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【あの有名キャラも!?】実はクトゥルフ神話の影響を受けた映画キャラ3選

【あの有名キャラも!?】実はクトゥルフ神話の影響を受けた映画キャラ3選

コラム
Danger

注意点: 当記事では、各作品の核心的なネタバレを含みます。未視聴の方はご注意ください!

映画を観ていて、「このキャラクター、どこかクトゥルフ神話っぽいな…」と感じたことはありませんか?

実は、ハリウッドをはじめとする映画界には、クトゥルフ神話から影響を受けた作品が数多く存在します。中には、ストーリー構造そのものが神話作品のオマージュになっているものや、キャラクターデザインに邪神の要素が盛り込まれているものも!

この記事では、一見クトゥルフ神話と関係なさそうな有名映画キャラクターが、実は神話作品をモチーフにしていた3つの事例をご紹介します。

これらの作品を知ることで:

  • 映画の新しい楽しみ方が見つかる
  • クトゥルフ神話の影響力の広さを実感できる
  • TRPGシナリオ作りのヒントが得られる

影響の受け方は作品によって様々です:

  • 構造的オマージュ:ストーリーや家族構成が神話作品と一致
  • 意図的な引用:作者が明確に邪神をモチーフにしている
  • デザインの影響:ビジュアル面で神話的要素を取り入れている

各作品について、以下の3点を詳しく解説しています:

  • 基本情報:作品概要とキャラクター名
  • どこがクトゥルフ神話モチーフ?:元ネタとなった作品・邪神
  • 具体的な考察:映画のシーンや設定を深掘りして解説

当サイトで紹介する考察は、あくまで一つの解釈です。「そういう見方もあるんだ!」という気持ちで楽しんでいただければ幸いです。

それでは、意外なクトゥルフ神話の影響を受けたキャラクターたちをご紹介していきます!

1.「リング0 バースデイ」

1.基本情報

  • 作品名:「リング0 バースデイ」
  • 公開年:2000年
  • 原作/監督:鈴木光司/鶴田法男
  • キャラクター名:貞子

2.あらすじ(ネタバレあり)

呪いのビデオ事件の30年前、18歳の山村貞子は東京の劇団「飛翔」で女優を目指していた。しかし劇団員が謎の死を遂げたことで、超能力者の娘である貞子に疑いの目が向けられる。

過去に婚約者を貞子の母・志津子に殺された新聞記者の宮地彰子は、復讐のため貞子の過去を暴露。恐怖した劇団員たちは貞子を殺害してしまう。

その後、劇団員たちは貞子の父・伊熊平八郎が語っていた「もう一人の貞子」(双子の妹)の存在を知る。殺したはずの貞子は蘇生しており、2人の貞子によって劇団員たちは次々と呪殺されていく。

暴走する貞子を止めるため、伊熊は貞子を井戸に突き落とし、生きたまま閉じ込める。

3.どこがクトゥルフ神話モチーフ?

  • 元ネタの邪神:深きもの、もしくはクトゥルフの子供
  • 元ネタの作品:「ダンウィッチの怪」、「太陽の爪あと」

4.具体的な考察

「リング0 バースデイ」だけが特別な理由

「リング」シリーズ全体がクトゥルフ神話モチーフというわけではありません。実は原点である「リング0 バースデイ」のみが、明確に神話的設定を採用しています!

後のシリーズでは超能力やウイルスといった設定に変化していきますが、この「リング0」だけは「海から来た化け物」という超常的存在を父親に据えており、これがクトゥルフ神話との接点になっていますっ。


【物語の流れが完全に一致】

<ダンウィッチの怪のストーリー>

ラヴィニア・ウェイトリーという女性が、ある日突然子供を産みます。ダンウィッチの住人はウェイトリー家をよく思っておらず、夫のいないラヴィニアの出産を不思議に思っていました。しかし祖父だけは、父親の正体を知っていました。

息子ウィルバーは異様な早さで成長し、成長するにつれて人間の姿から離れ、異形の特徴を持ち始めます。ウィルバーは自身の本当の父を知っており、やがてネクロノミコンを求めるようになりました。

ある日、成長したウィルバーはミスカトニック大学に侵入し、ネクロノミコンを盗み出そうとしますが、番犬に襲われて命を落とします。その最期の姿は、もはや人間ではありませんでした。

ダンウィッチに平和が訪れると思った矢先、牛が殺される事件が起きます。
村には巨大な足跡も発見されました。ここで初めて、ウィルバーには双子の弟がいたことが判明します!

