
終盤は星の吸血鬼との対決です。ここで戦闘をさせて退治するか、呪文で退散させるかは製作者次第です!
ただし、ここまで星の吸血鬼の詳しい情報を渡す機会がないと思うので、最後まで何も知らないまま戦闘で退治させるのがいいかもしれません。正体不明の恐怖のまま決着をつける、というホラーらしい展開です。
解決方法のパターン:
パターン1:物理攻撃での撃退
見えない敵ですが、血液の位置で居場所が分かります。銃や近接武器で攻撃可能です。<目星>で位置を特定し、<射撃>や<近接戦闘>で攻撃します。完全には見えないため命中判定に-20%のペナルティを与えるとかで難易度調整も可能です。
パターン2:環境を利用した戦術
廃病院には粉塵や埃が舞っています。消火器の粉末を撒く、水をかけるなどして、星の吸血鬼の輪郭を浮かび上がらせることができます。<アイデア>ロールでこの戦術を思いつかせてもいいでしょう。
パターン3:逃走
必ずしも倒す必要はありません。友人を連れて廃病院から脱出すれば、星の吸血鬼は追ってこない可能性があります。<隠れる>や<忍び歩き>で気配を消しながら逃げる緊張感のある展開です。
このクリーチャーの最大の魅力:星の吸血鬼がシナリオ向きなところは、探索者の技能が幅広く活きる点です!
- <目星>:血液の位置を探す
- <聞き耳>:笑い声から位置を特定
- <追跡>:移動経路を予測
- <戦闘技能>:直接攻撃
- <交渉>/<説得>:序盤の情報収集
- <図書館>:伝説の調査
- <応急手当>/<医学>:友人の治療
クトゥルフ神話シナリオの中でも、技能がたくさん使えて戦闘もあるため、初心者向けにおすすめです!
注意点:透明状態からの闇討ちは非常に強力です。探索者にいきなり襲いかかると、一方的に1人は確実に殺せてしまいます。
そのため、最初の犠牲者(友人)を出すことで、探索者には「何かいる」という警戒をさせましょう。完全な奇襲は避け、笑い声や気配で存在を示唆することで、難易度を調整できます。






廃病院という閉鎖空間、見えない敵、宙に浮く血液…星の吸血鬼は、王道のホラー演出と戦闘の緊張感を両立できる、初心者KPにも扱いやすいクリーチャーです!
5.チャコタ


基本情報
- 外見:複数の人間の顔で構成される恐るべき存在。
各々の顔は深い苦悩を表現しており、すすり泣き、叫び声、泣き叫びなど、大きな悲しみや怒りの感情を絶え間なく表出する。捕食した犠牲者の顔は摂取から約2時間後に体表に出現し、犠牲者の数に明確な上限は存在しないため、体躯は継続的に増大していく。 - 所在:カルトによって、主に生贄の「祭壇」または守護者として、逃走不可能な穴に封じ込められて運用される。移動能力は限定的で、特に傾斜地の昇行が不可能という特徴を持つ。
- 特殊能力:顔の数に比例して強度が増加する。顔1つにつき、筋力(STR)、体格(SIZ)、体力(CON)、精神力(POW)が5ポイントずつ上昇する。一方、敏捷性(DEX)は常に15、移動速度は4で固定されている。複数の顔による噛みつきと捕食により獲物を殺害する。
チャコタの泣き声を聞いた者は正気度を失う。知人の顔を認識した場合、目撃者の精神に特に重大な影響を及ぼす。 - その他:この存在の創造には特異な儀式が必要とされる。自発的な生贄の志願者が必要不可欠で、その者は魔術的儀式により消化され、その顔が新生するクリーチャーの最初の顔となる。創造直後は給餌が必要だが、やがて自力での捕食を開始する。
こんなシナリオにおすすめ!
#バッドエンド #救いなし #重厚 #社会派 #現代社会問題 #SNS #カルト #ジレンマ #選択 #人間の闇 #生理的嫌悪感 #トラウマ #潜入 #戦闘可 #探索重視 #胸糞






