01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56
トップ > コラム > 【徹底考察】実はクトゥルフ神話モチーフの名作ゲーム4選+番外編
【徹底考察】実はクトゥルフ神話モチーフの名作ゲーム4選+番外編

【徹底考察】実はクトゥルフ神話モチーフの名作ゲーム4選+番外編

コラム
Danger

注意点: 当記事では、各作品の核心的なネタバレを含みます。未プレイの方はご注意ください!

「面白いゲームないかな?」と探しているあなた。

実は、可愛い絵柄の釣りゲーム、コメディタッチの探偵ゲーム、ほのぼの系に見えるアドベンチャー……一見普通のインディーゲームが、ガチガチのクトゥルフ神話作品だったら驚きませんか?

大手タイトルではあまり語られない、けれど知る人ぞ知る隠れた名作たち。それが今回ご紹介する「実はクトゥルフ神話モチーフのゲーム」です!

この記事では、プレイ中に「あれ?これって…」と気づく瞬間が待っている5作品を、具体的な考察と共にご紹介します。

この記事で分かること:

  • 一見クトゥルフに見えないゲームの神話要素
  • 制作陣が仕込んだ巧妙なオマージュ
  • ラヴクラフト作品との繋がり
  • 各作品の独自解釈と魅力

今回取り上げる5作品:

  • 「HALLO HALLO, WORLD」:可愛い絵×アザトースの夢構造
  • 「NOELNOAH」:続編で明かされる邪神の真実
  • 「ドレッジ」:釣りゲー×SAN値システム
  • 「災難探偵サイガ」:コメディ×ラヴクラフト作品オマージュ
  • 番外編「THE SHORE」:もはや隠す気ゼロのクトゥルフ全開作品

各作品について、以下の流れで解説していきます:

  • 基本情報:作品概要
  • どこがクトゥルフ神話モチーフ?:元ネタとなった作品・邪神
  • 具体的な考察:設定・キャラクター・ストーリーを深掘り

それでは、隠れたクトゥルフ神話ゲームの世界へ飛び込んでいきましょう!

1.「HELLO HELLO,WORLD」

1.基本情報

  • 作品名:「HELLO HELLO,WORLD」
  • 公開年:2020年
  • 開発者:冥途のみやげ

2.あらすじ(ネタバレあり)

ストーリーは、突然行方不明になった兄を探しに、主人公の「寿永遠子」が住人に聞き込みをし、街の中を探索するというもの。
しかし期限付きです。
一つの大陸が消滅し、世界が滅亡するとニュースが流れる中、限られた期間で兄を探し出すことになります。

地球最後の日に何をするか、そんな題材を耳にすることはあるが、永遠子は兄を探す時間に充て、また永遠子に協力してくれる人たちがいるのも暖かい人間ドラマとなっています。

3.どこがクトゥルフ神話モチーフ?

  • 元ネタの邪神:シアエガ、クトゥルフ
  • 元ネタの作品:「Daekness,My name is」、「クトゥルフの呼び声」

4.具体的な考察

【世界の滅亡とその原因】

本作の舞台は、よくある平和な街……に見えます。
主人公の永久子は行方不明になった兄を探して、町の何でも屋・黒井さんに頼ることになります。

たしかに主題は兄探しですが、それと別に世界が滅亡するという噂が流れていました。
それも太平洋に謎の大陸が浮上したためです。

この時の大陸は座標まで語られていて、それも「南緯47度9分、西経126度43分」というものでした。

実はこれ、クトゥルフ神話の封印されし大陸「ルルイエ」と全く同じ座標なのです!

ちなみにこの座標、H.P.ラヴクラフトの小説『クトゥルフの呼び声』で言及されたものなんです。

筆者:たいき

クトゥルフ神話ファンならこの時点で、本作の黒幕がクトゥルフだと分かったことでしょうっ!