ウィルバーは母親に似ていたため人間の姿をしていましたが、弟は父親に似たため完全に異形の存在だったのです!
村人たちは不可視の弟を退治することになり、その戦いの中でウィルバーの父の名が邪神ヨグ=ソトースであることが明らかになります。

<リング0 バースデイのストーリー>

主人公の貞子は、母・志津子の起こした超能力事件を乗り越え、普通の女性として生きていました。女優を目指して劇団に入団しますが、ある日劇団員が謎の急死を遂げます。

疑心暗鬼に陥った劇団員たちは、貞子が超能力者である志津子の娘だと知り、「貞子が殺したのだ」と思い込んで彼女を追い詰め、殺害してしまいます。

貞子の遺体を処理するため山に向かう一行。劇団に日常が戻ると思いきや、そこでもう一人の貞子がいることが判明します。貞子は双子だったのです!

姉の貞子はなんとか一命を取り留めており、妹の貞子と対峙することになります。


【構造の比較】

両作品を比べてみましょうっ。

要素ダンウィッチの怪リング0 バースデイ
展開村人が異変に気づく →子供を疑う →ウィルバーが死ぬ →双子発覚劇団員が異変に気づく → 貞子を疑う → 殺害 → 双子発覚
双子の特徴兄は人間的、弟は異形姉は人間的、妹が異形的
父親正体不明 →最後に邪神と判明正体不明 →「海から来た化け物」
祖父の役割真実を知っている真実を知っている
筆者:たいき

特に注目すべきは、「片方が死んだ後に双子が発覚する」という展開の一致です。これは偶然とは考えにくい類似点だと思います!


家族構成の完全一致

さらに二つの作品は家族構成も一致しています。

「ダンウィッチの怪」

  • 祖父
  • 父(邪神ヨグ=ソトース)
  • 母(ラヴィニア)
  • ウィルバー
  • 双子の弟

「リング0 バースデイ」

  • 祖父
  • 父(海から来た化け物)
  • 母(志津子)
  • 貞子
  • 双子の妹
筆者:たいき

5人家族で、特に「真実を知る祖父」「超常的な父」「双子」という要素が完全に一致しています!


「海から来た化け物」の正体を考察】

映画の中で、祖父が重要な台詞を残しています

「貞子の父は海から来た化け物」

ここで注目すべきは「海から来た」という表現です。

ヨグ=ソトースではない理由
ダンウィッチの怪では、ヨグ=ソトースは空から降りてくる邪神として描かれています。ウィルバーも空に向かって父の名を呼びました。対して貞子の父は「海から来た」と明言されており、これはヨグ=ソトースの特徴とは一致しません。

クトゥルフか、深きものか
海に関する邪神といえば、最も有名なのはクトゥルフです!しかし、もう一つの元ネタである「閉ざされた部屋(太陽の爪痕)」には深きものが登場します。

深きものは半魚人の姿をした神話生物で、インスマスという港町に住み着き、人間と交配することが知られています。「海から来た化け物」という表現は、むしろこの深きものを指している可能性がありそうですっ。

筆者:たいき

他にも、クトゥルフの落とし子という解釈も成立しますが…さすがにこれは仰々しい気がします。


【もう一つの元ネタ:「太陽の爪痕」

実は脚本家自身が、本作をモチーフにしていると明言しています。

<原作「閉ざされた部屋」のストーリー>(原題:The Thing on the Doorstep/H.P.ラヴクラフト。映画化タイトルが「太陽の爪痕」)

ある娘がインスマスに嫁に行き、異様な状態で実家に帰省します。親は娘を部屋に監禁しました。

主人公がこの家を遺産として継ぎますが、叔父の残した手紙には異様な文章がありました。
かつて娘を監禁していた部屋で、何か生き物を見つけたら殺すようにと…。

遺書を重く見なかった主人公は、その部屋から蛙が逃げ出すのを見ます。

その日を境に家の周りで変化が始まります。


【脚本家が取り入れた演出】

脚本家が特に参考にしたのは、監禁された娘が壁の隙間から家に来た主人公を見つめるシーンの演出です。

この娘視点の演出が「リング0」にも使われており、幼少期の貞子が家庭訪問に来た先生を、二階の部屋から見つめるシーンがあります。この構図は「太陽の爪痕」へのオマージュです!