使い方のポイント
【序盤での使い方】
チャコタは見た目がとにかく奇抜です。イモムシのような見た目ですが、身体には無数の「人の顔」が付いていますっ。これはチャコタが捕食した人間の顔です。
それぞれが苦悶の表情を浮かべているため、ここに知り合いなんぞがいれば邪神ばりにSAN値を削るシナリオになります!
また、独立種族なので他の邪神と絡みがなく、単体で出せます。
シナリオは自殺志願者を集める謎の教団から始まります。
現代のSNSでは、家出をしている子や、自殺を仄めかす子などに優しく声をかけて、保護しようとする大人の話を聞きます。現代風らしいシナリオになりそうです。
この大人の正体が教団の一味で、彼らはそういう命を粗末にする子を集めてチャコタに捧げていたのです。
ここで重要なのは、チャコタは邪神ではないため、信仰がそもそもおかしいことと、信仰したところで恩恵もありません。つまりチャコタに捧げることに何の意味もないのです。ただただ胸糞の悪い行為というだけです!
探索者の設定:
探索者は二つのタイプに分けます。
探索者A:病んでいる人物
学生ならいじめや家庭の圧力、社会人なら仕事や人間関係の悩みで、鬱になり命を投げ出そうとしています。そして、それをSNSに投稿してしまいます。
その投稿を見た教団からメッセージが飛んできます。そこには優しい言葉で悩みを解決してくれるとありました。
どうせ投げ出す命、最後の藁にも縋る気持ちなら、ついていくかもしれません。ついていくとそこには教団のものがいます。彼の洗脳的な話を聞き、探索者はとうとう騙されてしまいます。そうしてチャコタを監禁している場所に連れて行かれることになるでしょう。
探索者B:事件を調査する人物
事件を調査している人でもいいし、ただ巻き込まれただけの人でも構いません。
例えば、自分の子供が帰ってこないと悩んでいる親がいます。精神的に参っている親が、ある時、ある施設で息子の顔を見かけた気がすると言います。これは実際はチャコタに既に食べられて表面に顔が浮き出た息子の顔を見たのです。
施設はチャコタを監禁している場所です。一般人が立ち寄れるような場所がいいので、表向きは福祉施設として本当に機能させます。
親が息子かと思って見に行くと、違うことがわかります。これはチャコタを連れていた教団に、あしらわれる感じがいいかもしれません。
この一連を探索者Bは相談されます。施設の話を聞いて、調査に行くという動機ができます!
【中盤での使い方】
探索者Bが施設を見に行くと、施設には教団のメンバーがいて、そして病んでいる方の探索者Aもいます。
こっそりあとをつけると、チャコタを見ることになります。無数の人間の顔が苦悶の表情を浮かべた巨大なイモムシ…このままでは探索者Aが犠牲になるとわかり、助け出すことになります。
ここで選択が生まれます:
- その場で対峙する:戦闘有、教団員もいるため勝ち目はない
- 一度逃げ出す:戦闘無
施設から逃げ出した後、探索者AとBは事件をどう解決させるか考えることになります。
ジレンマの発生:
ここで探索者たちは重大なジレンマに直面します。
施設は表向きはちゃんと経営されています。つまり、本当に困っている利用者もいるのです。教団員を襲えば、利用者は保護されるでしょうか?しかし放っておくと、チャコタの犠牲者は増えます。
施設を機能不全にするというジレンマと、チャコタの被害を抑えるという天秤です。
さらに、チャコタの表面には人間の顔が浮かび上がっています。チャコタを討伐することに躊躇いがあるかもしれません。あの顔の人たちは、まだ生きているのでしょうか?
警察は動いてくれません:
- 「施設で変な生物を見た」では相手にされない
- 証拠がない
- 施設は正式に運営されている福祉施設
- 教団員を襲えば、探索者が犯罪者になる
探索者は自身で解決を目指すか、逃げ出すかの選択を迫られます!
【終盤での使い方】
チャコタを討伐すると決めた場合、慎重に行動する必要があります。
潜入作戦:
- 教団員が少ない時間帯を狙う
- バレないように潜入する
- <隠密>や<忍び歩き>が重要
- <聞き耳>で教団員の位置を確認
バレないように進むか、教団員を無力化するかは探索者次第です。暴力を振るえば犯罪ですが、背に腹は代えられません。探索者たちは法を犯す覚悟が必要です。
そうしてチャコタと対面します。そこには相談された親の子も確かに見つけました。無数の顔が苦悶の表情で探索者を見つめています。
最後の戦闘:
犠牲となった人間の嘆きを聞きながら、チャコタを討伐します。
犠牲者と会話はできませんが、一方的にしゃべらせると、より重たい展開にできそうですっ。
- 「助けてくれ」
- 「殺してくれ」
- 「なぜ…なぜこんなことに…」
探索者は重い決断をしながら、チャコタを倒すことになります。
エンディング:
こうして事件は解決します…が、これは救いのないシナリオです。
- 探索者Aは生還したが、見たものはトラウマに
- 相談された親の子は、もう戻らない。顔だけが残っていた
- チャコタを討伐したということは、あの顔の人たちも…
- 「なぜ自分だけ助かったのか」という生存者の罪悪感
教団を無力化しなかった場合:施設はそのまま存続するでしょう。チャコタを失った教団はその後どういう選択を取るかはわかりません。新たなチャコタを生み出すかもしれません。もっと悪いことを始めるかもしれません。
教団を無力化した場合:福祉施設が機能不全になり、本当に困っている利用者たちはどうなるのでしょうか。探索者は「正しいこと」をしたのでしょうか?
※注意点:このシナリオはバッドエンドしかない、ただの重たいシナリオ例です!
ハッピーエンドはありません。救いはありません。
しかし、だからこそ印象に残ります。探索者たちは重いものを背負いながら、それでも前に進まなければなりません。
チャコタは、クトゥルフ神話TRPGの中でも特に人間の闇を描けるクリーチャーです。邪神への信仰でもなく、ただの悪意。意味のない犠牲。そして救えない命。






現代社会の問題(SNS、自殺、孤独)と神話を絡めた、重厚で社会派なシナリオに最適です!
まとめ
お疲れ様でした!シナリオ映えするマイナークリーチャー5体、いかがでしたか?
改めて5体の「推しポイント」をまとめると:
- ビヤーキー:「敵か味方か」の選択が熱い。宇宙冒険という非日常を味わえる。
- あの世からの漁夫:難易度調整が簡単。悪夢の中が舞台という斬新さ。
- 炎の吸血鬼:刑事ドラマのような展開。現代日本が舞台で親しみやすい。
- 星の吸血鬼:技能ロールが映える。初心者KPでも扱いやすい。
- チャコタ:重厚で印象に残る。現代社会の闇を描ける。
この5体に共通するのは、「ただ倒すだけじゃない」という点です。
クリーチャーを味方にしたり、呪いを解除したり、ジレンマに悩んだり…クリーチャーをシナリオの核として活用することで、戦闘だけに頼らない多彩なセッションが作れます。
有名なクリーチャーを使うのも悪くないですが、たまにはマイナーなクリーチャーで冒険してみましょうっ。
もっと詳しく知りたい方は、各クリーチャーの詳細ページ(神話生物一覧)もチェックしてみてください。