【結末とアザトースの夢】

本作の結末として、実はこの世界は「永久子が見ている夢」というオチでした。

遡ると、現実世界はすでにルルイエが浮上して、クトゥルフが目覚めたことで、世界が崩壊していたのです。

その中で、永久子含む登場キャラたちはそれぞれ崩壊した世界を生きていたのですが、永久子は寝かされて仮想の現実、本作のストーリーを見せられていたのです。

そして、この世界が仮想世界だと気づいたのが永久子の兄だったのです。
彼も同じく仮想世界を見せられている存在で、世界の異常に気づき真相を突き止めたのです。

しかし世界は兄を許さずにバグとして消してしまった。
それが本作の冒頭である、兄が行方不明に繋がります。

しかし兄は消える前にデータを隠し残していたため、ゲーム内では兄が残したデータを見つけて永久子は真相を知ることになりました。

そうして、目覚めた永久子は、「永久子と波長が合ってしまった別の邪神と繋がってしまった」というオチで終わります。

【結末とアザトースの夢】

クトゥルフ神話には二次創作で広まった有名な解釈である「この世界はアザトースがみてる夢」という話があります。
アザトースが目覚めると夢(世界)がなくなるから、邪神たちはアザトースを寝かし続けていると…。

似ていると思いませんか?

永久子は仮想世界の夢を見ていて、永久子が目覚めたことで仮想世界は終わりを迎えました。
この仮想世界にとって、永久子=アザトースだったとも考えられます。

筆者:たいき

さらに深読みすると、プレイヤー自身もアザトースと言えます。
僕たちがゲームを終了すれば、永久子の世界は消えるわけですから……これは「入れ子構造」になったメタ的な仕掛けですね!


【永久子と繋がった邪神「シアエガ」】

こちらは続編の「ノエルノア」で判明しますが、永久子はシアエガという邪神と繋がってしまい、ラストに登場した黒い永久子になったのです。

作中では「緑眼の神」と呼ばれています。

筆者:たいき

登場する邪神が、クトゥルフ、アザトースの夢ときて、有名どころかと思いきや、マイナーなシアエガが登場したのは意外でしたっ。


【永久子に語りかける少女=シアエガ?】

作中、永久子の脳内に直接語りかけてきて、最後真実を知る部屋で姿を現した少女がいます。

彼女には名前がありません。
容姿は特徴的で、緑の髪に赤い目、また目はタコと同じように瞳が横長になっています。

結論から言うと、この少女がシアエガだと思います!

シアエガとの一致点

緑髪→シアエガらしい「緑」と一致
横長の瞳→人間ではない存在の証、邪神らしい特徴
永久子の味方→永久子と「繋がった」邪神だから協力的

ただし、一点だけ気になるのが「赤い目」という点です。

作中で「緑眼の神」と呼ばれているので、さすがに目は緑にすると思うんです。しかし彼女の目は赤いので、シアエガとは全然関係のない存在の可能性もあります。

↑筆者プレイ時画像

2.「NOIR:NOAH」

1.基本情報

  • 作品名:「NOIR:NOAH」
  • 公開年:2022年
  • 開発者:冥途のみやげ

2.あらすじ(ネタバレあり)

物語の主人公は記憶を失った少女シエル。
彼女が覚えているのは自分の名前と、黒髪の少女の存在だけでした。この施設ではアルファベット順の頭文字を持つ少女たちが隔離されています。何らかの研究が行われている施設で、本来なら大勢いるはずの姉妹たちの姿は見えません。
代わりに徘徊していたのは謎の生物でした。

外の世界を求めて探索を続けるシエルは、少しずつ記憶を取り戻していきます。そして記憶にいた黒髪の少女ノエルを発見し、話を聞くことになりますが…。

研究施設、隔離された少女たち、神話生物。その先に待ち受けるものとは。

3.どこがクトゥルフ神話モチーフ?

  • 元ネタの邪神:バグ=シャース
  • 元ネタの作品:「バグ=シャースの接吻」

4.具体的な考察

【世界崩壊後から18年】

前作『HALLO HALLO, WORLD』から18年後の世界。
地上では緑眼の神(シアエガ)が暴走し、世界が崩壊しました。

18年という歳月は、永久子がシアエガと繋がってから世界がどう変化したかを示す重要な時間軸です。前作のラストから、一体何が起きたのか……それが本作で明かされます!