【深きものの設定について】

ただし、脚本家はあくまで演出を参考にしただけであり、深きものという設定には直接触れていません。映画内でも「海から来た化け物」としか説明されていないため、クトゥルフと深きものの2つの可能性が残されています。

筆者:たいき

しかし、「太陽の爪痕」を意識的に参考にしているという事実。
貞子の父はクトゥルフよりも、深きものである可能性が高い気もします

5.小ネタ・余談:洗練された撮影方法

クトゥルフ神話とは関係ないのですが、「リング」の撮影裏の小ネタが面白いので紹介します!

【実は「反転」だらけの名シーン】

貞子がテレビから這い出してくる、あの有名なシーンをご存知ですか?
実はあの場面、撮影方法も”反転”しているんです!

女優がテレビから出てくるところを撮影しているのではなく、逆にテレビの中に戻っていくところを撮影し、それを逆再生しています。あの不自然な動きの正体は、この撮影技法だったんですね。

さらに驚くべきことに、貞子が被害者を殺す直前のあの目のドアップシーン。実はあれ、女優本人の目ではなく男性スタッフの目なんです!

理由は「まつ毛を切ると女優業に支障が出る」という現実的な事情でした。そして、この場面も実は見下ろしているのではなく見上げているのを反転させています。


【貞子の隠された設定】

実は貞子は元男!?
「睾丸性女性化症候群」という疾患を持っています。

これは男性器と女性器の両方の特徴を持つ状態で、外見は女性ですが生物学的には複雑な性を持っています。ただし、出産に必要な機能(精子の生成能力や膣)がないため、子供を残すことはできません。

義理の父である伊熊平八郎が貞子を犯しており、その際に処女膜があったことが語られています。この設定は、貞子の「人間でも怪物でもない」という中間的な存在性をより際立たせているような気もします。

余談ですが、この設定を知ってから貞子を観ると、彼女への見方が少し変わりました。単なる「恐怖の象徴」ではなく、「どこにも居場所がない存在」としての切なさも感じます。

2.「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」

1.基本情報

  • 作品名:「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」
  • 公開年:2017年
  • 原作/監督:スティーヴン・キング/アンディ・ムスキエティ
  • キャラクター名:ペニーワイズ

2.あらすじ(ネタバレあり)

1988年、メイン州デリーの町で6歳の少年ジョージーが行方不明になる。ジョージーは雨の日に紙の船を追いかけ、排水溝で出会ったピエロ「ペニーワイズ」に襲われ、下水道へ引きずり込まれた。

翌年の夏、ジョージーの兄ビルと友人たちは、町で続く子供の失踪事件を調査し始める。いじめられっ子たちで結成された「ルーザーズ・クラブ」のメンバーは、それぞれがペニーワイズの恐ろしい姿に遭遇していた。

調査の結果、ペニーワイズは27年周期で目覚め、子供たちを餌食にする存在であり、下水道を通じてニーボルト通りの廃屋の地下に潜んでいることが判明する。

メンバーの一人ビバリーがペニーワイズに誘拐されたことで、ルーザーズ・クラブは廃屋の地下へ向かう。そこで彼らは、自分たちの恐怖を乗り越えることでペニーワイズと戦い、撃退することに成功する。

3.どこがクトゥルフ神話モチーフ

  • 元ネタの邪神:アトラック=ナチャ
  • 元ネタの作品:代表作「七つの呪い」、「白い船」

4.具体的な考察

【冒頭の「白い船」が示す異世界への入口】

ITの最も印象的なシーンの一つが、映画冒頭のジョージのシーンです。

少年ジョージが折り紙で作った白い船を水たまりに流し、船はそのまま排水口へと流れていきます。そこで船を拾ってくれたのがペニーワイズでした。しかしジョージが船を受け取ろうと手を伸ばした瞬間、ペニーワイズに腕を食いちぎられてしまいます。

一見すると単なる事故に見えるこの場面ですが、クトゥルフ神話の視点で読み解くと全く異なる意味が浮かび上がります!

【「白い船」というキーワード】

クトゥルフ神話において「船」、特に「白い船」は重要なキーワードです!

ラヴクラフトの短編「白い船」では、独自の世界であるドリームランド(夢の国)に行く際に、白い船が迎えに来てドリームランドまで運んでくれる描写があります。白い船は現実世界とドリームランドを繋ぐ乗り物、つまり異世界への入口の象徴なのですっ。

ITと比較すると、ジョージが白い船を流した瞬間、彼はドリームランド(異世界)との境目に立っていたとも解釈できます。排水口から覗くペニーワイズは、まさに「向こう側」から手を伸ばしてきた存在だったのです!


【ペニーワイズの住処が示すもの】

作中でペニーワイズは子供たちの前に突然現れるだけで、その正体や住処は謎に包まれています。しかし最終決戦で、子供たちは地下にペニーワイズの住処を発見します。

そして驚くべきことに、この住処は別作品にも登場しているのです!

【ダークタワーとの繋がり】

同じくスティーヴン・キングの代表作「ダークタワー」シリーズの映画版で、主人公ガンスリンガーが中間世界(ミッドワールド)を探索している際に、ペニーワイズの住処である古びたサーカス小屋が映っています。

筆者:たいき

これは決定的な証拠ですっ。つまり、ペニーワイズは中間世界からやってきた存在だと確認できます。


全てが繋がる:アトラック=ナチャとペニーワイズ

ここまでの情報を整理すると、一致する要素が見えてきます:

<アトラック=ナチャ>

  • ドリームランドに住む蜘蛛の邪神
  • 二つの世界を繋ぐ橋を作っている
  • ドリームランドには白い船で行くことができる

<ペニーワイズ>

  • 中間世界(ミッドワールド)に住む蜘蛛の異形
  • 排水口という「穴」を通じて現実世界に侵入
  • 冒頭でジョージが白い船を流している

「ドリームランド」と「中間世界」、「橋」と「排水口」、そして「白い船」。

これらは全て、異世界と現実世界を繋ぐ通路という共通のモチーフです!

筆者:たいき

ペニーワイズは、アトラック=ナチャと同じく、二つの世界の境界に存在し、それを繋ごうとする蜘蛛の存在なのです!

5.小ネタ・余談:キング作品の壮大な繋がり

【「ダークタワー」「霧」「IT」は同じ世界線?】

余談ですが、スティーヴン・キングの作品には、それぞれ時系列や世界観が繋がっているものがあります。

特に注目すべきは、同じくクトゥルフ神話的要素を持つ「霧」「ダークタワー」シリーズ」「IT」の3作品です。

これらを時系列に並べると、一つの壮大なストーリーが浮かび上がってきます!

【「ダークタワーシリーズ」中間世界と現実世界が繋がる】

物語の始まり。ある時、中間世界(ミッドワールド)と現実世界が繋がってしまいます。そこで中間世界に住む異形の存在たちが、現実世界に流れ込んでくることになります。

【「霧」異形が現実世界に侵入】

ダークタワーの結果として「霧」の事件が起こります。

ある日突然、街が濃霧に包まれ、神話生物たちが霧の中を徘徊し始めます。主人公たちはスーパーマーケットに立てこもり、生き延びようとします。この作品に登場する異形たちは、まさに中間世界から流れ込んできた存在です!

【「IT」ペニーワイズの侵入】

「IT」は、この時系列の中ではダークタワーの直前に位置すると考えられます。

ペニーワイズは中間世界に住む存在でありながら、27年周期で現実世界のデリーという街に現れます。もしかしたら、ペニーワイズこそが中間世界と現実世界を最初に繋いでしまった存在なのかもしれません。

排水口という「穴」を通じて行き来するペニーワイズの能力は、まさに「橋」や「通路」を作るアトラック=ナチャの能力に通じます。


【考察:ペニーワイズが世界崩壊の引き金だった?】

この時系列で考えると、一つの仮説が浮かび上がります:

ペニーワイズが27年周期で現実世界に現れ続けたことで、徐々に中間世界と現実世界の境界が曖昧になり、最終的にダークタワーの事件へと繋がった——つまり、ペニーワイズが世界崩壊の最初の引き金だったという解釈です!

筆者:たいき

スティーヴン・キング本人が明言しているわけではなく、あくまでも考察の範囲です!
しかし、キングが意図的に作品同士を繋げていることは確かであり、この解釈も十分に成立すると思います。

3.「エイリアン」

1.基本情報

  • 作品名:「エイリアン」
  • 公開年:1979年
  • 監督/脚本:リドリー・スコット/ダン・オバノン
  • キャラクター名:ゼノモーフ

あらすじ(ネタバレあり)

西暦2122年、宇宙貨物船ノストロモ号は地球への帰還途中、未知の信号を受信し、その発信源である小惑星に着陸する。調査隊が謎の宇宙船を発見し、その内部で副長ケインが卵のような物体に遭遇。突然、サソリのような生物(フェイスハガー)が彼の顔に張り付いた。

船に戻ったケインは回復したかに見えたが、食事中に胸部を突き破って奇妙な生物(チェストバスター)が出現し、彼は死亡する。脱皮して巨大化した完全体のエイリアンは、乗組員を次々と襲い始める。

調査の結果、この事態は会社が「エイリアンの捕獲」を目的に仕組んだものであり、科学主任アッシュも監視役の人造人間だったことが判明する。裏切りに直面した生存者たちは船を爆破して脱出しようとするが、エイリアンに次々と殺されていく。

どこがクトゥルフ神話モチーフ?