その中で逃げ延びた人類がいて、それが本作の重要人物であるノエルです。

彼女は当時逃げ延びた一人で、その時助けてくれた人がいましたが、その人は病気で余命が長くありませんでした。

そこに目に留まったのがネプトゥーヌス研究所の研究員募集でした。

生きるためにノエルは研究所に拾われたのですが、結果として本作で描かれたように、ノエルは実験台として扱われています

彼女もまた永久子と同じように邪神の依代になって、ノエルが接続したのが暗黒の神バグ=シャースでした。

バグ=シャースは死体を操り、光を操ることができます

ノエルを元に、25人の人工生命体を作り、その1人が主人公のシエルです。


【ネプトゥーヌス研究所の意味】

ここで少し、研究所の名前に注目してみましょう。

ネプトゥーヌス」はローマ神話の海神ネプチューン(ギリシャ神話のポセイドン)です。

クトゥルフは海底都市ルルイエに封印されていた存在。
つまり、海の神の名を冠した研究所が、海から現れた邪神に対抗するという構図になっているんです!

筆者:たいき

皮肉なことに、その研究所自体が人体実験を行い、新たな邪神(バグ=シャース)を生み出してしまうという…。


【どうしてバグ=シャースだったのか】

シアエガもそうですが、バグ=シャースもかなりマイナーな邪神です。

人工生命体を作ることが目的なら、生命創造に関わる邪神であるウボ=サスラアブホースがいますが、彼らとの違いは光を操れる点ですっ。

作中でも語られていましたが、緑眼の神は暗闇で目が効かないため、ノエルの力で周囲を暗くし、安全を確保することができるのです!

筆者:たいき

光と生命を創造するという特徴が本作の物語とかなり相性が良かったんですね。

↑筆者プレイ時画像


【原典との矛盾?それとも独自解釈?】

ただ、ここで一つ気になる点があります。

作中では「シアエガは暗闇で目が効かない」とされていますが、実はこれ、原典と逆なんです!

クトゥルフ神話の公式書籍(原作「Darkness,My name is」『マレウス・モンストロルム』など)では、シアエガは闇を作る神として描かれています。

恩恵を受けた者は目を失う代わりに、暗闇でのみ視界が得られるという特性を持つのです。

つまり、永久子はシアエガと接続したため、シアエガの力を持っているなら、ノエルの「闇を作る力」はむしろ永久子を強化してしまうことになりかねません…。

ただ個人的には、ゲーム版独自の設定として、あえて原典と変えた可能性もあると思います。

というのも、シエルは最終的にノエルの依代を肩代わりして、見た目がノエルとシエル二つの特徴を持つ存在になりました。
そして、最後子供を助けるシーンがあります。

バグ=シャースはあくまでも邪神なので、本来なら永遠子と同じように世界を崩壊させる力があります。
しかしここで、バグ=シャースはシアエガに対抗する存在として扱われているので、バグ=シャースは邪神でありながら善の存在になっています!

筆者:たいき

こういった扱いからも、独自解釈が反映されている可能性が高いと思いますっ。

3.「DREDGE」

1.基本情報

  • 作品名:「DREDGE」
  • 公開年:2023年
  • 開発/発売元:Black Salt Games/Team17

2.あらすじ(ネタバレあり)

物語は、漁師の求人を見た主人公が応募のため港に向かう場面から始まります。しかし不運なことに、主人公は大きな壁に激突してしまいました。
幸い船は目的地の港にたどり着いたものの、故障した船の代わりに新たな船を提供してもらうことになります。ただし当然ながらタダではないため、借金を抱えた状態で漁師生活をスタートすることになります。

よくある借金返済の漁師ライフかと思いきや、ある日、一匹の奇形魚を釣り上げたことから運命が変わりました。
奇形魚の中からハンカチが出てきたのです。一枚のハンカチを収集家に見せたことが全ての始まりとなりました。そこに描かれた特殊な文様は、沈没船に積まれていた品物の証だという…。
収集家はその沈没船の荷物を集めており、主人公の船を強化する代わりに荷物の回収を依頼してきました。

最初の荷物を収集家に渡したとき、報酬として受け取ったのは「ブースト」という船を加速させる人知を超えた「呪文」でした。

海には奇形の魚たちが増え始め、特定の海域から外に出ることも阻まれている。主人公は一体何に巻き込まれているのだろうか。

3.どこがクトゥルフ神話モチーフ?

  • 元ネタの邪神:リヴァイアサン(クトゥルフの化身)
  • 元ネタの作品:代表作「クトゥルフの呼び声」

4.具体的な考察

【世界に現れた神様】

本作のプロローグで、主人公は求人を見て船乗りになるため、港を目指しますが、その道中で謎の壁が立ちふさがり、船がぶつかってしまいます。

幸いにも主人公はそのまま、目的地だった港に流れ着いて、船乗りとして働くことになります。

ただ、物語で語られるように、この世界には神様が現れたのです。

ゲーム本編は海を自由に移動できるので、地図の端に行くと、神様の姿を確認できますが、巨大な魚で、地図の外に出ようとした主人公を食べてゲームオーバーになります。

プレイヤーによってはトラウマ級の演出ですっ!

この巨大な魚の神はリヴァイアサンと呼ばれていて、クトゥルフの化身の一つですね!


【真の主人公「コレクター」】

本編はただ船乗りとして仕事をすることが目的ではなく、メインストーリーはただのハンカチを拾ったことから始まりました。

世界にぽつんと佇む孤島に建っている館に、コレクターが住んでいて、ハンカチを返すと、ハンカチと同じように世界に沈んでいる物品を持ってくるように言われます。

この時、謝礼として「船を強化」してもらえるのですが、この強化が異様で、依頼主が持っている謎の書物を使い、ターボやワープなど特殊な能力を覚えます。

コレクターが持つ謎の書物……これはクトゥルフ神話でお馴染みの『ネクロノミコン』や『ナコト写本』といった禁断の魔導書でしょう!

特に船に超常的な能力を与えるという点が重要です。クトゥルフ神話では、魔導書を読むことでSAN値が削られる代わりに、常識を超えた力を得ることができます。

筆者:たいき

ターボ等はまだゲームの都合上、他の説明ができても、流石にワープは呪文としか思えません。


【主人公のSAN値】

本作のゲームシステムとして狂気度があります。

夜になったり、呪文を使うと狂気に陥るのですが、発狂状態だと幻覚を見ることになります。

このSAN値の概念が非常に重要で、中には発狂していないと読めない石碑もあります

これは完全に**『クトゥルフ神話TRPG』のSANチェック・システム**ですね!

正気=無知」であり、「狂気=真実を見る目」という逆説的な構造。

本作では、プレイヤー自身が正気と狂気を行き来しながら真実に近づくというゲームデザインになっているんです。

通常のゲームでは「正気を保つこと」が目的ですが、本作では「あえて狂気に陥ることで情報を得る」という、クトゥルフ神話ならではのジレンマが再現されています。

筆者プレイ時画像


【神を崇める信者】

古代の寺院に行くと、そこには狂信者がいます。

彼の会話には謎が多く、主人公に永遠に燃え続ける炎を持ってくるように言います。

そして、集め終わり寺院に火を灯すと、狂信者は寺院のてっぺんに立ち、そのまま深淵の炎に燃やされ灰になりました。

最後まで謎が多く残っていて、ヒントも少ないため考察が難しい人物でもあります。

狂信者という名前から何かしらの神を信仰していたのはわかりますが、オチからしても善の神ではないでしょう。

狂信者が灰になった演出は、単なる「死」ではなく、儀式による次元移動、もしくは邪神への供物だった可能性があります。

筆者:たいき

てっきり門が開いて、別次元に行くとか、深海からリヴァイアサンが登場するとかあると思っていました……が、むしろ何も起きないことが恐怖なのかもしれません。

↑筆者プレイ時画像


【突如発生した奇形魚】

本作の一番の特徴とも言える要素で、ただの釣りゲーではなく、釣った魚が稀に奇形な姿になっています。

この原因がステラーベイスンにいる巨大な神話生物と言われています。

この神話生物は全貌が確認できないのですが、上から見た感じでは、魚というより植物的な特徴を持っているように見えました。

クトゥルフ神話には水生の神話生物が多く、触手が生えている個体も多いのですが、魚の生態を変えたという一番の特徴に当てはまる神話生物は特定が難しいです。

本作の神様はリヴァイアサンなので、クトゥルフ関係だとは思いますが、制作陣が独自に創作した神話生物の可能性もありますね。

また、同じく神話生物として、ツイストストランドに行くと、神話生物の討伐クエストが始まります。

この時、ウナギのように長い体で、頭には謎の突起物がある神話生物が登場します。

名前が明かされていないので、容姿から考察するしかないのですが、こじつけるならショゴスがモチーフな気もします…。
ショゴスには水棲生物もいますし、頭についている突起物がショゴスと同じように、複数の目など器官に見えなくもないです。