  • 元ネタの邪神:クトゥルフ
  • 元ネタの作品:代表作「クトゥルフの呼び声」
    ※前日譚の「プロメテウス」は、元ネタを「狂気の山脈にて」と考察

具体的な考察

特徴的な長い頭部は「タコ」の名残?】

H.R.ギーガーがゼノモーフのデザインを手がけた際、初期デザインは明確にクトゥルフをモチーフにしていたことが知られています。

しかし、この案は最終的に採用されませんでした。現在の形に落ち着いたゼノモーフですが、よく見るとタコのような長く伸びた頭部と人型の体という特徴は残っています!

クトゥルフの容姿は「タコのような頭部、人間のような体、コウモリのような翼、触手」と描写されます。ゼノモーフの頭部の形状は、まさにこの「タコのような頭部」の名残と言えるでしょうっ。

完全に没になったわけではなく、クトゥルフ的要素を残しつつ、別の方向性に進化させたデザインだと思われます。

【最終的なモチーフについて】

ギーガーの作風全体に共通する特徴として、人間の性器をモチーフにしたデザインがあります。実際、『エイリアン』のデザインにおいても、ゼノモーフの成体とチェストバスター(幼体)の頭部は男性器を、フェイスハガーの下面は女性器をモチーフにしていると考えられています。

これは単なる過激な表現ではなく、ギーガーが追求した「生と死」というテーマの表れです。彼は「バイオメカノイド」(生物と機械の融合)から発展させ、エロティシズムを組み込んだ「エロトメカニクス」という作品群を生み出しました!

クトゥルフ的な「異形の恐怖」と、生殖器的な「生理的嫌悪」を融合させたデザインこそが、ゼノモーフになったのかもしれませんっ。


生態の違い:邪神と生物の境界

ゼノモーフの設定は、クトゥルフとは大きく違う特徴があります。

<ゼノモーフの生態>

  • ほぼ完全な生物として描かれている
  • 殺すことは困難だが不可能ではない
  • 卵を産み、フェイスハガー(幼生)を通じて人間を宿主に成長する
  • 量産可能な生物種として存在

<クトゥルフの場合>

  • 邪神として唯一無二の存在
  • 人間の武器では殺せない
  • 卵を産んだり繁殖したりはしない
  • 不死に近い存在

この違いは重要です。ゼノモーフは「クトゥルフ的な恐怖のデザイン」を持ちながら、SF作品として成立させるために生物的な設定を与えられました。

筆者:たいき

邪神をそのまま登場させるのではなく、「邪神のような恐怖を持つ生物」として再解釈したのが、エイリアンの独創性でしょうっ。

5.小ネタ・余談:「プロメテウス」と「狂気の山脈にて」

【ギーガーとクトゥルフ神話の関係】

H.R.ギーガーがクトゥルフ神話に影響を受けていることは確実です。彼の作風全体が「人知を超えた異形」というクトゥルフ的恐怖を体現しています。

また、「エイリアン」が属するSFホラーというジャンルは、まさにクトゥルフ神話と同じジャンル(コズミックホラー)です。ジャンルの一致だけではこじつけかもしれませんが…。


【「プロメテウス」と「狂気の山脈にて」の意外な共通点】

さらに興味深いのが、エイリアンの前日譚にあたる「プロメテウス」(2012年)です。この作品は、クトゥルフ神話の傑作「狂気の山脈にて」を彷彿とさせる構造を持っています!

<プロメテウスのストーリー>

人間に似た高度な生物(エンジニア)が、遥か昔にある惑星に降り立ち暮らしていました。

そして月日が流れた2093年、主人公たちが事故によりこの惑星にたどり着きます。探索を進めると、岩山に人工の建造物があることが判明し、中を調べると人間に似た生物が冬眠状態で眠っていました

彼らを起こしてしまったことで、エンジニアたちと対立することになります。また、作中にはタコのような特徴を持つエイリアンも登場します。

<狂気の山脈にてのストーリー>

かつて地球には「古のもの」という旧人類が地球を支配していました。ある日、邪神クトゥルフが侵略してきて戦争が勃発。負けた古のものは海中で生活し、少しずつ退化していき、最後は南極で絶滅したと思われていました。