↑筆者プレイ時画像

4.「災難探偵サイガ 名状できない怪事件」

1.基本情報

  • 作品名:「災難探偵サイガ 名状できない怪事件」
  • 公開年:2023年
  • 原作/監督:株式会社ディッジ

2.あらすじ(ネタバレあり)

物語の主人公は、災厄レベルの不幸体質を持つ探偵・天堂サイガ。彼の元に舞い込んだのは、飼い猫を探してほしいという一見単純な依頼でした。
ラッキーちゃんと呼ばれる猫を探すだけでも次々と災難に見舞われるサイガ。ようやくラッキーちゃんを発見するが、突如として猫は異形の姿へと変貌してしまう…。

一度逃げ出したサイガは、改めて調査を開始します。
翌日、駅前を歩いていると占い師のヒン・レイに声をかけられます。彼女の占いもまた災厄レベルで的中するのです…。家も記憶も失った彼女は、そのままサイガの探偵事務所に居候し、彼の助手となりました。
単なる猫探しの依頼が、やがて世界を巻き込む壮大な災厄へと発展していくこととなります。

3.どこがクトゥルフ神話モチーフ?

  • 元ネタの邪神:ショゴス、ブラウン・ジェンキン
  • 元ネタの作品:「狂気の山脈にて」、「壁の中の鼠」、「魔女の家の夢」

4.具体的な考察

【ラッキーちゃんの正体】

プロローグで判明していることですが、サイガが猫探しの依頼を受け、ラッキーちゃんを探すのですが、見つけたラッキーちゃんは突然頭が裂け触手が出てきます

一見するとただの探偵ゲームですが、ラッキーちゃんの変異から一気にクトゥルフ神話へと変貌します!

触手=クトゥルフ神話の象徴

猫という日常的な存在が異形に変わる……これはまさにラヴクラフト作品の「日常に潜む宇宙的恐怖」そのものです!

筆者:たいき

普通の探偵ゲームだと思ってプレイしていた人は、この瞬間に「あ、これクトゥルフだ!」と気づくはずです。

↑筆者プレイ時画像


【助っ人「テケリ」】

作中でサイガの仕事を手伝ってくれる助っ人のキャラが何人か登場しますが、その中の一人「テケリ」だけ正体が明かされませんでした。

彼は正体不明で、声も容姿も全てが謎に包まれています。

登場した際にはサイガの容姿になっていましたが、ヒン・レイはいつもと違うサイガに違和感を覚え、彼の正体を見破りました。

この名前にはモチーフがあり、それはショゴスです!

ショゴスの鳴き声は「テケリ・リ」と表記されていて、かつてショゴスの主人(古のもの)の鳴き声を模倣して発声しています。

また、ショゴスは不定形のクリーチャーで、TRPGの方ではショゴス・ロードというショゴスの中でも知性を持った特異体が人間に姿を模して、社会に溶け込んでいるというのもいます。

このテケリは、名前も性質もまさにショゴスそのものです!

筆者:たいき

「テケリ」が「ショゴス・ロード」だとしたら、正体を隠しながらも、人間を助ける……これはクトゥルフ神話では珍しい「善意のある神話生物」として描かれているのが面白いですね!

↑筆者プレイ時画像


【言葉を発する鼠】

本章では、ラーメン屋に鼠が出たことで評判が落ち、ネズミ駆除をするも効果がないという話があります。

サイガが調査をすると、この鼠たちは知性を持っていて、また言葉を発していたのが目撃されるのです。

これもただの喋る鼠に思えますが、元ネタがあります!

元ネタ①:「壁の中の鼠」

一つは「壁の中の鼠」という作品(出典:ラヴクラフト『壁の中の鼠』1923年)。

この作品では、かつての実家に引っ越してきた主人公が夜な夜な鼠の足音に悩まされていました。

飼っていた猫の様子から、彼らは壁の中を走っていることがわかり、対策を考えていると、家にかつて儀式を行っていたという地下室が見つかって…という話です。

元ネタ②:「魔女の家の夢」

そしてもう一つが「魔女の家の夢」という作品(出典:ラヴクラフト『魔女の家の夢』1933年)です。

この作品では、かつてセイラムの魔女狩りから逃げてきたキザイアが住んでいたという、曰く付きの家に引っ越してきた主人公が、夜な夜な悪夢に悩まされ、その夢の中にブラウン・ジェンキンという大きな鼠に追われていました。

次第に夢と現実が交錯する…という話です。

ここで登場するジェンキンは大きさだけでなく、人間のような手足があり、また言葉を発することもできます。

本作の話では鼠に悩まされているということですが、どちらの作品の特徴も持っているんですよね!

「壁の中の鼠」との共通点:

  • 鼠に悩まされる主人
  • 駆除しても効果がない
  • 家(店)に鼠が棲みつく

「魔女の家の夢」との共通点:

  • 鼠が知性を持つ
  • 言葉を発する
  • ブラウン・ジェンキンの特徴

つまり、本作は2作品を巧みに融合させたオマージュなんです!

ラヴクラフト作品を読んでいる人なら、「あ、この2作品のミックスだ!」とニヤリとできる、非常に巧妙な仕掛けですね。

筆者:たいき

単に「喋る鼠」を出すだけでなく、複数のラヴクラフト作品の要素を組み合わせることで、クトゥルフ神話ファンへの深いリスペクトを感じます!


【サイガの不運の正体】

本作は制作元がネタバレを禁止しているため、ここでは詳しく書けませんが、サイガはただ不運体質というわけではありません。

サイガを不運にしている原因がいて、その原因が……これ以上はぜひ本作をプレイしていただきたいです!

筆者:たいき

物語の核心に関わる部分なので、ここでは伏せますが、この真相もまたクトゥルフ神話的な答えになっています。

いかがでしたか?「実はクトゥルフ神話モチーフのゲーム」を5作品ご紹介しました!

  • HALLO HALLO, WORLD:ルルイエの座標完全一致、アザトースの夢構造、そしてプレイヤー自身もアザトースという入れ子構造。可愛い絵柄に騙されてはいけない、本格クトゥルフ作品でした!
  • NOELNOAH:前作から18年後の崩壊世界。バグ=シャースの「光と死体を操る力」が物語の核になっていて、シアエガ設定の原典との違いも興味深かったですね。続編ならではの深みがありました!
  • ドレッジ:釣りゲーに見せかけて、SAN値システム完備。ショゴス説が濃厚なウナギ型神話生物、魔導書で船を強化、そして世界の果てに待つリヴァイアサン。システムそのものがクトゥルフでした!
  • 災難探偵サイガ:テケリ=ショゴス、言葉を喋る鼠は『壁の中の鼠』と『魔女の家の夢』の融合オマージュ。ラヴクラフト愛に溢れたコメディ作品で、ホラーが苦手な方にもオススメですっ!

番外編:もっとガチなクトゥルフゲームなら「THE SHORE」

ここまで「実は」クトゥルフ神話モチーフの作品を紹介してきましたが、「もっと露骨にクトゥルフな作品がやりたい!」という方にはTHE SHOREがオススメです!

本作は、難破して漂着した無人島で娘を探すホラーアドベンチャー。

しかし島には人間の骨はあっても人間はおらず、代わりに神話生物が生息しています。

謎の声に煽られながら探索を進めると、月のような場所、深海、触手のダンジョンなど、異次元へ次々と転送されていきます。

物語の黒幕はニャルラトテップ。主人公は知らぬ間に神話生物の封印を解いてしまい、クトゥルフの封印まで解放してしまいます。

最後はアザトースのいる場所に送られ、主人公の過去の記憶から真実を知る……という、クトゥルフ神話のオールスター作品です!

ニャルラトテップ、クトゥルフ、アザトースが揃う作品は非常に珍しく、まさに「ザ・クトゥルフ神話」と言える一作ですっ!

↑筆者プレイ時画像


ゲームをプレイしていて、「この座標、見覚えがある」「このキャラ名、どこかで…」と感じたら、それはクトゥルフ神話の影響かもしれません。

今回ご紹介した以外にも、神話要素を取り入れたゲームは数多く存在します。

隠された神話要素を見つける楽しみ、それもまたクトゥルフ神話ゲームの醍醐味です!

この記事をきっかけに、みなさんのゲームライフに新しい視点が加わり、より深く楽しめるようになれば嬉しいですっ!