現代になり、南極調査のため主人公たちが向かうと、謎の生き物の足跡の化石を発見します。それを辿った先にいたのが、古のものの遺体でした。

しかし彼らは冬眠状態だったため、生き返った古のものによって生物調査隊は全滅します。

連絡が取れなくなった一行が様子を見に行くと、全滅した部隊を発見。さらにそこで地図に載っていない狂気の山脈を見つけます。

山脈を探索すると人工の建造物だと判明し、かつて何者かが高度な文明を持っていたことが分かります。建造物の中で生き延びていた神話生物ショゴスに見つかり、命からがら主人公たちは逃げ出しました。


【構造の比較】

作品プロメテウス狂気の山脈にて
舞台未知の惑星南極
発見されたもの人工建造物狂気の山脈(人工建造物)
未知の存在エンジニア(冬眠)古のもの(冬眠)
その後の脅威目覚めたエンジニア目覚めた古のもの、ショゴス
結末探検隊が襲われる調査隊が全滅
筆者:たいき

特に「高度な文明を持った旧人類」「冬眠状態」「人工建造物」「目覚めた脅威」という要素が驚くほど一致しています。


これはオマージュか、それとも偶然か?】

正直に言えば、こじつけと言われればそうかもしれません

「プロメテウス」はギーガーではなくリドリー・スコット監督の作品ですし、公式にクトゥルフ神話との関連を明言しているわけでもありません。

ただ、以下の事実があります:

  • H.R.ギーガーはクトゥルフ神話ファン
  • 初代「エイリアン」でクトゥルフをモチーフにしていた
  • リドリー・スコットは「エイリアン」の監督でもある
  • SFホラーというジャンル自体がクトゥルフ神話の影響下にある

これらを考えると、意識的か無意識的かは別として、クトゥルフ神話の影響が作品に染み込んでいる可能性はありそうです。

筆者:たいき

個人的には、「プロメテウス」を観た後に「狂気の山脈にて」を読むと(あるいはその逆でも)、偶然にせよ意図的にせよ、この共通点は見逃せないポイントだと思いました!

今回は、実はクトゥルフ神話がモチーフの映画キャラクター3選をご紹介しました!

それぞれの特徴をおさらいすると:

  • リング」(貞子):「ダンウィッチの怪異」の構造的オマージュ。家族構成が完全一致し、双子設定も共通。海から来た化け物の子供という設定は、深きものやクトゥルフの落とし子を思わせる。
  • 「IT」(ペニーワイズ):蜘蛛の邪神アトラック=ナチャがモチーフ。冒頭の「白い船」はドリームランドへの入口を暗示し、ダークタワーとの繋がりで中間世界からの侵入者であることが判明。作者キングの意図的な引用。
  • 「エイリアン」(ゼノモーフ):H.R.ギーガーが初期デザインでクトゥルフをモチーフにしていた。タコのような頭部と人型の体という特徴が残っており、デザイン面でクトゥルフ神話の影響を受けている。

【番外編:逆にクトゥルフ神話入りした「遊星からの物体X」】

興味深いことに、逆のパターンも存在します!

「遊星からの物体X」(1982年)は、元々クトゥルフ神話作品として作られたわけではありません。しかし、南極という舞台、宇宙からの未知の生物、擬態・寄生という能力、疑心暗鬼を生む人狼ゲーム的展開——これらがあまりにもクトゥルフ神話と親和性が高かったため、後にKADOKAWA公式ルールブックに神話生物として採用されました

物体Xは人間に限らず生物全般に寄生でき、外見だけでなく言葉も巧みに操るため識別が困難です。唯一の方法は火で、血液に火を近づけると逃げるように動き出します。

この陰湿で狡猾な性質が、現代のクトゥルフ神話TRPGの「疑心暗鬼」「信頼の崩壊」というシステムと見事にマッチングしたため、逆輸入されたと考えられます。


クトゥルフ神話の影響の受け方は様々です

  • 構造をそのまま借りる(リング)
  • 邪神を直接モチーフにする(IT)
  • デザインの雰囲気を取り入れる(エイリアン)
  • 後から神話体系に組み込まれる(物体X)

有名な映画作品の中にも、実はクトゥルフ神話の影響が隠れているかもしれません。「このキャラクター、どこか神話的だな」と感じたら、元ネタを探してみてください!

もっと詳しく知りたい方は、各邪神の詳細ページ([神話生物一覧])や、原作小説の紹介記事もチェックしてみてください!